PHOTOGRAPH BY NASA/ESA/D
米航空宇宙局(NASA)のハッブル宇宙望遠鏡は現在、「ボリソフ彗星(2I/Borisov)」と呼ばれる恒星間彗星を注視している。つまり、別の恒星系から来た彗星のことだ。つい先日、われらが太陽系に忍び込んだところをハッブルが目撃した。この写真が撮られた2019年11月16日、ボリソフ彗星は地球から2億マイル(約3億2,000万km)しか離れていなかった。背景に見えるのはきわめて遠くにある渦巻銀河だが、ハッブルがボリソフ彗星にピントを合わせているため、ぼやけて見えている。この写真では、ボリソフ彗星の尾が右上方向にたなびいているのがわかる。. JEWITT (UCLA)/CC BY 4.0
彗星は祝日に似ている。来たと思ったら、すぐに去っていくからだ。とはいえ、宇宙における彗星の役割は、家族が集う年に一度の祝日より少しややこしい。例えば、彗星は恐竜を絶滅させた可能性がある(われわれには幸運だったが、恐竜にとっては災難だったろう)。また、地球やほかの惑星に水を運ぶ役割を果たしたかもしれない。
彗星についてはわかっていないことが多いが、少なくともその軌道は予測できる。長く冷たい彗星の尾は毎年、時計のような正確さで地球に流星群をもたらす。地球が軌道上を移動して彗星の軌道との交差点にさしかかると、彗星の尾が残した米粒大の塵や氷のかけらが地球の大気中で燃え尽き、流れ星のように見えるのだ。
そしてそれは、彗星の素晴らしさを表す現象のひとつにすぎない。今回の宇宙への旅では、彗星に注目してみた。こちらからも軌道も周回して、ほかの天体も見てみよう。
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2023年8月に日本人が発見した通称「西村彗星」が、太陽に最接近する9月中旬にかけて日本から観測しやすくなる。うまくいけば、日本からは明け方や夕方の空に彗星の姿を観察できそうだ。
TEXT BY SHANNON STIRONE
TRANSLATION BY CHISEI UMEDA/GALILEO