ドローン「DJI Air 2S」は、高解像度なカメラとAIによる自動撮影が素晴らしい:製品レヴュー

DJIが新型ドローン「DJI Air 2S」を発売した。特筆すべき進化はカメラで、1インチのCMOSセンサーによって5.4K映像を撮影したり、飛行経路に沿って自動で撮影したりできるようになった。これは現時点で最高のドローンのひとつと言っていい──。『WIRED』US版によるレヴュー。
ドローン「DJI Air 2S」は、高解像度なカメラとAIによる自動撮影が素晴らしい:製品レヴュー
PHOTOGRAPH BY DJI

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DJIが新しいドローン「DJI Air 2S」を発売した。これは過去に個人的に飛ばしたなかでも最高のドローンのひとつである。

価格は999ドル(日本では11万9,900円)と高価だが、動きが速くて機敏なうえ、新たに搭載された高解像度の1インチCMOSセンサーで解像度が最大5.4Kの動画を撮影できる。また、人工知能(AI)を用いた飛行機能のおかげで、ボタンを押すだけで完璧な撮影もできる、

DJI Air 2Sの見た目は、2020年に発売された「Mavic Air 2」(日本では10万5,600円)とほぼ同じだ。バッテリーも同じものが使われているので、Air 2Sとの価格差は小さい。

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だが、両者はまったく同じというわけではない。DJI Air 2Sには大いに歓迎すべき変更点がいくつかあるのだ。

まず、本体上部に追加された障害物検知カメラのおかげで、衝突回避システムが改善された。高速飛行中のドローンは前方に傾くので、フロントセンサーの効果がやや低下する。このため上部にカメラがあるのは非常に効果的だ。実際に何度も試してみたが、Air 2Sをノーマルモードやシネマティックモードで前後左右に飛ばしても、何かに衝突することはなかった。

本体の重量については、前モデルより重くなっている。Mavic Air 2は570gだったが、Air 2Sは595gだ。これは改善ではないように思えるかもしれないが、風が強い状態ではAir 2Sのほうがパフォーマンスがよかったので、重さが奏功した可能性が高い。

PHOTOGRAPH BY DJI

優れた撮影性能と操縦支援

ひときわ大きな違いは、新しい1インチのCMOSカメラセンサーにある。センサーのサイズはMavic Air 2の2倍だ。また、画素数も1,200万画素から2,000万画素に増えている。RAW画像をフォトエディターで並べて比べれば、ディテールやシャープさ、鮮明度が向上していることがはっきりわかる。

この新しいセンサーのおかげで、解像度が5.4Kの動画を30フレーム/秒で撮影できるようになった。高画質な動画を撮れるので、映像をクロップしたい場合に適している。ただし、ほとんどの場合は60フレーム/秒の4K動画でも十分に映像は滑らかだ。

1インチCMOSセンサーというスペックだけを見ると、さらに高価な「Mavic 2 Pro」(日本では19万7,560円)に匹敵する性能を備えている。ただし、Mavic 2 Proでは絞りが最大F11なので、明るい日中に撮影するときには有利だ。それでもサイズと価格を考えれば、Air 2Sのセンサーに太刀打ちできるドローンはないだろう。

この点だけでもAir 2Sに買い換える価値は十分にあるが、強化された点はまだある。例えば、「高度操縦支援システム(APAS)」がヴァージョン4.0となり、より広い視野で障害物を検知できるようになった。このため周囲の状況を気にかけることなく自動飛行機能を多用できる。とはいえ、個人的には古いタイプの人間であるがゆえに、厳しい条件下では自動操縦機能に全幅の信頼を置く気にはなれなかった。

Air 2Sは、最近発売されたドローン「DJI FPV」に搭載されているDJIの映像伝送技術「O3」(OcuSync 3.0)も受け継いでいる。FPVをレヴューする機会はまだ得られていないが、Air 2Sを飛ばした限りでは、最大動画伝送距離が12kmというDIJの主張に間違いはなさそうである。

バッテリー駆動時間については31分の連続飛行が可能とされており、実際にテストした結果もほぼ同じだった。試しに風の強い状況で飛ばしたところ、最大飛行時間は30分だった。

なお、Air 2Sは高価なMavic 2 Proとは異なり、側面にセンサーが搭載されていない。それでも衝突回避性能は、過去に発売された同じくらいのサイズと価格帯のドローンと比べて大幅に進歩している。ただし、過去のモデルと同じようにスポーツモードでは障害物検知機能がオフになるので、自己責任で試してほしい。

驚くべき自動撮影機能

ここまで取り上げてきた改良点はすべて歓迎すべきものだが、Air 2Sで特に気に入ったのは「マスターショット」と呼ばれる機能だ。専用アプリでマスターショットのメニューを開いて被写体を選ぶと、さまざまな場面を撮影するための飛行経路が自動的に計算される。

その状態でドローンを飛ばせばすべてが自動で撮影され、アプリがそれらをひとつの映像にまとめてくれる。ユーザーは何もしなくても、大量のBロール(メイン映像を補足する動画)をあっけないほど簡単に作成できるわけだ。

PHOTOGRAPH BY DJI

ただし、いつもうまくいくとは限らない。例えば、今回のテストの際に家の前に停めていた自分のクルマをマスターショットで撮影しようとしたときのことだ。アプリがクルマを認識し、飛行経路を設定したところまではよかったが、大きな木がじゃまになって一部の経路を飛ぶことができず、予定していたショットのいくつかが撮影されなかった。このため少し高いところに登ってマスターショットで可能な限り撮影してから、慎重にドローンを飛ばして残りを手動で撮らなければならなかった。

幸いなことに、マスターショットはほかに転用できない機能ではない。このモードで撮影した映像は、すべてアプリで編集されたまとめ映像とは別に再利用できる。このため編集結果が気に入らなかった場合は、RAW映像を取り出して自分の好きなソフトウェアで改めて編集すればいい。

Air 2Sは、ドローン本体とリモコン、それにバッテリー1個がセットになっており、価格は999ドル(日本では11万9,900円)だ。バッテリー2個とバッテリー充電ハブのほか、(日差しが強い日に役立つ)NDフィルター、ショルダーバッグが追加された「DJI Air 2S Worry-Free Fly More コンボ」も1,299ドル(同16万5,000円)で販売されている。


◎「WIRED」な点
新しい2000万画素の1インチCMOSセンサー。5.4Kで30フレーム/秒での動画撮影。Bロールを自動撮影してくれる便利なモード。改良された衝突回避システム。31分の最大飛行時間。18.5kmの最大飛行距離。