近い将来に発生する可能性が高いとされる「南海トラフ地震」について、巨大地震発生から1週間以内にさらに別の巨大地震(後発地震)が発生する確率は平時の約100~3600倍になることが、東北大学、京都大学、東京大学の研究チームの試算で明らかになった。研究チームは「南海トラフ地域は世界の他地域と比べて巨大地震の連続発生確率が大きい可能性があることを示せた」としている。
南海トラフ地震は、駿河湾から日向灘沖にかけての陸のプレートとその下に沈み込むフィリピン海プレートの境界を震源域として発生する海溝型地震。過去の事例を見ると、概ね100~150年程度の間隔で繰り返し大規模な地震が発生している。前回の南海トラフ地震(1944年の昭和東南海地震、1946年の昭和南海地震)からすでに80年近くが経過しており、国は今後30年以内の発生確率を70~80%と予測している。
「半割れ」のケースを想定
過去、南海トラフ地震の発生の仕方を振り返ると、マグニチュード(M)8級以上の地震が時間差で発生するケースが知られている。たとえば昭和南海地震は昭和東南海地震のおよそ2年後に発生しているほか、1854年の安政南海地震は安政東南海地震のおよそ32時間後に発生している。
こうした知見を背景に、国は2019年5月から、普段より南海トラフ地震が発生しやすくなったと考えられる場合に「南海トラフ臨時情報(臨時情報)」を発表し、国民に警戒を促す仕組みを導入した。地震が発生しやすくなったと考えられるケースには「M8.0以上の地震が起こった場合(半割れケース)」「M7.0以上8.0未満の地震が起こった場合(一部割れケース)」「異常な地殻変動が観測された場合(ゆっくりすべりケース)」の3ケース。この中でも後発地震が発生する確率が最も高いと考えられているのが、昭和や安政の南海トラフ地震と同じ半割れケースで、このケースで臨時情報が発表されると事前避難を含む防災対応が求められる。
しかし、半割れケースの時に、実際にどのぐらい巨大地震が連続発生しやすくなるのかを具体的に計算して確率で示したものはなかった。このため、研究チームは、過去100年超の世界の地震統計データと1361年以降に発生した南海トラフ地震の発生履歴を組み合わせることで、南海トラフ巨大地震が連続発生する確率を算出した。