中国「生鮮食品EC大手」、収益性高め初の黒字化 叮咚買菜、「前置型倉庫」のビジネスモデル貫く

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叮咚買菜はアプリ経由で受注した生鮮食品を、市街地に配した小規模倉庫からスピード配送する(写真は同社ウェブサイトより)

中国の生鮮食品EC(電子商取引)大手の「叮咚買菜(ディンドンマイツァイ)」は2月13日、2022年10~12月期の四半期決算と2022年の通期決算を発表した。それによれば、10~12月期の売上高は62億元(約1204億円)と前年同期比13.1%増加、純利益は4988万元(約9億6849万円)を計上し、四半期ベースで創業以来初の最終黒字を達成した。

2022年通期では、売上高は242億2000万元(約4703億円)と前年比20.4%増加した。純損益は5億7000万元(約111億円)の赤字だったが、(本業の稼ぐ力を示す)営業キャッシュフローはプラスに転じた。

「わが社はシンプルなビジネスモデルを貫いてきた。同業他社がビジネスモデルを絶え間なく修正するなか、消費者の立場で最も簡便な方法にこだわった」

叮咚買菜の創業者兼CEO(最高経営責任者)の梁昌霖氏は決算説明会でそう語り、「10~12月期の最終黒字達成でビジネスモデル(の正しさ)が証明された」と胸を張った。

自社加工のプライベートブランド強化

叮咚買菜は、スマートフォンのアプリ経由で受注した生鮮食品を最短29分で顧客に届ける。それを可能にするため、「前置型倉庫」と呼ばれる小規模な倉庫兼配送センターを市街地に数多く配置している。前置型倉庫では(スーパーマーケットのような)小売りはしておらず、(立地を選ばないため)賃料を低く抑えられる利点がある。

とはいえ、大規模な倉庫を郊外に設置する一般的な形態と比べて、前置型倉庫のビジネスモデルは総合的な物流コストが高くなる。2022年7月末にはライバルの「毎日優鮮(ミスフレッシュ)」が実質的に経営破綻し、従業員の大部分を解雇した。そうしたことから、市場関係者の間では叮咚買菜のビジネスモデルへのこだわりを疑問視する声もあった。

そんななか、どのようにして収益性を改善したのか。叮咚買菜の説明によれば、農産品の直接買い付けやプライベートブランド商品の開発、食品の自社加工などの(中間マージンを省く)取り組みを進めると同時に、より利益率が高いドアツードアの配送サービスを拡大したことが効果を上げたという。10~12月期の決算報告書によれば、同四半期の粗利率は32.9%と前年同期比5.2ポイント向上している。

本記事は「財新」の提供記事です

プライベートブランドに関しては、2020年に食品の商品開発と自社加工を手がける「叮咚谷雨(ディンドングーユィ)」を立ち上げた。これまでに80アイテムの商品を投入しており、その売り上げは叮咚買菜の総売上高の1割強を占めるまでになっているという。

(財新記者:楊錦曦)
※原文の配信は2月15日

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