FRBは銀行よりインフレ、年内の利下げは見込み薄 5月に0.25%利上げし様子見へ、140円復帰も視野

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パウエル米FRB議長
パウエルFRB議長は依然としてインフレと闘う(写真:Bloomberg)

注目された3月のFOMC(連邦公開市場委員会)は0.25%の利上げを決定し、FF金利誘導水準は4.75~5.00%へ引き上げられた。金融機関に対する経営不安を背景として一部では利上げ停止観測も浮上していたが、従前路線が貫かれた格好である。

3月13日の「銀行破綻に葛藤するFRBが利下げに走らない理由」でも議論したように、中長期的な視点に立った場合、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)にとって最悪の展開は、銀行経営不安に配慮して必要な利上げが行われず、インフレが加速、賃金上昇を伴うインフレ第2波に対し再度大幅な利上げが必要になるという展開である。

そうしてインフレの制御が難しいとの機運が充満すれば、社会は不安定化しかねない。

ずさんな金融機関救済より市井の生活

よりイメージしやすい例えを用いて言えば、現在のアメリカで最も深刻な問題は牛乳や卵、そして光熱費の価格高騰によって市井の人々の生活が危機にさらされているという事実である。

金融不安に伴いシステミックリスクそれ自体が現実味を帯びるならば、利上げ停止(場合により利下げ)も必要となる。だが、その緊急性は高くないというのが大方の判断である。

これに対し、インフレ高止まりによる実質所得環境の悪化は紛れもない現実であり、政治的にも放置が難しい。ずさんなリスク管理で不安定化する金融機関を救済するよりも、市井の人々の生活に配慮した政策運営が政治・経済的に要求される状況ということだろう。バイデン政権への配慮もないとはいえまい。

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