「ピーマン嫌い」にみじん切りで挑む親の深刻盲点 調理の工夫は根本的な解決にならない納得の理由

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偏食の子どもにはどう対応するといいのでしょうか(写真:Fast&Slow/PIXTA)
人前で食事ができない「会食恐怖症」に苦しんだ自身の経験を生かして、極度の小食や偏食の「食べない子」を専門にした食育カウンセラーとして、これまで全国で3000人以上の保護者を指導してきた山口健太さん。精神の鍛練や調理の工夫ではなく、誰でもすぐにできるコミュニケーションの工夫で、多くの子どもの小食・偏食を改善に導いてきました。山口さんの著書『食べない子が変わる魔法の言葉』から一部抜粋・再構成、子どもの食に悩む保護者に向け、いくつかのアドバイスを紹介します。

子どもの小食・偏食はみじん切りでは解決しない

私のメソッドの一番の特徴は、調理の工夫の優先度を下げて、コミュニケーションの工夫で「食べない子」を「楽しく食べられる子」に変えるという点です。

「何でも好き嫌いなく食べられる子」はめったにいません。だから、「食べられない」ことの深刻さは理解されづらいものです。さらに「子どもの頃に食べられなかったものが、大人になってから食べられるようになった」という経験を多くの方がしているので、「そのうち食べられるようになるから大丈夫だよ!」と言われがちです。でも、そんなまやかしの言葉では解決できない、「本当に食べられない子」がいるのも事実です。

一般的には、ひどい小食や偏食など「食べない子」への対策といえば「調理の工夫」を、まず初めに考えるのではないでしょうか。たとえば、ピーマンが苦手な子がいたとします。対策として、ピーマンを細かく刻んで、こっそりハンバーグに入れました。結果、どうなるでしょうか?

その子は、ピーマン入りハンバーグを食べるかもしれません。しかしその後、他のピーマン料理も食べられるようになるとは限りません。そして、ピーマンを食べてもらうために、毎回細かく刻んでハンバーグに入れるという調理の工夫をし続けなければなりません。

……疲れちゃいませんか?

そもそも、世の中には料理が得意な人ばかりではないのです。調理の工夫は、料理が苦手な人にとっては特に苦痛です。料理が好きな人でも、食べてくれないと、「せっかくこれだけ時間とエネルギーを費やしたのに……」と落ち込んでしまったり、仮に食べてくれたとしても「ずっと、これを続けなければならないの?」と、疲れ果ててしまうケースもあります。これでは長続きしないし、なにより楽しい食卓にはなりませんよね。つまり、調理の工夫は、根本的な解決にならないのです。

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