Sony Park展『ONE DAY, 2050 / Sci-Fi Prototyping』開催概要

期間:2021年8月31日(火)〜2020年9月13日(月) 11:00~19:00
場所:Ginza Sony Park PARK B3 / 地下3階
料金:入場無料(事前予約不要・人数制限あり)
https://www.ginzasonypark.jp/
※2021年6月8日の初回発表時は、会期を8月30日(月)からとしていましたが、都合により開始日が8月31日(火)に変更となりました。
※同時に開催する他イベントでは事前予約制のものもあります。Sony Park展の特設サイトでご確認ください。
※緊急事態宣言の発出状況等、やむを得ず展示内容や開催日時などを変更する場合があります。予めご了承ください。

▼ONE DAY, 2050 / Sci-Fi Prototyping Web
内容:
ソニーのデザイナーとSF作家がそれぞれ創出した「デザインプロトタイピング」と「SF短編小説」、さらに「SF短編小説」のトレーラームービーをご覧いただけます。
https://www.sony.com/ja/SonyInfo/design/oneday2050/
https://www.sony.com/en/SonyInfo/design/oneday2050/

来る8月31日から、Ginza Sony Parkにて『ONE DAY, 2050 / Sci-Fi Prototyping』と題されたエキシビションが、約2週間にわたって開催される。

そこで展示されるのは、発足から60周年を迎えたソニーのインハウスデザイン組織クリエイティブセンターの若手デザイナー16名によるデザインプロトタイピングと、4名のSF作家による短編小説(とトレーラームーヴィー)だ。

これらの作品はみな、クリエイティブセンターとWIRED Sci-Fiプロトタイピング研究所によって約半年間ほど繰り広げられたSFプロトタイピングが「収束」し、「表徴」されたものにほかならない。

その発端となった今回のSFプロトタイピングでは、「2050年」「東京」「恋愛」を通奏低音とし、そのうえで、「WELL-BEING」「HABITAT」「SENSE」「LIFE」という4つの探索領域が設定された。

各探索領域には、それぞれ4名ずつの若手デザイナーが配され、加えて、藤井太洋(「LIFE」担当)、麦原遼(「HABITAT」担当)、津久井五月(「SENSE」担当)、小野美由紀(「WELL-BEING」担当)という4名のSF作家がアサインされた。

そのプロセスを、ソニーグループ株式会社の石井大輔(クリエイティブセンター シニアクリエイティブディレクター)と青島千尋(クリエイティブセンター デザイナー)、そして、今回「リードSF作家」として参画した藤井太洋は、どのように見ていたのだろうか……。

「さらに先」を見通すために

──まずは今回、ソニー クリエイティブセンターが「SFプロトタイピング」を用いることになった背景について教えてください。

石井 クリエイティブセンターでは、年に一度デザインリサーチをおこない、その成果を『DESIGN VISION』としてレポートにまとめているのですが、2020年の活動のなかで、「Future Proofing」というキーワードが浮かび上がりました。われわれは普段から、ルーティンワークに留まらず、常に「一歩先」を見据えた開発体制をとっていますが、そういった取り組みが「Future Proofing」として機能していることを再認識しました。

そしてこの2020年のリサーチのなかで、「Future Proofing」の「さらに先」を見通す手法として「SFプロトタイピング」という技法があることを発見し、これからのわれわれにとって、有効なトライアルではないかという議論になりました。

ソニーはいま、事業範囲がものすごく広くなり、ポートフォリオ自体が大きく変わりつつあります。それはつまり、われわれクリエイティブセンターの役割も、ものすごい勢いで変わっていることを意味します。自分がソニーに入社したのはちょうど30年前ですが、入社当時は、まさか自分がロボット(AIBO)のデザインをしたり、EV(VISION-S Prototype)やドローン(Airpeak)のデザインディレクションをするなんて思いもしませんでした。今後は、例えばファイナンシャルのようなサーヴィスビジネスの領域もデザインの視野に入れる必要が出ています。

石井大輔|DAISUKE ISHII
1992年ソニー入社。ハンディカム、ウォークマン® 、AIBOなどのデザインを担当。1999~2002、2010~2015年に2度の英国赴任。現在は、R&D/ROBOTICS/MOBILITYなどの新規領域、及びコーポレートにおけるCD/UI/IDを含む統合的なクリエイティブディレクションを担当。2016/2021 iF Design Award 審査員(ドイツ)。2019 DFA審査員(香港)。

