米国ハワイ島の南岸に近いパハラという小さな町では、数十年にもわたって謎の群発地震が続いている。2015年には地震の回数が1週間に7回前後から34回まで増えた。2018年には、この島のキラウエア火山が過去数百年で最大規模の噴火を起こし、翌年のパハラの群発地震は1週間に500回近くにのぼった。
科学者たちはこのほど、ついにこの地震の震源域を発見した。地殻より深い地下36~43キロメートルのマントルで、網目のように広がるマグマとともにシート状の岩床が折り重なっており、ゆっくりと膨張している。この「パハラ岩床複合体(PSC)」にマグマがパルス的に貫入すると、群発地震が発生するのだ。このような岩床の複合体は、世界で最も大きく最も活動的な火山の1つであるキラウエアやマウナロアにマグマを送り込む経路になっている可能性がある。(参考記事:「世界最大の活火山マウナロアとは、1843年以降33回の噴火」)
「みんな大興奮でした」と打ち明けるのは、米カリフォルニア工科大学の大学院生で、PSCに関する論文を学術誌「サイエンス」に12月22日付けで発表したジョン・ワイルディング氏だ。「この規模のマグマの活動を直接観察できたのは世界で初めてだったからです」
研究者たちは、機械学習アルゴリズムを使って、ハワイ火山観測所のセンサーネットワークが収集した地震データの中から、従来の方法では見落としてしまうほど小さな揺れを探し出した。その結果、ハワイの火山の地下に広がる世界が驚くほど詳しく見えてきた。この発見は、ハワイの火山活動を引き起こす地質学的過程を解明する助けになることが期待される。
ハワイの元地震アナリストで、パハラの群発地震を研究しているマット・バージェス氏は、「火山科学の未来は、ここから開けてくるのかもしれません」と称賛する。
「パズルの大きなピースが欠けている」
パハラの群発地震は、少なくとも1970年から続いている。地震はマントル内の深いところで起きていて、そのほとんどが小さいため、地表を大きく揺らすことはない。
活発な地震活動はまだ収まっていない。パハラにあるコーヒー農園、カウコーヒーミルのジェネラルマネジャーであるルー・ダニエルさんは「私たちの足の下に地震の巣があるのです」と言う。「地震は日常生活の一部です」。揺れが非常に小さいときには、コーヒーの表面の波紋を見て初めて地震に気づくこともあるという。それでも地震がやむことはない。
「近年、地震の頻度は高まる一方です」と、米国地質調査所ハワイ火山観測所の火山地震学者のニンファ・ベニントン氏は言う。
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