コロナ禍を経て、「新たなる危機」の存在が見え隠れした年:2023年に最も読まれた10本のストーリー

新型コロナウイルスの危機が“過去”のようにも感じられるようになった2023年だが、新たなる危機の姿も見え隠れしている。そんな23年に「WIRED.jp」で最も読まれた10本のストーリーを紹介しよう。
コロナ禍を経て、「新たなる危機」の存在が見え隠れした年:2023年に最も読まれた10本のストーリー
Photograph: Kentaro Takahashi/Bloomberg/Getty Images

あれほどまで身近に迫っていた新型コロナウイルスの危機が、まるで“過去”の出来事のように感じられる──。多くの人々にとっての2023年は、そんな印象の年だったかもしれない。

日本では新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが、季節性インフルエンザと同じ「5類」へと5月に見直された。これを契機にマスクなしで外出する人の姿も多く見られるようになり、大型イベントも本格的に再開されている。海外への渡航者も増え、街には外国人観光客の姿が溢れるようにもなった。一見すると、街は“平常”を取り戻したようにも見える。

一方で、新型コロナウイルスの感染者数は微増減を繰り返している。全国の感染者数はこの11月から微増傾向にあり、最新の感染者数(12月22日現在)は20,000人を超えた。決してコロナ禍は完全に「終わった」わけではないのだ。

世界がウイルスと共に生きる「ウィズコロナ」へと舵を切った23年。「WIRED.jp」でよく読まれた記事を振り返ると、サイエンス(頭上のスーパーブルームーンからタイタニック号が沈む深海まで)からソーシャルメディア(Twitterの唐突な「X」への改称は今年だった)、ガジェット(iPhoneがついにUSB-Cに移行)に関する記事が上位を占めるなど、人類が日常を取り戻しつつある印象も受ける。

一方で、「新たなる危機」が姿を現したことも忘れてはならない。人工知能(AI)の進歩が早すぎるがゆえに、その危険性についての議論が置き去りにされることへの懸念を多くの専門家たちが表明したのである。生成AIの進歩がフェイクニュースやディープフェイクの流布を容易なものにするなど、負の側面も顕在化したと言っていい。24年には米大統領選を含む世界の50カ国以上で選挙が予定されるだけに、来る“情報戦”の行方が気がかりなところだ。

また、23年にはイスラエルとイスラム組織ハマスとの衝突が激化し、ロシアによるウクライナ侵攻も続く。兵器としてのAIの利用についても、本格的なルールづくりに向けて国際連合が動き始めている。

コロナ禍を経て“日常”を取り戻したように感じられる一方で、新たなる危機の存在が見え隠れし始めた2023年──。「WIRED.jp」で公開された編集記事を中心に、最も読まれた10本を紹介していこう。


01 「スーパームーン」「スーパーブルームーン」とは? 年間で最も大きく見える満月について知っておくべきこと

NASA/Bill Ingalls

年間で最も大きく見える満月「スーパームーン」。2023年は8月30日から31日にかけて到来したこの満月は、同じ月で2回の満月である「ブルームーン」とも重なる「スーパーブルームーン」でもあった。こうした現象はなぜ起きるのか? 科学的に解説する。>>記事全文を読む


02 フィルターなしで日常の“リアル”を切りとる、新感覚の写真SNS「BeReal」の使い方

PHOTOGRAPH: KATRIN SAUERWEIN/GETTY IMAGES

スマートフォンに通知が届いてから2分という短い制限時間内に写真を撮影し、投稿する写真共有SNS「BeReal」が、欧米で熱心な若いユーザーを獲得している。フィルター機能がなく、友人の“素”の一面を見られるこのアプリの魅力とは?>>記事全文を読む


03 ドキュメント:タイタニック号ツアーの潜水艇「タイタン」最後の96時間

Ocean Gate/Getty Images

沈没したタイタニック号の残骸を見学する観光ツアー用の潜水艇「タイタン」は、いかにして瞬時に圧壊する悲劇に見舞われたのか。その最後の96時間を追った。>>記事全文を読む


04 ハリー・ポッターのゲーム「ホグワーツ・レガシー」には、さまざまな“欠落”を感じさせられる:ゲームレビュー

COURTESY OF WARNER BROS. GAMES

『ハリー・ポッター』の世界観に基づく新作ゲーム「ホグワーツ・レガシー」。このゲームの世界で過ごすうちに気付かされたことは、原作から逸脱していることだけでなく、さまざまな面から明らかな“欠落”を感じるということだった。>>記事全文を読む


