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比較的最近まで、「質の高いオリジナルコンテンツ」と「ストリーミング(動画配信)」という言葉を同じ文章のなかで使おうなどと考える人はほとんどいなかった。配信限定の番組がエミー賞のドラマ作品賞を初めて受賞したのは、ようやく2017年になってからのことである(「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」)。
ところが、いまではNetflixやHulu、Amazonのみならず、HBO MaxやApple TV+といった新規参入組にいたるまで、ほぼすべての配信サーヴィスに素晴らしいコンテンツが揃っている。そのあまりの数に圧倒されるような状況で、実際のところわたしたちは尻込みしているほどだ。
そんなわけで、コンテンツが多すぎて何を観たらいいかわからないという方のために、まず観るべきおすすめ作品を紹介しよう。『WIRED』US版が推薦する2021年のドラマは、下記の7作品となる。
「THE GREAT 〜エカチェリーナの時々真実の物語〜」
ロシアの女帝・エカチェリーナ2世とピョートル3世との結婚生活がどのように終焉を迎えたのかは、世間のよく知るところだろう。しかし、「THE GREAT 〜エカチェリーナの時々真実の物語〜」は、史実に沿うことをさほど重視していない。そして本作が見事なドラマに仕上がっている理由の一部が、そこにある。
ピョートル3世を演じるのはニコラス・ホルトだ。第1シーズンでホルトは、衝動的に行動する皇帝を父にもつ、かなり愚かだが危険な面をもつ軽薄な若者を見事に演じていた。
エカチェリーナ3世役はエル・ファニングである。こちらも、そんな夫にときに呆れつつ、自分が望む権力に少しでも近づくためならどんな機会でも利用しようとする、自信に満ちた若き女性を好演している。
製作総指揮のトニー・マクナマラは、このふたりの人物像やふたりを突き動かす動機(あるいはその浅はかさ)をしっかりと描いたうえで、ほかの登場人物にも活躍する余地を与えている。そんな彼らもまた、エカチェリーナ2世の画策や陰謀に絡めとられていくことになる。
「Hacks」(日本未公開)
ジーン・スマートは、どんな番組に出演しても輝きを見せてきた。これまでの彼女は、群像劇のなかにあって突出した演者として注目されがちだった。だが「Hacks」では、デボラ・ヴァンス役として(まさに文字通りの意味で)舞台の中央に立っている。
ヴァンスはラスヴェガスの往年の名女優だが、興行主からはショーの内容にキレがないと言われている。その「キレ」をもたらすためにやって来たのが、シニカルな20代の女性だった(演じるのは「サタデー・ナイト・ライブ」で有名なラレイン・ニューマンの娘であるハンナ・エインバインダー)。この女性は自分のツイートが炎上し、ハリウッドから追放されたのである。
当初はドライな「メンターと教え子」だったふたりの関係性が、自然なパートナーに発展していく様子が中心に描かれている。しかし、常に主導権を握っているのは間違いなくヴァンスであり、スマート自身も最高の演技を見せている。現在70歳の彼女はヴァンス役で4回目のエミー賞を受賞し、主演女優としては初の栄冠となった。
「マーダーズ・イン・ビルディング」
いまの欧米社会では、「実録犯罪ポッドキャスト」がちょっとした流行になっている。それに基づいた本格的なドラマシリーズができるのは時間の問題だったといえるだろう。
ニューヨーク市のアパートで起きた恐ろしい殺人事件を解決しようとする素人探偵3人組という筋書きだけを見ると、「マーダーズ・イン・ビルディング」はありがちなドラマに感じられるかもしれない。だが、このドラマではスティーヴ・マーティンとマーティン・ショート、セレーナ・ゴメスが見事な(そしてとても自然な)相乗効果を起こしており、作品としていっそう高い次元へと本作を昇華させている。セカンドシーズンの放送もすでに決定している。
「Reservation Dogs」(日本未公開)
脚本家、監督、プロデューサー、演者──タイカ・ワイティティはあらゆる役割をこなしている。いったいどうやって睡眠時間を確保しているのだろうか? ましてや、「Reservation Dogs」のような新しく、そしてかなり画期的なドラマを(スターリン・ハルジョと)共同制作する時間など、どこにあったのだろうか?
「Reservation Dogs」は、オクラホマ州の先住民族保留地に住みながら、そこを出ていくことを夢見る先住民の4人の若者(デヴァリー・ジェイコブス、ドゥファラオ・ウーナタイ、レーン・ファクター、ポーリーナ・アレクシス)に焦点を当てている。このドラマの画期的なところは、ほぼすべてのキャストが北米先住民で占められ、脚本家と監督も先住民が務めている点にある。
そして素晴らしいことに、米国の先住民に関する有害な誤解を静かに排除しながら、いまだにかなり過小評価されている人々の本当の声を届けているのだ。
「キング・オブ・メディア」
強大な力をもち策略に満ちたロイ家の姿を描いたジェシー・アームストロング製作のドラマは、シーズン2[編註:日本ではU-NEXTで配信]の時点ですでに最も注目されている作品のひとつだった。ところがシーズン3(日本未公開)が始まるとともに、最も論争を呼んでいるドラマにもなった。シーズン3の序盤は展開が遅いと感じた視聴者もいただろうが、物語が終盤に差し掛かるにつれ、ロイ家のメディア企業を巡る権力闘争はかなり波乱の様相を呈してきている。
「ホワイト・ロータス / 諸事情だらけのリゾートホテル」
神経質な元ヤク中のアーモンド(マーレイ・バートレット)は、超高級リゾートホテル「White Lotus」のマネージャーとして大変な毎日を送っている。そのアーモンドと同じように、ドラマ「ホワイト・ロータス / 諸事情だらけのリゾートホテル」も、どこからともなく現れ、いまでは話題作の仲間入りを果たしたようだ。
醜くわがままで無神経で、機能不全を起こしている特権的な白人社会を余すところなく描いているという点で、ある意味で本作は「キング・オブ・メディア」と同じDNAを共有している。ただし、本作であらわにされる「膨れ上がった睾丸」は、一度見たら脳裏に焼き付いて離れないだろう。
「エンライテンド」を手がけたマイク・ホワイトが製作した本作には才能溢れるキャストが集結しているが、なかでもジェニファー・クーリッジの演技が印象的だ。本作もシーズン2の製作が決定している。
「イエロージャケッツ」
ドラマの紹介記事としては無責任のように聞こえるかもしれないが、「イエロージャケッツ」はできるだけ予備知識のない状態で観たほうがいいだろう。ただ、「Lord of the Flies」と『ミーン・ガールズ』をかけ合わせたような作品と言うことはできる。そして、90年代のクールな楽曲を聴くことができる。
物語は現在と90年代とを行ったり来たりし、常に新鮮味と驚きをもたらしてくれる。本作の画期的かつ興味を引く点は、それが生存をかけたストーリーにもなっているところだ。ただし自然のなかで自らの「掟」を定めるのは、10代の少女たちである。主演はジュリエット・ルイス、クリスティーナ・リッチ、メラニー・リンスキー。
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TEXT BY JENNIFER M. WOOD