“暗み”を生みだし、陰翳を愛でるライト:FETISH #13

陰ひとつなく煌々と照らされる空間に、果たして色気はあるのだろうか。かつて、耽美派と謳われた文豪、谷崎潤一郎は随筆『陰翳礼讃』で、光と陰が織りなす陰翳の綾にこそ美しさがあると語ったように、空間に美しさを欲するならなば、求めるべきは“暗み”を生みだし、陰を描くライトだ。
“暗み”を生みだし、陰翳を愛でるライト:FETISH 13
PHOTOGRAPH BY JUNPEI KATO
「TURN BRASS」¥42,000(ambienTec

AMBIENTEC
TURN BRASS

煌々と照らされる部屋の中ではリラックスもままならない。明るさをよしとする照明が多いなかで、試行錯誤を繰り返す人も多いのではないだろうか。

一般的に照明とは何かを明るく照らすものであるが、このTURNはその真逆をいくように温かな“暗み”をつくり出す照明といえる。

LEDライトから自社開発した調光機能は、4段階に設定され、キャンドルのようなほのかな光から読書や食事のシーンに必要な明るさまで、シチュエーションにふさわしい明かりをシェードの天面のタッチセンサーで切り替えられる。

だが、何よりもTURNの魅力は、直線と円で構成された潔いまでのソリッドな佇まいではないだろうか。素材の質感がダイレクトに伝わるフォルムは、金属のかたまりから削り出したパーツで構成。思わず手を触れたくなる、その美しいフォルムがほのかな光を優しく反射させる。

もちろん、機能性も充分に備わっている。例えば、照明につきまとう“コード問題”も、TURNはコードレス仕様だからその心配は無用だ。加えて、多少の水がかかる程度であれば問題のない防水性も備わっているから、キャンドル代わりにバスルームに持ち込んだり、野外での灯りにしたりすることも可能だ。

部屋が明るすぎると感じているならば、照明はこの一台で事足りてしまうのではないだろうか。


シリーズ:WIRED FETISH


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PHOTOGRAPH BY JUNPEI KATO

TEXT BY TAKAFUMI YANO