2018年、ヨルダン南部の埋葬地を発掘していた考古学者が驚くべきものを発見した。琥珀(こはく)やターコイズ(トルコ石)、貝殻などで作られた数千個のビーズ。それに、精巧な彫刻が施された真珠母貝のリング、そしてヘマタイトのペンダントだ。
これらは、紀元前7400年~6800年の間に農牧民が暮らしていたバジャという村の遺跡で発見された。考古学者たちは、新石器時代の住民の社会構造や工芸品、建築物についてより詳しく知るために、1997年からずっとバジャ村の調査を続けてきた。
5年にわたる研究の末、研究者たちは、これらのビーズなどを複数のひもがあるネックレスに復元しただけでなく、その持ち主についてもより詳しく知ることができた。2500個以上のビーズで作られた複雑なネックレスを身に着けていたのは、なんと8歳の子どもだった。(参考記事:「2万年前のペンダントから女性のDNAを発見、画期的な新技術で」)
シリア系フランス人の考古学者ハラ・アララシ氏が率いる国際研究チームは、ヨルダンのペトラ博物館に展示されているこのネックレスの分析結果を2023年8月2日付けで学術誌「PLOS ONE」に発表した。
考古学者たちはこれまで、バジャ村のほかシリアやトルコを含む近東の他の遺跡で、子どもや大人の古代墓地から他の宝飾品も発見している。しかし、これほど精巧で複雑なものは初めてだとアララシ氏は言う。
筒状、平板状、円盤状などさまざまな種類のビーズは大きさも形もほぼ同じで、高度な技術をもった人や集団が特殊な道具を使ってこれらのビーズを作ったことを示唆していると氏は説明する。
ビーズの中には地元で手に入る材料で作られたものもあれば、南へ100キロほど離れた紅海の貝殻や、約240キロも離れたシナイ半島で採れたと思われるターコイズなど、遠く離れた土地の材料から作られたものもある。バジャ村の人々はペトラ遺跡に近い山岳地帯の人里離れた険しい場所に住んでいたため、これらの材料をなぜ、どのようにして調達したのかという疑問が生じると、スペイン国立研究評議会とフランス、コート・ダジュール大学に所属するアララシ氏は言う。(参考記事:「ペトラ遺跡に住み続ける73歳の男、移住を拒否」)
「謎に包まれています。地理的・地形的に孤立しているにもかかわらず、バジャ村の人々は外部と非常によくつながっているのです」
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