「生物多様性のゴッドファーザー」とも呼ばれる米国の著名な保全生物学者トマス・ラブジョイ氏が、2021年12月25日に亡くなった。80歳だった。
ラブジョイ氏は、アマゾンの熱帯雨林を50年以上にわたり研究、非営利団体アマゾン生物多様性センターを設立し、熱帯林の伐採の脅威に世界の目を向けさせた。1971年にナショナル ジオグラフィック協会から最初の支援を受け、2019年に協会のエクスプローラー・アット・ラージになった。1980年には「biological diversity(生物学的な多様性)」という言葉を学界で用い、一気に広まった。
「トムを知るということは、比類なき科学者、教授、助言者であり、強い信念を持って地球を守ろうとする人を知ることでした」と、ナショナル ジオグラフィック協会のCEO、ジル・ティーフェンターラー氏は声明を発表した。「彼は人と人をつなぐ達人でもあり、最も傷つきやすい生態系とこれを支える種の保全・保護のために人びとや組織を結び付けることに大きく貢献しました」
ラブジョイ氏は1980年に初めて世界の生物種の推定絶滅率を発表し、21世紀初頭までに膨大な数の生物種が永遠に失われることを予測した。米エール大学の生物学博士号を取得、3つの政権や国連財団、世界銀行などの団体に対して種の保護や保全生物学分野の発展の方法に関する助言を行った。2010年からは、米バージニア州のジョージ・メイソン大学で環境科学・政策専攻の教授を務めていた。
「トムは生態学と環境保全の世界の巨人でした」と語るのは、ナショナル ジオグラフィック協会のエクスプローラー・イン・レジデンスであるエンリック・サラ氏だ。「しかし何より重要なのは、トムが素晴らしい指導者であり、学生や同僚、友人に対してとても思いやりのある人だったということです」
世界でも最も難しい環境問題に取り組んでいるにもかかわらず、ラブジョイ氏はあくまで楽観主義者だった。「私たちは皆、状況が手に負えなくなったり、それに近づいたりする前にどうにかすることに関心を持っています」と、ラブジョイ氏は2015年にナショナル ジオグラフィック誌の気候変動に関する取材に対して語っている。「私たちが力を合わせればできることがあります。精力も、技術革新の可能性もあります。すべての人に利益をもたらす、生物学的な解決方法はあるのです」(参考記事:「2015年11月号 温暖化を味方にする動物は?」)
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