アジア発コンテンツの世界戦略から、ストリーミング配信における“環境負荷”の可視化まで:『WIRED』日本版が振り返る2021年(Netflix編)

「イカゲーム」を筆頭にNetflix発のオリジナルコンテンツが世界を席巻した2021年。韓国や日本発コンテンツの世界戦略から、ストリーミング配信における“環境負荷”を可視化して二酸化炭素排出量の削減を目指す取り組みまで、2021年に「WIRED.jp」で最も読まれた記事とともにNetflixの現在地を考える。
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PHOTOGRAPH BY NIKO TAVERNISE/NETFLIX

2021年もNetflixは話題作にこと欠かない年だった。全世界で大ブームとなった「イカゲーム」や、実写ドラマ版の「カウボーイビバップ」、年末にはアダム・マッケイ監督の『ドント・ルック・アップ』や、「エミリー、パリへ行く」シーズン2も配信された。

なかでも注目したいのは、『ドント・ルック・アップ』だ。巨大彗星が地球に衝突する可能性を天文学者が必死に訴えるものの、その「事実」が人々に受け入れられず、「最悪の未来」を回避するためのタイミングを逃し続ける様子は、「気候変動」という巨大で不可知な問題に直面するわたしたちの未来が精緻にシミュレーションされているような気分になってくる。

ちなみに、制作を担当したアダム・マッケイ監督の制作会社Hyperobject Industriesの社名は、哲学者ティモシー・モートンが提唱した人間には巨大すぎて不可知な存在を意味する「ハイパーオブジェクト」という概念から影響を受けた名前らしい。作品のなかにも、その要素が散りばめられている。

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そうした注目作が公開されるなか「WIRED.jp」では、韓国や日本発のオリジナル作品がどのように世界に打って出たのか。その戦略に注目した記事を配信してきた。

ほかにも取り上げたのは、2021年にネットフリックスが始めたストリーミング配信による二酸化炭素の排出量(カーボンフットプリント)を可視化する取り組みだ。映画やドラマ、音楽のストリーミングにおける“目に見えない”環境負荷を可視化していく試みとして注目すべきであり、二酸化炭素の排出量削減のためにはまずは正確なデータの収集が重要になるだろう。

2022年には、磯光雄が原作・脚本・監督を手がけた新作アニメ「地球外少年少女」のNetflixにおける全世界独占配信が決定している。また、ザ・ダファー・ブラザーズによる「ストレンジャー・シングス 未知の世界」シーズン4の公開も控えている。

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アジア発コンテンツの「世界戦略」から、ストリーミング配信における“環境負荷”の可視化まで、2021年のNetflixを取り巻く変化を振り返っていこう。


01

Netflixが“従来型のテレビ放送”を始めた方針転換の理由

ネットフリックスが、番組表に基づいてコンテンツを流す従来型テレビ放送のようなサーヴィス「Netflix Direct」の試験導入をフランスで始めた。従来型のテレビ放送を“否定”してきた同社は、なぜ方針転換したのだろうか?>>記事全文を読む


02

Netflixがつくる日本発のドラマは、「新しいスタンダード」で世界市場を攻略する

内需志向が強い日本の製作環境下で、Netflixはオリジナルドラマ「全裸監督」のような世界的なヒット作を生みだしている。世界的なブランドであるNetflixにおいて、いかに日本の制作陣は“Netflix流”と日本らしさを融合しながら独自のスタンダードを確立してきたのか。ネットフリックスで日本のクリエイティヴを統括する坂本和隆に訊いた。>>記事全文を読む


03

Netflixで「韓国発」がアジアを牽引する理由と、その先のエンタメ業界に起きること

ネットフリックスによる韓国オリジナル作品への年間投資額は、同社ではアジア最大規模の約5億ドル(約520億円)に上る。すでにNetflix日本オリジナルからも世界的な注目作が出ているが、実際のところ同社では韓国がアジアのリーディングポジションとみなされている。それはなぜなのか、Netflix作品の動向から理由を探った。>>記事全文を読む


04

実写版「カウボーイビバップ」が背負う“重荷”と、避けられない運命

SFアニメをNetflixが実写化したドラマ「カウボーイビバップ」の配信が2021年11月に始まった。幅広い人気を誇る原作の実写化だけに期待値は高かったが、過去にアニメの実写版への翻案において元のアニメの本質を描き出せたことはないことを考えると、実写版がオリジナルのアニメ版のファンを落胆させることは避けられない運命だったのかもしれない。>>記事全文を読む


05

テレビを“征服”したNetflixは、さらなる成功に向けて革新を続けている

2021年にはじめて有料会員の数が2億を超えたネットフリックス。競争が激化するなかでの成功は、絶え間ないサーヴィスの革新によって支えられているという。>>記事全文を読む


06

「アニメ」の定義が変わる? ネット配信による世界的な盛り上がりは何をもたらすか

大手配信サーヴィスを中心に、アニメ分野を強化する動きが世界的に本格化している。いまやアニメは世界共通の文化として受け入れられており、これによって「アニメ」の定義すら変わってしまうかもしれない。>>記事全文を読む


07

動物学者デイヴィッド・アッテンボローがドキュメンタリー番組で描いた「完新世の終わり」と、人類への警告

自然に関するドキュメンタリーを数多く手がけてきたことで知られる94歳の動物学者デイヴィッド・アッテンボロー。Netflixのドキュメンタリー番組「デヴィッド・アッテンボロー: 地球に暮らす生命」で、彼は自らが長らく向き合ってきた大自然を現代と比較しながら、全人類に対して“警告”を送っている。>>記事全文を読む


08

Netflixの視聴と環境負荷の関係は? ストリーミング配信による二酸化炭素の排出量を可視化する取り組み

2021年、ネットフリックスが事業活動で排出される二酸化炭素の量(カーボンフットプリント)の詳細を初めて明らかにした。こうした取り組みは、企業が間接的に排出する二酸化炭素の量も削減し、“環境に優しいサーヴィス”を目指す上で重要な意味をもっていくだろう。>>記事全文を読む


09

札幌から世界へ。Netflixだから生まれたアニメ映画『ブライト:サムライソウル』の舞台裏

2021年10月に全世界に配信されたNetflixオリジナルの3DCGアニメ映画『ブライト:サムライソウル』。クリエイティヴ主導で妥協なしに、しかも札幌で制作するという独自性を貫いたスタイルは、なぜ成立したのか。監督のイシグロキョウヘイが答えた。>>記事全文を読む


10

“狂気”のドキュメンタリー「タイガーキング」の続編決定に見る、「邪悪なもの」が売れる世界の現実