石井 そうした意味でも、ここで一度、デザイナーが「30年後のヴィジョン」を描いてみる価値はあるのではないかと。若手の育成も兼ねて、「さらに先」を見据えるSFプロトタイピングを活用して、普段とは少し違うイメージトレーニングをしながら未来のサーヴィスやプロダクトを夢想してみる意味はあるだろうということになりました。

普段はご一緒することがない小説家の方々の力を借りることで、われわれでは想像できない領域に一歩踏み出すチャレンジができるのでないかという期待がありましたし、あくまでフィクションなので、実際にソニーが進む道筋とは必ずしも一致しなくても構わないのではないかと思い、むしろ想定を超えたストーリーからデザインクリエイションの力を引き出すことに主眼をおきました。

──30年後の未来、というお話が出ましたが、社内ではどういうアナウンスをして、どういう過程を経て「16名の若手デザイナー」の参加が決まったのでしょうか?

石井 普段われわれがプロジェクトをおこなう際は大抵アサイン型なのですが、今回は立候補型にしました。参加したい人を募り、そのなかから今回の16名に参加してもらいました。手を挙げてくれた人はたくさんいたのですが、30年後のソニーを担ってほしいということで、今回は若手に絞り、かつ、いろいろな専門領域のバランスを考えて選考しました。

──「いろいろな専門領域」というと、具体的には……?

石井 最近は専門性の融解、融合や新規領域も生まれていますが、代表的なカテゴリーとしては、コミュニケーションデザイン、UI・UXデザイン、インダストリアルデザインの3つです。

ただ、例えば青島は本来コミュニケーションデザイナーですが、最近は空間デザインも手がけていますし、ほかにもUIデザイナーがマーケティングロゴをデザインしたり、インダストリアルデザイナーがコミュニケーションアセットの制作をしたり、UX提案を行なうなどのケースが日常化してきて、領域が液状化しているのが実状です。そういった意味でも、さらなるイメージトレーニングがますます必要なタイミングであると考えました。

「アイデアを箇条書きにする」とは決定的に異なる体験

──今回は「WELL-BEING」「HABITAT」「SENSE」「LIFE」という探索領域にチーム分けされ、各チームとも4名ずつでしたが、そのメンバーで作業をしたり同じプロジェクトにアサインされたりしたことは、過去にあったのでしょうか?  

青島 わたしに限っていうと、全員「はじめまして」の状態でした。わたしは「WELL-BEING」チームでしたが、メンバーにはパンデミックの影響でテレワークが推進されたあとに新卒で入社した人もいましたので。一度も顔を合わせたことがないけれど、オンラインでずっとワークショップを重ねているというちょっと不思議な状態でしたね。

青島千尋|CHIHIRO AOSHIMA
2016年ソニー入社。旧ソニーモバイルコミュニケーションズ(株)、ソニーネットワークコミュニケーションズ(株)のブランディング等に関わるコミュニケーションデザインを主に担当。2019年にはミラノデザインウィークに出展された体験型展示「Affinity in Autonomy <ロボティクスとの共生>」のプロジェクトメンバーの一員として、ロボティクス関連のコミュニケーションデザインも手掛けた。

──青島さんご自身は、どのような興味やモチヴェイションを抱いてSFプロトタイピングに臨まれたのでしょうか?

青島 冒険的でおもしろいなと思ったのが第一印象です。SFって聞くと、個人的にはディストピアを想像しがちだったので、少しでも幸福感を感じる内容にしたいという思いはありました。パンデミックが長引いている現状を考えると、暗い世界観の展示を見せられてもお客さんは嬉しくないでしょうし、自分自身、「2050年になったらこんな世界で生きているのも悪くないな」と思えることを目標にアイデアを出していきたいという思いで臨みました。

──石井さんのお話にもあったように、普段から未来をイメージしてデザイン業務にあたるということはあったと思うのですが、今回、フィクションという要素が入ることによって、普段と違った点はありましたか?

