秋にドイツのミュンヘンで開かれるオクトーバーフェストは、世界最大規模の民衆のお祭りだ。そして、世界最大のビールの祭典でもある。2022年に飲まれたビールはなんと700万リットル。会場に設営されたテントの中で、来場者はビールを心行くまでジョッキに満たし、ドイツのフォークミュージックに合わせて踊り、期間限定の移動遊園地を楽しむ。
しかし、一つだけ気になることがある。16日間も続くオクトーバー(10月)フェストの大部分は、9月に開催されているのだ。これはなぜなのだろうか。そもそも、なぜオクトーバーフェストは祝われるようになったのだろうか。
始まりは皇太子の結婚祝い
実は、初期のオクトーバーフェストは10月に開かれていた。1810年に、バイエルン王国の皇太子ルートビッヒとテレーゼ・フォン・ザクセン・ヒルトブルクハウゼンの結婚式から数日後の10月17日に開催されたのが、最初のオクトーバーフェストだった。一般市民のために、ある国家警備隊員が祭りのアイデアを出したと言い伝えられているが、学者たちはこの説を疑問視している。
当時、バイエルン王国は誕生したばかりだった。長年にわたり神聖ローマ帝国の選帝侯領だったバイエルンは、マクシミリアン1世がナポレオンと同盟を組んだことによって王国に昇格した。そのため、皇太子の結婚祝いに加えて、首都で祭りを開くことは、新たに生まれた国家の誇りを育み、広くこれを示す機会でもあったのだ。
最初のオクトーバーフェストは、当時ミュンヘンで特に好まれていた伝統の競馬を中心とする1週間のスポーツの祭典だった。このときはまだ、現代のオクトーバーフェストを象徴する要素はほとんどなかったが(ビールを売り始めたのは1815年以降だ)、祭りは大成功だったとされている。
それ以来、会場となった牧草地は、花嫁である皇太子妃の名にちなんで「テレーゼ緑地」と呼ばれるようになった。そしてこのテレーゼ緑地で、今もオクトーバーフェストが開催されている。
ビールや移動遊園地が登場
その後も祭りを望む声は多かったが、結婚式のように予算を使う理由がなかったため、別の誰かが計画を引き継ぐ必要があった。すると翌年、農業が盛んなバイエルンで影響力を持っていたバイエルン農業協会が名乗りを上げた。そして、競馬だけでなく牛の販売会も開催し、コンテストで賞を取った牛たちを展示した。
1819年以降は、ミュンヘン市が祭りの企画を引き継ぎ、それから数十年の間に、メリーゴーラウンドや観覧車などの乗り物や、ローストチキンの屋台などが加わり、現代のオクトーバーフェストの形が出来上がった。公式のオクトーバーフェストは今もミュンヘンの同じ場所で開かれているが、ドイツの伝統を祝うという名目で同様の祭りが全国で開かれるようになった。(参考記事:「チーズ好きなら一生に一度は訪れたい街 5選」)
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