「Going Medieval」はコロニー運営ゲームの入門編として楽しめる:ゲームレヴュー

いわゆる“コロニー運営系”ゲームの新顔として2021年6月1日にリリースされた「Going Medieval」。14世紀の英国を舞台に自力で新たな文明を築くこのシミュレーションゲームは、直感的なプレイによって気分転換にぴったりの気軽に始められるゲームとして今後も進化が期待できる──。『WIRED』US版によるレヴュー。
「Going Medieval」はコロニー運営ゲームの入門編として楽しめる:ゲームレヴュー
IMAGE BY FOXY VOXEL

いわゆる“コロニー運営系”のゲームについて語る際に、ゲーム好きの人々がある種の含みを込めて使う言葉がある。英語で硬い歯ごたえを表現する「crunchy(クランチー)」という言葉だ。これは地面に積もった柔らかい落ち葉のような感触ではなく、岩をかみ砕くような手ごわさを表現している。

ひとつの社会を構築して組織としてうまくまとめ、自治へと導く作業は、どんなときも大きなやりがいを感じさせてくるだろう。やがてプレイヤーたちは、原始的な手段で何もかも最初からつくり出さなければならないゲームの世界に、我を忘れてのめり込んでいく。辺境の惑星にコロニーを形成する「RimWorld」も、そうした類のゲームだ。

早期アクセス版として2021年6月1日にリリースされた「Going Medieval」は、こうしたコロニー運営系のゲームが好きかもしれないと思いながらも、その底なしの深みにはまることを恐れていた人たちにおすすめしたいゲームである。独立系ゲーム会社のFoxy Voxelの初作品である「Going Medieval」は、PCゲーム用プラットフォームの「Steam」と「Epic Games Store」で販売されている。

自力で文明を築く喜び

ゲームの舞台は、疫病によって人口の95%を失った14世紀の英国だ。生き残った者たちは、何もないところから自力で新たな文明を築かなければならない。

プレイヤーはそれぞれ異なるステータスをもち、木材、布、短弓といった最低限の物資を与えられた3人の開拓者をコロニーのなかで動かしていく。ゲームで課せられる使命は、3人を生き延びさせることだ。コロニーを繁栄に導ければもっといい。

最初に与えられるものは干し草の寝床とわらぶき屋根の住まいだが、やがて木材や鉄をもっと集めて小屋をつくり、城を建てる。原始的な狩猟採集社会だったコロニーを農村へ、さらには立派な小都市へと拡大していくのだ。

当然ながら、それには粘り強さと計画性が必要になる。プレイヤーは開拓者たちに仕事を割り当て、人々が睡眠と休息を十分にとりながら健康で幸せな毎日を過ごせるようにスケジュールを組む。コロニー内の生産体制が整えば、Going Medievalは次々と喜びを生みだしてくれるはずだ。

例えば、開拓者のひとりが育てたキャベツを、もうひとりが貯蔵庫に運ぶ。3人目がそのキャベツで温かい食事をつくり、満腹になったもうひとりが木を切りに出かける、といった具合だ。プレイヤーは開拓者たちの順調な暮らしぶりをゆったりと眺めながら、数分おきにスイッチをいくつか切り換えればいい。

こうしてコロニーの人口は徐々に増え、時間の経過とともに服を仕立てたり、食糧を保存したり、剣をつくったりといった新しい作業が可能になる。そして、そのたびに新たな資源や作業工程が必要になっていく。

ところが、順調な流れを断ち切るように大小さまざまな不幸がコロニーを襲う。ゲームを始めてまもなく、ベリーの収穫を怠って村人たちの食糧を十分に確保できないまま、敵方から初めての襲撃を受けたことがあった。侵略者が目前に迫っているというのに、コロニーの守りを固めるための木材を揃えられなかったこともある。

ろくに眠らず食糧もないなかで、木製の粗末な防御壁を築き、陣地を守ろうと奔走する村人たちを見るのはつらかった。村いちばんの知性派の男が敵との争いであっという間に殺されてしまうと、新たな技術を知るためのコロニー全体の調査力はすっかり衰えてしまった。

直感的なプレイ体験

Going Medievalのプレイ中にちょっとした不安を覚える人もいるかもしれないが、それは決して不快な感情ではない。挫折を感じるのはほんの一瞬のことだ。すぐに戦略を練り直せるし、楽観的な気分にもなれるだろう。どうしようもないトラブルに見えても、そこには明確な解決策が用意されている。

ゲームは先へ進むにつれ次々に新たな展開を見せ、破滅とは逆の方向へと向かう。プレイヤーの心理を操るミクロ視点と、コロニー全体をひとつの社会として管理するマクロ視点の組み合わせが、瞬時に人を夢中にさせるのだ。

Going Medievalには、ささやかながら素晴らしい長所がある。直感的にプレイできるさまざまなメニューが用意されている点だ。いくつもタブを切り替えて特定のステータスやリソースを探し回る必要もなければ、操作面での欠陥から没入感を妨げられることもない。

ゲームの序盤で重要なメニューや手順を見逃したとしても痛い目にあうことはなく、徐々に新たな展開を理解できるようになっている。ただひとつ残念な点は、Going Medievalが上から全体を見下ろして建物を築く形式を採用していることだ。上空から貯蔵庫に注がれた視線を切り替え、その屋根の下にあるはずの物資を探そうとしても、その操作は意外に難しい。

さらなる進化に期待

Going Medievalはよくあるゲームとは少し違う。RimWorldのようなほかの同じようなゲームと比べて、ややのんびりしすぎているのだ。しかし、今後はさらに開発者たちのアイデアが追加され、「もっと歯ごたえのある」構成になる予定だ。ほかのコロニーとの外交が始まったり、村が雪に覆われたり、家畜を育て始めたりするのだという。

スタートしたばかりのいまの段階で見る限り、Going Medievalは気分転換にぴったりの気軽に始められるシミュレーションゲームだ。Steamの人気チャートで上位にランクインしているのも当然と言えるだろう。

※『WIRED』によるゲームのレヴュー記事はこちら


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TEXT BY CECILIA D’ANASTASIO

TRANSLATION BY MITSUKO SAEKI