青島 まず、背景に恋愛というテーマが置かれたことがおもしろいなと思いました。普段仕事をしているなかで、個人個人の恋愛観にはあまりタッチできないというか、言いづらいところもあると思うのですが、今回はそこら辺のところをざっくばらんに話し合わないとお話にならなかったので、気兼ねなく自分の価値観を出し合えたところは新鮮で「このプロジェクトならでは」だなと思いました。

もうひとつ、今回のプログラムでは「自分で400字程度の小説を書く」プロセスが組み込まれていましたが、実際にやる前は、自分で書いた文章を人前で発表するのは難しくて抵抗がありました。でも、いざストーリーを考え始めると、自分の感情が勝手に登場人物たちに乗っかってくる手応えを感じて楽しくなりました。普段、箇条書きでアイデアを出している状態とは異なり、アイデアやストーリーが思いがけず発展していったり、「人の感情」というものを他人の身になって捉えることで人に近づいていけた点にやりがいがありました。

SFプロトタイピングには危険も備わっている!?

──藤井さんご自身は、SFの想像力(フィクション性)とビジネス(実装力)が交差する「SFプロトタイピング」について、率直にどういう印象をもたれているのでしょうか?

藤井 ものすごく優れたワークショップの仕組みだと思います。SFプロトタイピングが優れているのは、SF小説やSF映画が得意とする「未来を予測する」部分というより、「ナラティヴの力を使う体験ができる」点にあると思います。いま青島さんがおっしゃったように、フィクションを人に語ってみせることを通じて、アイデアの箇条書きやマトリックスやシミュレーションからは出てこない視座や発想が湧き出てくる体験を、おそらくみなさんが多かれ少なかれ味わったことと思います。

藤井太洋|TAIYO FUJII
1971年奄美大島生まれ。2012年、ソフトウェア会社勤務時代に執筆した長編『Gene Mapper』を電子書籍で個人出版し、Kindle本「小説・文芸部門」で最多販売数を獲得。著書に『オービタル・クラウド』(日本SF大賞と星雲賞日本長編部門を受賞)、『ハロー・ワールド』(吉川英治文学新人賞受賞)など。

藤井 SFというのは、未来を予測して、それが目の前に来たら社会や個人はどう判断/行動するか……ということを驚きとともに読者に与え、仮にそれが大惨事だとしたら、それに備えてどうすればいいのか、というシミュレーションを可能にする物語のフォーマットです。

フィクションというだけならほかにも魅力的なジャンルがたくさんありますが、ビジネス文脈との接続を考えると、ミステリーやロマンスや歴史小説などはちょっと難しいですよね(笑)。その点、SFはビジネスと親和性が高いと思います。

ただ、ビジネスとの親和性が高い反面、危険も備わっています。SF的、というか発展したテクノロジーを想定してアイデアを積み上げていくと、全体主義的な発想に陥ってしまうことも起こりえます。例えば、思いついたアイデアをちょっと別の角度から見つめ直すと、管理する側にとって楽なシステムになっていたりだとか。

気を許すと、テクノロジーがもつダークサイドがすぐに立ち上がり、それに絡め取られ、ナラティヴのなかに忍び込んでしまっていることに気づかない……といったことが起こりうるのがSFです。

そこに気づくところまで踏み込めるかどうかは運営側の腕の見せどころでもあり、そこさえケアできれば、「自分がいかに無意識のうちにテクノロジーのダークサイドを内包したアイデアを妄想していたか」を実感できる、とてもいい機会になると思います。

そこを通過することで、「自分たちの今後のビジネスが、どのような社会的なインパクトを持っているのか」「正負や光と影だけではなく、その影響の外側にいる人たちからどう見えているのか」といったところまで考えが及んでいくのが、SFプロトタイピングの魅力だと考えます。

──今回、「ソニー」の「クリエイティブセンター」に向けたSFプロトタイピングに参加されて、どのような印象をもたれましたか?

