2000連休で「文字絶ち」試した男に現れた凄い効果 読むことは食べることと相似、無自覚では頭を壊す

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「言葉の断食」をやってみた彼が悟ったこととは?(写真:Graphs/PIXTA)
2022年も残すところあと数日。1年の疲れを癒すため、自宅や旅行先で年末のお休みを満喫されている方も多いのではないでしょうか。
会社員であれば年末年始の10日程度、学生ならば冬休みの15日程度が「連休」の相場。ところが、『人は2000連休を与えられるとどうなるのか?』の著者・上田啓太氏は、結果的に6年間、驚異の2000連休以上を過ごしました。
あまりに長い連休の間に、人間の感情や身体はどのように変化していくのか。同書より一部抜粋、再構成してお届けします。
連休中のある日、ネットの文章を読みことに疲れた著者は、言葉の断食を始めてみることに。ネット、読書はおろか、一切の文字を読むことを禁止された生活は、人に何をもたらすのか。2000連休中ならではの克明なドキュメント。

文字を読むことをやめてみる

しばらくネットを見る頻度を減らしてみた。

ネット空間には雑多な文があふれており、雑多であるがゆえに好きだったのだが、物置居住後はネットにあふれる大量の言葉に疲れていた。単純にネットを見る時間が増大したからかもしれない。スマホの普及によって書き込む人間の数が大幅に増えて、いよいよネットに断片的な言葉が増えてきたこともあるかもしれない。

ネットは書き込まれたものがそのまま載るし、よほどのことがないと削除もされない。ジャンクな言葉がたくさんある。さわると糸を引きそうな文章にふれてうんざりする。怨念がビュッと顔にかかるのも嫌だ。

アマゾンのレビューを見ていて、不意打ちのように生々しい憎悪に出くわして驚くこともある。それは、「私はこの作者に親友を殺されたので評価が厳しくなりましたが」と最後に書かれていないと納得がいかないほどの強い憎悪で、無関係な自分がしばらく落ち込む。

今の生活で危険だと気づいたのは、ネット以外の人間関係が極端に薄まった結果、こうした悪意への抵抗力が弱まり、ネットの言葉とうまく距離を取れなくなってきたことだ。ネットの悪意に飲み込まれる。どこかで読んで嫌だなと感じた言葉が、ふとしたときに自分の口から出てきていると気づくと焦る。

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