この記事は雑誌ナショナル ジオグラフィック日本版2023年4月号に掲載された特集です。定期購読者の方のみすべてお読みいただけます。
世界の人口は目下、最多記録を更新中だが、今世紀中に新たな局面を迎えるかもしれない。人口の伸びが頭打ちになり、減少する可能性があるのだ。国によっては急増するが、大きく減らす国もある。
人類の歴史は、新たな節目を迎えた。国際連合の統計によると、世界の人口は2022年11月に80億人に到達した。1974年に国連が各国の代表を集め、人口増加について話し合う国際会議を初めて開催してから50年もたたないうちに、2倍になったのだ。当時、人口1000万人以上を抱える大都市圏は、ニューヨーク市と東京、メキシコシティの三つだけだったが、現在は30都市を超えている。
人口爆発の要因は、医療、公衆衛生、農業生産の著しい進歩にほかならない。それにより、子どもの死亡率が大幅に低下し、平均余命が延びている。今世紀末の世界の人口について、オーストリアの国際応用システム分析研究所は94億人、米国シアトルの保健指標評価研究所は97億人に達すると予想していて、国連の専門家は104億人に達する可能性もあるとみている。
だが、新たな変化の兆しも見られる。増加の一途をたどってきた人口が、今世紀中頃から2100年の間に頭打ちになると予測されているのだ。
国連経済社会局人口部で人口の推移の予測を受け持つパトリック・ガーランドは、「世界の人口はおそらく今世紀末までにピークを迎えるという認識で一致しています」と話す。現在生きている子どもたちや一部の成人は、地球の人口が横ばいになるか減少に転じるという、過去数百年間あるいは数千年間、人類が経験したことのない出来事を目の当たりにする可能性がある。それがどのような影響をもたらすのかは、未知数だ。
世界人口の減少という事態に至るまでに、国によって著しく対照的な傾向が見られることになりそうだ。今後25年間に増加すると予測される人口の半分以上は、アジアとアフリカのわずか8カ国、すなわちパキスタン、フィリピン、インド、エジプト、エチオピア、タンザニア、ナイジェリア、コンゴ民主共和国の人々が占めると考えられている。一方、今世紀末までには、タイ、スペイン、日本をはじめ、23カ国で人口が半減する可能性があると予想される。人類史の中で、この変化はどのような意味を持つのだろうか。正反対の現実に直面しているのが、中国とナイジェリアだ。対極にあるこの二つの国から、多くのことがわかる。
世界中の人々が、医療の進歩と生活水準の向上などによって、以前よりも長く生きるようになった。だが出生率の低下によって、寿命が延びたことで生じるはずの人口の増加が打ち消されている。