愛をつかむのは命懸け、動物たちのユニークで多様な求愛行動5選

ひたすら待つヤマアラシから、プレゼントを贈るクモまで

2023.02.26
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色鮮やかな羽をメスに見せるゴクラクチョウのオス。(PHOTOGRAPH BY TIM LAMAN, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
色鮮やかな羽をメスに見せるゴクラクチョウのオス。(PHOTOGRAPH BY TIM LAMAN, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 動物界に普遍的なニーズがあるとすれば、それは繁殖したいという強烈な欲求だろう。しかし、意中の相手を射止められなければ、その欲求を満たすことはできない。

 複雑なダンスを披露してメスを誘う鳥もいれば、魅力的な尿を体にまとってオスを魅了するサルもいる。「婚姻贈呈」と呼ばれる贈り物をする種もある。贈り物は、私たちが異性に送るような「バラやチョコレートばかりではありません」と、米国アリゾナ大学ツーソン校の生態学准教授ジェニファー・ベルドリン氏は話す。「すべて環境や生活史、その生物の課題などに適応した結果です」

 それでは、動物たちが繰り広げる興味深い求愛行動をいくつか紹介しよう。

尿を使い、ひたすら待つ

 米国ニューヨーク市立大学の生物学名誉教授で、カナダヤマアラシについての著書があるウルディス・ローズ氏によれば、このヤマアラシのメスの発情期は1年にわずか8〜12時間だけだという。

 この短いチャンスを近くのオスに知らせるため、メスは尿の組成を魅力的なものに変化させる。すると、オスたちがやって来て、とげだらけの尾で争奪戦を繰り広げる。そして、勝者がメスの木に登って待つ。

 そして、待つ。

カナダヤマアラシのメス(写真は米国サウスダコタ州のグレートプレーンズ動物園で撮影)は発情期がとても短い。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
カナダヤマアラシのメス(写真は米国サウスダコタ州のグレートプレーンズ動物園で撮影)は発情期がとても短い。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
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 メスは発情期が近いと知らせただけであり、交尾の準備が整っているとは限らない。そのため、勝利したオスはできる限りのことをする。メスに向かって尿を噴射するのだ。ローズ氏によれば、オスの尿には、メスをその気にさせるトリガー分子が含まれている可能性があるという。

 数時間後、ヤマアラシはカップルで地上に降り立ち、ついに交尾する。ほかのオスが交尾しないように、また、自分の精子が漏れ出さないように、オスはメスの膣に栓をして、ふらつきながら立ち去る。

次ページ:「私はすごい」メスにアピール

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