80億人の地球 「増えるナイジェリア」

増え続ける人口を支えられるか?

2023.03.29
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五つ子を育てる
五つ子を育てる
長いこと妊娠を望んでいたフォイェケ・オマゲと夫のエワンレが、五つ子を授かった。奇跡のようだと喜ぶが、子育てのために借金も抱えた。子どもたちが29歳になる2050年には、ナイジェリアの人口はさらに1億5000万人増え、社会も大きく変わっているだろう。(PHOTOGRAPH BY YAGAZIE EMEZI)

この記事は雑誌ナショナル ジオグラフィック日本版2023年4月号に掲載された特集です。定期購読者の方のみすべてお読みいただけます。

ナイジェリアの人口は、2050年までに3億7700万人に達すると予測されている。アフリカ最大の人口を抱える国で生まれた子どもには、どのような未来が待っているのか?

 2022年秋のある日、地球は80億人の人間が生きる惑星になった。人類の歴史のなかでこれほど多くがともに存在したことはない。

 きっかり80億人目の赤ちゃんは、その年の11月に世界で生まれた約1200万人の誰だったかはわからない。東京の病院か米国ワイオミング州の農場、ウクライナのキーウの防空壕(ごう)で生まれた女の子だったかもしれない。それとも、ルワンダの難民キャンプかアマゾンの小さな集落、北極圏の人里離れた町で生まれた男の子だったかもしれない。あるいは、2022年11月12日にナイジェリアの首都アブジャで、ケネスとアマラ・オコンクウォ夫妻の第2子として、体重2750グラムで誕生した女児、エジアク・ケンドラ・オコンクウォだったかもしれない。

 80億人目の赤ちゃんがナイジェリア生まれかもしれないというのは、理にかなった推測だ。同国の人口は現在およそ2億2400万人で、アフリカで最も人口の多い国だからだ。医療も徐々に進歩して、乳幼児の死亡率は1000人当たり72人にまで減少し、平均寿命も53歳まで延びた(ただし、いずれもまだ国連の目標を大きく下回っている)。こうした要素が、大家族を好む伝統と相まって、ナイジェリアを世界有数の人口増加率の高い国にしている。

人口が増大するアフリカ
人口が増大するアフリカ
現在から2050年までに世界で増える人口のうち、サハラ以南のアフリカが3分の2を占める。その頃、ナイジェリアは世界で3番目に人口の多い国になり、年齢の中央値は23歳を下回ると予測されている。(JASON TREAT, NGM STAFF 出典: UNITED NATIONS POPULATION DIVISION; SAMUEL CLARK, OHIO STATE UNIVERSITY)

 ナイジェリアの国土面積は米国の10分の1足らずだが、エジアクが28歳になる2050年までに、人口は3億7700万人に達し、インドと中国に次ぐ世界第3位になると予測されている。たとえるならば、米国民とカナダ国民の全員を、米国のテキサス州とオクラホマ州、それにルイジアナ州の西半分に詰め込んだような状態だ。そのとき、ナイジェリアはどんな国になっているだろうか。その未来を、これから体験するエジアクの目を通して見ていこう。彼女の育つ環境は、その両親やナイジェリア人である私自身が育った環境とは、大きく異なっているはずだ。

次ページ:ナイジェリアの医師の数は、人口1万人当たり4人

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