病気の時こそ「こうあらねばならない」を手放そう 何でも自分でやるのではなく周りの人を頼って

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病気や治療で今までできていたことができなくなってつらい。そんなときは自分の中のmustを手放してみましょう(写真:IYO/PIXTA)
病気になる。しかも、それががんのような重い病気だったとしたら――。病気や治療に対する不安な気持ちや、うつうつとしたやりきれなさを抱える、そんながん患者に寄り添ってくれるのが、精神腫瘍医という存在です。
これまで4000人を超えるがん患者や家族と向き合ってきたがんと心の専門家が、“病気やがんと向き合う心の作り方”を教えます。今回のテーマは「勇気を持って『must(自分はこうあらねばならない)』に背いてみよう」です。

前回の記事(「できていた事ができなくなった」自分を許せるか)では、自己肯定感が低い人の潜在意識には、「自分はこうあらねばならない(=must)」という強い考えがあるということを説明しました。物心がついたころは、純粋無垢な「こうしたい(=want)」の自分しかいませんが、成長するにしたがって周囲とのかかわりのなかで、mustの自分ができあがっていきます。

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主治医の勧めで外来を受診した乳がん患者の吉田恵理さん(仮名、52歳)の場合は、「家事をきちんとこなす主婦でなければならない」というmustがありました。がんやがん治療の影響で体力が低下し、そのmustを満たすことができない自分はダメだと、自己否定してしまう状況になっていたのです。

初診から2週間後のこの日は、吉田さんの受診日でした。

「こんな自分じゃだめだ」と落ち込む

相変わらず「こんな自分じゃだめだ」と思ってしまい、落ち込んでいるとのこと。ご自身が完璧主義の傾向があることを頭では理解しているようで、「“そこまで完璧を求めなくてもいいじゃない”と思うのですが、つい“それじゃだめだ”という思いが勝ってしまうんです」と言います。

そこで、私は1つ質問をしてみました。

「子育ての経験がある吉田さんなら実感されているでしょうが、物心がついてまもなくの子どもは、完璧主義ではないですよね。吉田さんも、小さいころはのびのびと自分の欲求や感情のままに生きていたと思うのです。そうすると、今のように完璧主義になったポイントがあったと思うのですが、いつからそのような“きちんとしなきゃ”という考え方が芽生えたんですか」

次ページ吉田さんが話した、小さいころの話とは
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