マツダ「米国通」の新社長に託された重大責務 EV投資の原資確保へ「6万ドル」の高級SUV投入も

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マツダが2023年春にアメリカで発売する新型SUVの「CX-90」
マツダが2023年春にアメリカに投入する3列シートの新型SUV「CX-90」。最上位グレードは約6万ドルとなるフラッグシップで収益貢献に期待がかかる(写真:マツダ)

「販売会社がマツダビジネスで儲けて、さらにマツダブランドに再投資する循環を作っていく」

マツダの新社長に就任する毛籠勝弘専務と現社長の丸本明氏
マツダは5年ぶりに社長が交代する。毛籠勝弘専務(左)が新社長に就任し、現社長の丸本明氏(右)は相談役に退く。自動車産業が変革期を迎える中、電動化などの経営課題に取り組む(写真:マツダ)

6月の株主総会後にマツダの新社長に昇格する毛籠(もろ)勝弘・取締役専務執行役員(62歳)は、最重要市場のアメリカでの一段の成長に向け強い意欲を示した。マツダは3月17日、2018年以来5年ぶりとなる社長交代人事を発表。現社長の丸本明氏(65歳)は相談役に退く。

毛籠氏は1983年にマツダに入社し、グローバルマーケティング本部長などを歴任。営業のキャリアが長く、2016年1月には日本人として約20年ぶりに北米統括会社の社長兼CEOに就任(詳細は『マツダ、最重要の米国で挑む「ブランド改革」』参照)。のちに就いた会長兼CEOも含めて5年半にわたり販売改革を推進した。現在は広報、渉外などの領域を統括する。生産や技術部門以外の出身の社長就任は10年ぶりとなる。

「ドル箱市場」アメリカ重視が鮮明に

毛籠氏を次期社長に選んだ理由として、丸本社長がまず挙げたのが北米での実績だ。「販売網や販売金融の改革を実行し、現在では最も収益をあげる市場に変革した」(丸本社長)。加えて、「内外のコミュニケーションに長けている」ことも挙げた。不透明、不確定な時代だからこそ重要性が増しているコミュニケーションスキルを高く評価した。

アメリカは、マツダの北米事業の中核をなし、台数と収益性の両面で業績を牽引する。世界販売では国別では最多の約4分の1を占める。また、セダンに比べて利幅の大きいSUV(スポーツ用多目的車)がよく売れる「ドル箱市場」だ。2022年暦年では一部の車種が販売終了になったことも影響し、アメリカの販売台数のうち9割近くをSUVが占めた。

アメリカのカリフォルニア州にあるマツダの新世代店舗
カリフォルニア州にあるマツダの販売店。黒が基調の外装でブランドの上質感を打ち出した「新世代店舗」は全米の店舗数の半分を占める(編集部撮影)

毛籠氏はアメリカ在任中、マツダのブランド価値向上に注力。過度な値引き販売に染まった販売会社との契約を解除し、代わりにマツダブランドに共鳴した新しい販社を迎え入れた。また、販売店を改装して店舗の高級感を打ち出した。値引きではなく、商品の価値を消費者に訴求する販売を販社に訴え、インセンティブ(販売奨励金)の抑制も進めた。

マツダは毛籠氏の社長昇格にあわせて、北米統括会社の社長兼CEOを務めるジェフリー・ガイトン専務執行役員に代表権を付与し、本社のCFO(最高財務責任者)に起用する。北米事業統括は引き続き務める。ガイトン氏の抜擢には、アメリカ市場での成功体験を他の市場にも横展開したい意図が透けて見える。

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