混迷の祖国を離れ、少女たちに学ぶ場を

教育の機会を奪われた少女たちのために、立ち上がったアフガニスタン女性

2023.06.29
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教育の機会を奪われた少女たちのために、祖国を離れてルワンダで学校を再開したシャバナ・バシージ゠ラシーフ。(PHOTOGRAPH BY PARI DUKOVIC)
教育の機会を奪われた少女たちのために、祖国を離れてルワンダで学校を再開したシャバナ・バシージ゠ラシーフ。(PHOTOGRAPH BY PARI DUKOVIC)

この記事は雑誌ナショナル ジオグラフィック日本版2023年7月号に掲載された特集です。定期購読者の方のみすべてお読みいただけます。

タリバンが復権した祖国を脱出したシャバナ・バシージ゠ラシーフは教育の機会を奪われた少女たちのために、ルワンダで学校を再開した。ナショナル ジオグラフィックとロレックスは、その活動をたたえ、彼女を2023年の「エクスプローラー・オブ・ザ・イヤー」に選んだ。

 子どもが二人、タリバン占領下のカブールにある家を出た。年上の子はブルカをまとい、髪の短い子はズボンをはいている。通りすがりの人々は皆、姉と弟がお使いに行くところだと思っただろう。二人は毎日、違う道を通った。目的地に着くと、誰も見ていないことを確かめ、さっと建物に入る。

 二人の行き先は学校だった。

 それは、女子の教育が違法とされてまもない、1996年秋のことで、女の子を学校に通わせたことがわかれば、教師も親も命の保証はない。年下の子は6歳のシャバナ・バシージ゠ラシーフだった。女性の外出には男性親族の同伴が必須だったため、男の子の服を着て、姉の付き添いを装ったのだ。二人は買い物袋に教科書を隠し、ひそかに授業を受けた。ある日、誰かに尾行されている気がした姉妹は、自分たちを学校に通わせないでほしいと両親に懇願した。両親は耳を貸さず、教育は危険を冒してでも受ける価値があると伝えた。

 2年前、タリバンが再びアフガニスタンを掌握した。31歳になっていたバシージ゠ラシーフは、同国で唯一の女子だけの寄宿学校「アフガニスタン指導者学院(SOLA)」の設立者として、数カ月前から脱出計画を練っていた。学校の記録を燃やし、混乱を極めるカブールの空港へ256人のスタッフと家族、生徒をひそかに運び、ルワンダ行きの飛行機に乗せた。

 タリバンが復権したアフガニスタンでは現在、6年生より上の女子が学校に通うことが禁じられている。女性と少女たちは徐々に存在を消されていると、2023年のロレックス・ナショナル ジオグラフィック・エクスプローラー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたバシージ゠ラシーフは言う。彼女は、勇気と統率力をもって、祖国の少女や若い女性が教育を受けられるように尽力してきた。

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