トヨタ社長交代後「水素」が重責を担う確かな予感 燃料電池車だけでなく多様な活用が想定される

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水素エンジンを積んだGRカローラ
2022年スーパー耐久シリーズ(S耐)に参戦した水素エンジンを積んだGRカローラ(撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY/トヨタグローバルニュースルーム)

豊田章男社長が4月1日付で代表取締役会長に就き、現時点では執行役員のひとりであり、Lexus CompanyとGR Companyのプレジデントも兼任する佐藤恒治氏が、新たに社長に就任するというトヨタ自動車の発表は、大きなサプライズだった。

佐藤氏は現在53歳で、豊田章男社長の就任時の年齢とちょうど同じ。まだまだ若い……というよりも正直、レース参戦など非常に精力的で、かつてよりも若くすら見えるその豊田社長が「自分は古い人間だから」と話したことに、気づけばずいぶん時間が経ったのだなと感じた。

そんな豊田社長の功績をあげていけばキリが無いが、個人的に印象が強いのは水素エネルギーの利活用に対する積極的な取り組みの数々である。もっとも象徴的なのは、やはり2014年の燃料電池自動車(FCEV)、「MIRAI」の発売だろう。まだ21世紀になる前から、次世代のクルマはこれになると言われ、世界の自動車メーカーが開発を手掛けてきたものの、多くがモノにできずに終わったFCEVをトヨタが見事、市販車として世に出したのはまさにエポックメイキングだった。

MIRAIと初代プリウスの大きな違い

まさに退任を表明したことによって、今回の一連のトップ人事の引き金となったという内山田竹志会長がチーフエンジニアを務めた1997年の初代「プリウス」の登場と同じくらいのインパクトがあったと言いたいが、冷静に見れば両車には大きな違いがあった。

初代プリウスがハイブリッドであるのみならず、車両パッケージング、デザインなどあらゆる面でイノベーティブな存在だったのに対して、初代MIRAIはいわば既存の車体に燃料電池システムを載せた“だけ”のクルマだった。官公庁への納入を期待して無理やりセダンとしてまとめたデザインはお世辞にも美しいとは言えなかったし、動力性能もそこそこ。先進装備の類も特に秀でたものはなく、なんとパーキングブレーキは足踏み式だったりもした。

しかも、ほぼ同時期にテスラ「モデルS」が登場して、スタイリッシュなデザインと最先端のヒューマンマシンインターフェース、凄まじい俊足ぶりといったキャッチーな魅力でアピールしたものだから、MIRAIの存在感が薄れてしまったことは否めない。もしもこの時、MIRAIがスタイリッシュで速いクルマだったら、今のテスラとの位置関係は変わっていたかもしれないなと考えるのは、余談である。

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