藤井 現代の大企業がどのような形でビジネスをつくっているのか、そのなかでもクリエイティブな組織に属する方々がどういう意識をもっていらっしゃるのか……。そこにとても興味があったのですが、参加されたメンバーの幅広さやアイデアや話題の豊富さに触れて、クリエイティブセンターというひとつの組織にもかかわらず、これだけの多様性をもてているのはすばらしいことだと感じました。

ひとつ付け加えるなら、総務や経理や人事といったバックオフィスの方々、あとは会社のファイナンスを担当されている方々のクリエイティヴィティも見てみたい気はしました。人事や経理や社内システムの構築等々も、おそらく今後はクリエイティヴィティが求められる、あるいはクリエイティヴィティを生かせる分野に変わっていくはずだと思っています。

石井 クリエイティヴの領域は、まだまだ拡張していく可能性を孕んでいるということですね。「いつかそうした領域に足を踏み入れることになるのかもしれない」ということを、デザイナーは意識のなかに入れておく必要がありそうです。

自分が裏をかかれたように発想せよ!?

──青島さんの「WELL-BEING」チームには、小野美由紀さんが加わっていらっしゃいました。小野さんの発言で印象に残っていることはありますか?

青島 メンバーが書いた小説のなかに話のオチが予想外でうまく描かれている一篇があったのですが、その作品に対し、「読んでいる人が想像できない結末に転換し、自分が裏をかかれたような発想でストーリーを膨らませるとよりおもしろい小説になりますね」とおっしゃったのを聞いて、なるほど、想像の範囲内に止めるのではなく視点を変えてレールを逸らすストーリーのつくり方があるのか、と勉強になりました。

──ワークショップと小野さんのプロットを経てデザインプロトタイピングに至るまでに、どのような過程を踏んだのか教えていただけますか?

青島 ワークショップでは、主にわたしたちソニーのメンバーが意見やアイデアを出し、それに対して小野さんから思いも寄らない意見や価値観をいただいたりして、最終的にメンバー全員が同じ方向を向けるように調整していきました。その後、完成した一万字の小説を拝読すると、わたしたちが考えていたアイデアに対してさらに新しい物語が詰め込まれていてとても面白かったので、結果として、小説の内容を忠実に反映させたデザインプロトタイピングになったと思います。

小野さんが書いた「レジリエンス」という小説に登場したアイデアのなかでいちばん重要な部分は、本物の人間そっくりのカウンセリングAIである「オフィーリア」が、主人公に適した姿形に目の前で変化し、主人公とあらゆる対話の仕方をさせるカウンセリングプログラムを受けられるところだと思いました。なのでその部分を切り出し、主人公の体内の情報をセンシングするウェアラブルデヴァイスと組み合わせてデザインプロトタイピングにしていきました。

──そのアイデアに至るまでには、どのような議論が?

青島 ワークショップの過程では、とにかく覚え切れないほどのアイデアが出てきたのですが、ウェアラブルデヴァイスにしてもオフィーリアの表現にしても、これから30年後を想像しときに「この機能なら実現するかも」という視点でアイデアを膨らませていきました。

あまりにもフィクションすぎると「夢物語」になってしまいかねません。見に来てくださった方々が「じぶんごと化」できないとおもしろさが半減してしまうと思ったので、「将来、自分がこのサーヴィスを実際に利用したい」と思え、さらには、わたしたちのデザインプロトタイピングに関連する一部の研究は既に世界でも進んでいる……といった下調べをしながらアイデアをかたちにしていくことで、それなりに説得力があるデザインプロトタイピングに仕上がったのではないかと思います。

石井 自分からは、オフィーリアが登場するトリガーが当初はスマホアプリの想定だったので、そこは進化型のウェラブルデバイスからの起動をアドヴァイスさせて頂きました。『WIRED』日本版のSFプロトタイピング特集号(VOL.37)に抗体タトゥーのお話があったので、30年後を想定するとちょうどイメージにあうなと思いました。

藤井 それは、わたしが書いた『滝を流れゆく」に出てきた抗体タトゥーですね。

石井 そうでした! そこで描かれていた様子が一番自然なインターフェイスじゃないのという話をして、アイデアを拝借させていただきました(笑)。

青島 着脱が必要なデヴァイスは、必ず置き忘れたり面倒になって使うのを止めることが多いので、存在感がなく身体に組み込まれたデヴァイスが理想的でSFらしくていいなと思い、使わせていただきました!

シンプルながらも深淵な展示タイトル

──今回の展示タイトルは「ONE DAY, 2050 / Sci-Fi Prototyping」となりました。このワードに至るまでの経緯、このワードに込められた意図/想いを教えてください。

青島 今回の展示に合わせて全体のコミュニケーションデザインを担当するチームが立てられたのですが、そのメンバーでアイデアを出し合いました。最終的に、「Science non Fiction」とか、ScienceとFictionの間に何かしらの言葉をつけるというアイデアと、もうひとつは今回の「ONE DAY」案に絞られました。

──決め手となったのは?

