「最初期の銀河」が予想以上に多く見つかる、従来説を見直しか

ジェームズ・ウェップ宇宙望遠鏡が明らかにする初期宇宙、新たに浮上した謎

2023.01.30
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
科学者たちはジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を使って原初の宇宙をのぞき込み、宇宙誕生から3億〜4億年しかたっていない時期の銀河を発見した。(IMAGE BY NASA, ESA, CSA, M. ZAMANI (ESA/WEBB))
科学者たちはジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を使って原初の宇宙をのぞき込み、宇宙誕生から3億〜4億年しかたっていない時期の銀河を発見した。(IMAGE BY NASA, ESA, CSA, M. ZAMANI (ESA/WEBB))
[画像のクリックで拡大表示]

 NASAのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(以下、JWST)が本格的に稼働して約半年。JWSTの超高感度の赤外線の目は、私たちの期待に応えて、時の始まりに近い時代に輝いていた初期銀河の姿を見せてくれている。

「そうした銀河が、おそろしくたくさんあるのです。あまりにも多く、あまりにも大きく、あまりにも明るく、あまりにも高温で、あまりにも成熟していて、あまりにも早すぎるのです」と、JWSTの上級プロジェクト科学者であるNASAのジョン・メイザー氏は、2023年1月に米国シアトルで開催されたアメリカ天文学会で語った。(参考記事:「20年間の活躍が楽しみな初画像、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」

時間をさかのぼるタイムマシン

 望遠鏡はタイムマシンのようなものだ。遠方の宇宙を見ることは、時間を大きくさかのぼることでもある。望遠鏡がとらえる光は、何百万年も何十億年も前の天体の輝きだ。

 膨張する宇宙の中を進んでくる光は、波長が引き伸ばされてる(可視光で言えば「赤く」なる)。この現象は「赤方偏移」と呼ばれる。天文学者は、赤方偏移の大きさを測定することで、天体までの距離を計算することができる。赤方偏移が大きいほど、その天体は遠くにあることになる。

 天文学者たちは、赤方偏移の大きい銀河を見つけるために何十年も激しく競争してきた。2015年当時に知られている最も遠い銀河は、赤方偏移の量が8か9だった。その後、ハッブル宇宙望遠鏡が赤方偏移11前後の銀河GN-z11を発見した。そして今、JWSTの観測データにもとづく研究成果が出はじめている。(参考記事:「132億年前の銀河、ハッブルが観測」

 2022年12月には、米国ボルチモアの宇宙望遠鏡科学研究所で開催された科学会議で、英ハートフォードシャー大学の天体物理学者であるエマ・カーティス=レイク氏が、これまでで最大の赤方偏移をもつ銀河の発見について発表した。

(Photographs by the JWST Advanced Deep Extragalactic Survey (JADES) using JWST’s NIRCam instrument / Diana Marques, NGM Staff  Sources: NASA; ESA; STScI; E. L. Wright,  A Cosmology Calculator for the World Wide Web, 2006)
(Photographs by the JWST Advanced Deep Extragalactic Survey (JADES) using JWST’s NIRCam instrument / Diana Marques, NGM Staff Sources: NASA; ESA; STScI; E. L. Wright, A Cosmology Calculator for the World Wide Web, 2006)
[画像のクリックで拡大表示]

 彼女が率いる深宇宙観測プログラム「JWST Advanced Deep Extragalactic Survey (JADES) 」は、JWST の近赤外線カメラで撮影された10 万個の銀河の画像の中から、最も興味をそそられる銀河を選び出し、今度はJWSTの近赤外線分光器を使って、その正確な赤方偏移、つまり銀河の年齢と距離を明らかにした。

 JADESの科学者たちは、誕生からまだ3億〜4億年しかたっていない宇宙にあった、4つの銀河までの距離を確認した。そのうちの2つはハッブル宇宙望遠鏡にもとらえられていたが、残りの2つはハッブルの観測範囲よりもはるかに遠いところにあり、赤方偏移は12.6と13.2だった。これらの銀河は、重元素が大量に形成されるよりも前の時代のものであるため、大部分が水素やヘリウムなどの軽元素からできているという。

ありえない古さの銀河たち

 ボルチモアの科学会議では、JWSTのもう1つの初期銀河観測プログラム「Cosmic Evolution Early Release Science(CEERS) 」の天文学者たちも発表を行った。CEERS が公開した最初のモザイク画像は、北斗七星のひしゃくの柄が折れ曲がるあたりの空を詳細にとらえた、690枚の画像を合成したもので、これまでに公開されたJWSTの銀河観測画像の中では最も大きい。

次ページ:予想以上に多くの星があった

ここから先は、「ナショナル ジオグラフィック日本版」の
会員*のみ、ご利用いただけます。

会員* はログイン

*会員:年間購読、電子版月ぎめ、
 日経読者割引サービスをご利用中の方、ならびにWeb無料会員になります。

おすすめ関連書籍

ビジュアル 銀河大図鑑

この上なく美しく、どの本よりも詳しく、誰にでもわかりやすい。大人も子供も楽しめる、本格的な宇宙図鑑! 〔日本版25周年記念出版〕 〔全国学校図書館協議会選定図書〕

定価:6,930円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加