30歳がんで逝った男が遺した闘病2年半の生き様 棋士目指し最後まで勝負師だった天野貴元のブログ

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最後の3年間の歩みが詰まった『天野貴元ブログ「あまノート」』(筆者撮影)
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故人が残したブログやSNSページ。生前に残された最後の投稿に遺族や知人、ファンが“墓参り”して何年も追悼する。なかには数万件のコメントが書き込まれている例もある。ただ、残された側からすると、故人のサイトは戸惑いの対象になることもある。
故人のサイトとどう向き合うのが正解なのか? 簡単には答えが出せない問題だが、先人の事例から何かをつかむことはできるだろう。具体的な事例を紹介しながら追っていく連載の第18回。

奨励会退会の1年後に末期がん発覚

<この度医師より正式に舌癌と診断されました。
全ての仕事を中断し、来月上旬に入院手術を行う事が決定。なぜこんな事になってしまったのかは原因不明らしく、残念としか言いようがありません。
癌にはレベルが4つあって、一番ヤバいステージ4。さらに顎にも転移していてそっちはレベル1。手術は約12時間かかる大手術で、仮に助かったとしても言語障害が残るらしく、ごもるっていうか普通に会話ができなくなる事になりました。
淡々と説明を聞いてたけど、それでも人は生きていかなければいけない。27歳で原因不明の癌とかツイてないとしか言えないけど、こうしてあえて発信する事で少しでもみなさんそれぞれの人生の勇気になれたらいいなと思って明るく書く事にしました。将棋はよく途中で諦めていたけど、今回だけは最後まで諦めず闘病します。>
(あまノート/2013年3月28日「皆様にご報告」)

『天野貴元ブログ「あまノート」』(http://amanoyoshimoto.blog.fc2.com/)というブログがある。将棋の棋士を育成する奨励会でプロ直前の階級まで進み、年齢制限から退会した経歴を持つ天野貴元(あまの よしもと)さんのブログだ。

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26歳で奨励会から離れ、27歳で末期の舌がんと診断された。人生をかけた目標が目の前から消えた1年後に訪れた生命の危機。「あまノート」には当時の心情がつづずられているが、全体を通して絶望感はほとんどない。

事実から目を背けているわけではないことは、退会後も将棋に関わり続けたことや、診断から間を置かずに上記の投稿をしたことからもわかる。Twitter(https://twitter.com/amanoyoshimoto)やFacebook(https://www.facebook.com/yoshimoto.amano)アカウントでも同じ感じだ。

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