青島「ONE DAY」は、「ある日」や「いつか」という意味のほかに、「いつか必ず」という強い意思が込められた言葉でもあります。「ソニーが考える2050年」「いつか必ず来る4つの物語」……。そうした詩的な要素をタイトルに含ませたくて、いまのタイトルに行き着きました。

もうひとつ、ONE DAYのあとに「カンマ」をつけると「新しい物語が始まるという奥深いニュアンスが感じられるよ」というアドヴァイスをイギリスのデザインチームのメンバーに教えてもらい、ニュアンス的にも今回の展示に合うなと判断しました。

石井 今回、4つの探索領域にもそれぞれ「, 2050」を入れて、つながりが見えてくることを意識しました。最終的に探索領域の名称は、藤井さん、麦原さん、津久井さん、小野さんの作品をふまえ、さらにそこからソニーの何かしらの活動領域を感じさせるべく、「LIFE, 2050」、「HABITAT, 2050」、「SENSE, 2050」、「WELL-BEING, 2050」にシンプリファイしました。

SFプロトタイピングには「人の目線」が差し込まれている

──今回のワークショップ中に出てきた議論や、デザインプロトタイピングとして結実したアイデアを見て、「SFプロトタイピング」だからこそ出てきたものだと感じた部分を挙げるとすると?

石井 ぼくらが普段おこなっているアウトプットは、個々のサーヴィスやプロダクトというかたちで完結しがちで、ホリスティックな視点が欠如しやすい。つまり、人を中心とした時間軸のある包括的なストーリーとしてつながりにくい傾向があります。その点、今回のワークショップや藤井さんたちのSF小説をふまえて出てきたデザインプロトタイピング案には「人の目線」がものすごく入っていて、そこが決定的に違うと感じました。

その点をふまえ、展示に関しては、いまのソニーのビジネス領域や、いまの人々のライフスタイル、いまの地球の姿と何かしら地続き──それはAIや環境など多少問題提起の意味も含めて──であることを、メンバーには意識してもらいました。まったく脈絡のないところより、いまソニーがおこなっているビジネスやエンタテインメント、人々のマインドセットや、地球の環境が変化したその先の世界では、こういうものが見えてくる、見えてしまってるかもしれないというふうに感じられないと、展示としてのメッセージが弱くなってしまうとも考えました。

なおかつ、全体のバランスを見た時に、モノばっかりではおもしろくないし、インターフェイスがないとおもしろくない、そこにストーリー性やヴィジュアルインパクトがないとおもしろくない、といったバランスにも気を配りながらディレクションを行ないました。

正直、30年後という大きなお題のもと、まだ消化不足のところも多々ありますが、「人の目線」というものが、一連のワークショップを通じてすごくリアルに入ってきたことが新しい視点だと感じましたし、われわれのデザインプロトタイピングにおいても、その部分はしっかり反映することができたと思います。

あとは何より、恋愛というファクターがあったことで、普段われわれが意識しないアプローチに歩み寄れたことが新鮮でした。その点でもやはり、「人の目線」という要素がすごく大きく、「人に近づく」というソニーの目指す方向性に適した取り組みだったのではないかと思います。

──逆に藤井さんには、SF作家という立場から、ソニーらしさを感じたデザインやアイデアを感じた部分があれば教えてください。

藤井 幅の広さが、いまのソニーならではなんだろうなと思いました。オーディオ&ヴィジュアルだけではもちろんないし、エンタテインメントの分野だけでもないし、スマートフォンのようなひとつのプロダクトに依存しているわけでもない、社会のなかにさまざまな領域で大企業ならではの「幅の広さ」を見せていただいたなと感じています。ぼく自身、とても刺激を受けた半年間でした。

石井 そういえば、藤井さんの作品に登場した<アンクル>というアヴァターロボットのデザインやサイズ等々、すごく気になっていたんです。

青島 わたしも気になっていました!

藤井 では次の機会には、まずその話から始めましょう! とりあえず、こんなイメージです。

石井&青島 おお!

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