ストレスや不安を感じて食欲がなくなる人もいれば、逆に食べ過ぎてしまう人もいる。（PHOTOGRAPH BY BRIAN FINKE）

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　よく、ストレスを感じると甘いものが食べたくなるというが、ストレスへの対処法は人それぞれだ。食べる量が増えたり、高カロリーで糖分や塩分、脂肪分が多い食べ物が欲しくなる人もいれば、逆に食欲が減る人もいる。また、ストレスが食欲にまったく影響しないという人もいる。

　人によってこうも反応が違う理由は複雑だ。「行動や環境、遺伝的要因が互いに作用しあって、ストレス過食（やけ食い）に陥りやすい人がいることを、科学は示唆しています」と、米ジョンズ・ホプキンス大学医学部の精神医学と行動科学の助教で、食の行動について研究しているキンバリー・スミス氏は言う。（参考記事：「トカゲも「ストレス食い」、動物たちのストレスとの付き合い方」）

　多くの人の場合、「コルチゾールが分泌されて食欲が増し、特に脂肪分または糖分が多いものが欲しくなります」と氏は言う。コルチゾールには様々な機能があるが、ストレスホルモンとしてよく知られている。強いプレッシャーを受けたり不安感が高まったりすると分泌量が増えるためだ。コルチゾールが増えると空腹を感じたり、脂肪を蓄積したり、食欲を調節する脳の領域への血流が減ったりする。

　減量のために厳しく食事を制限していると、逆にストレス過食に陥りやすくなる。「そういう人こそ、ストレスを受けると食事制限などどうでもよくなって、つい食べ過ぎてしまいます」と、米ジョージ・メイソン大学公衆衛生学部の栄養学・食品学教授で、消化器専門医のローレンス・チェスキン氏は言う。

ストレスと食欲

　ストレスの受け止め方も、人によって異なる。しかし、急性的なストレスと慢性的なストレスがそれぞれ食欲に与える影響には、はっきりとした違いがある。

　間一髪で交通事故をかわした、あるいは仕事でプレゼンしなければならないといった急性的なストレスを受けると、一般的に食欲は下がる傾向にあると、米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院と米ハーバード大学医学部の精神医学准教授で臨床神経科学者のローラ・ホルセン氏は言う。

　逆に、うまくいかない結婚生活や仕事などで慢性的にストレスを受けていると、食べる量が増えることが多い。ホルセン氏によると、空腹感を引き起こすグレリンというホルモンが上昇したままの状態になるためだという。（参考記事：「食欲を左右する7つのホルモン、自分でコントロールするには」）

　ストレスなどによるネガティブな感情が引き金となる「感情的摂食」が習慣化すると、脳の報酬回路がうまく働かなくなることを示した研究が2022年1月に学術誌「Appetite」に掲載されている。その結果、脂肪分や糖分が多い食べ物を食べたときの報酬感が薄れ、そうした食べ物をますます求めるようになる。こうして過食の悪循環に陥るのだとスミス氏は説明する。

　生涯にわたってたまり続けたストレスも、過食に影響するようだ。過去に多くのストレスを経験した女性は、ストレスの多い作業（スピーチの準備と発表）を終えた後に、他の参加者よりも多くチョコレートを食べたという結果が、2023年6月1日付けで「Appetite」に発表された研究で示されている。

「食べてストレス解消」のしくみ

　食欲を満たしてストレスに対処するという方法は、学習によって身に着けた反応かもしれないと、チェスキン氏は言う。「物を食べてストレスを解消するような人が周囲にいる環境で育ったなら、自分も同じことをして対処しようと思うようになるかもしれません」。そして、ストレスを感じたときにクッキーやポテトチップを食べて少しでも気分が良くなったことに気づくと、その後もずっと同じ方法で対処するようになる。

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