「子どもの弱視見逃し」は"脳の発達に影響"の深刻 3歳児健診での早期発見・治療が必要な理由

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子どもの視力検査
3歳児健診での視覚検査は、1次検査を家庭で行う。しかし、3歳児の自覚的な検査なので不確実なことが懸念点だ(写真:yamasan/PIXTA)
視覚と脳はセットで発達することをご存じだろうか。赤ちゃんの目はほとんど見えていないが、子どもの視力は3歳まで急速に発達し、6歳ごろには1.0となる。しかし、目に適切な刺激が入ってこないと視覚と脳は発達しない。子どもの「弱視の見逃し」は影響が大きいのだ。そこで屈折異常などが原因で生じる弱視を3歳頃までに発見し、早く治療する必要がある。
今年から6月10日が「こどもの目の日」となった。その理由は、日本眼科医会が「6歳で視力1.0」を目安に「子どもの目の健康を大切にしてほしい」と願ってのこと。背景には3歳児健診での弱視の見逃しを防ぎ、社会に弱視への理解を求める意図がある。さらには学校や生活の場でデジタル機器に触れる機会が増えたため、近視発症を防ぐよう警鐘を鳴らしている。「弱視の見逃し」には、どんな事情があるのか。

子どもの弱視を指摘され、泣き崩れた母親

「弱視について、今まで誰も教えてくれませんでした。なぜもっと早く、この子の目が悪いことを見つけてあげられなかったんだろう」

そう言って6歳児Aちゃんの母親は、街中の眼科医院で泣き崩れた。小学校の健康診断(健診)により医療機関の受診を促され、眼科医から弱視を指摘されたからだった。

医師「3歳児健診で目の検査をした時、要再検査と言われませんでしたか?」

母親「3歳児健診? 目の検査なんてありましたっけ?」

医師「最初に、ご家庭で視力検査をしたでしょう?」

母親「そういえば、なぜ3歳でそんな検査をしなきゃいけないのかと思っていました。まだ黒板を見るわけでもないから、さっと済ませればいいかと思って……」

医師「お母さんは右と左、きちんと片方ずつ測っていたつもりでも、お子さんは指の間からこっそり見ていたのでは?」

母親「多分そうです。活発で、動き回る子だから。目を細めたり、首をかしげたりもしませんでしたので……」

責任を感じた母親は「何で見逃してしまったんだろう。私、母親失格です」とうなだれ、ハンカチで何度も涙を拭った。Aちゃんは不安そうに医師と母親の顔を交互に見ながら、母親の手をギュッと握りしめる。

Aちゃんの視力を測ってみると右目は1.0だが左目は0.3だった。左目は強い遠視と強い乱視が入り、「不同視弱視」といって、ほぼ右目だけで見ている状態だった。

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