05 ブルース・リーの超人的な「ワンインチパンチ」の秘密を、物理学に基づいて解き明かしてみた

Stanley Bielecki/Getty Images

武術の技は魔法のようにも見える。だが、ブルース・リーの超人的なワンインチパンチの秘密を、物理学の観点から解き明かしてみたらどうだろうか。>>記事全文を読む


06 ソニーの完全ワイヤレスイヤフォン「WF-1000XM5」は、ついに“最強”の座を譲ったかもしれない:製品レビュー

Sony

ソニーのワイヤレスイヤフォンの新モデル「WF-1000XM5」が発表された。小型化された本体には前モデルと比べて大きなドライバーと豊富な機能が搭載されたが、臨場感に欠ける音質や平凡なノイズキャンセリング機能のせいで、ナンバーワンとは言えなくなってきているかもしれない。>>記事全文を読む


07 なぜ「昆虫」は海に少ないのか? 日本の研究者が発表した新たな仮説の中身

Vicki Jauron, Babylon and Beyond Photography/Getty Images

地球上には約100万種類の昆虫がいるにもかかわらず、海洋環境に適応している種は非常にまれだ。長らく議論の的になっているその理由について、東京都立大学大学院の研究チームが新たな説を発表した。>>記事全文を読む


08 USB-Cへの全面移行からカメラの進化まで、“iPhone 15”について知っておくべき4つのポイント

Photograph: Apple

アップルが日本時間の9月13日午前2時から発表会を開催し、毎年9月の発表が恒例となるiPhoneの新モデルが登場する可能性が高い。次期モデルになるであろう“iPhone 15”シリーズは、どのような進化を遂げるのか。発表直前の最新情報をまとめた。>>記事全文を読む


09 垂直農法で栽培された野菜が、わたしたちの食卓に並ばない理由

Angela Weiss/Getty Images

倉庫の中でLED照明を使って野菜を栽培する垂直農法は持続可能な農業として注目されていたが、電力価格の変動に弱いという欠点が2022年に浮き彫りになってしまった。こうして育てられた野菜が食卓に並ばなかったとしても、研究に活用できる可能性は残っているかもしれない。>>記事全文を読む


10 「無料で手に入る大画面スマートテレビ」は、本当に“お得”なのか

Telly

広告が表示される大画面スマートテレビを無料で提供するサービスが、このほど発表された。視聴者が何を観ているのか追跡して専用のセカンドディスプレイに広告を表示する仕組みだが、プライバシーを犠牲にして手に入れるテレビは本当に“お得”といえるのだろうか?>>記事全文を読む


『WIRED』日本版が振り返る2023年の記事はこちら


Related Articles
article image
サイケデリクス研究のゆくえや睡眠に関するトピックを中心に、WIRED.jpでよく読まれたウェルビーイング関連の記事をピックアップし、『WIRED』日本版が振り返る2023年(ウェルビーイング編)としてお届けしよう。
article image
新たにスタートしたふたつのシリーズを中心に、よく聴かれたポッドキャストのエピソードをピックアップし、『WIRED』日本版が振り返る2023年(ポッドキャスト編)としてお届けしよう。
article image
ワイヤレスイヤフォンにフィットネストラッカーにスマートウォッチなどなどなど。今年も数多の新しいデジタルデバイスが登場し、WIRED.jpでもしばしばレビュー記事などに注目が集まった(もちろんロングリードもたくさんある)。そのなかでもよく読まれた記事をピックアップし、『WIRED』日本版が振り返る2023年(ギア・ガジェット編)としてご紹介する。

雑誌『WIRED』日本版 VOL.51
「THE WORLD IN 2024」は好評発売中!

アイデアとイノベーションの源泉であり、常に未来を実装するメディアである『WIRED』のエッセンスが詰まった年末恒例の「THE WORLD IN」シリーズ。加速し続けるAIの能力がわたしたちのカルチャーやビジネス、セキュリティから政治まで広範に及ぼすインパクトのゆくえを探るほか、環境危機に対峙するテクノロジーの現在地、サイエンスや医療でいよいよ訪れる注目のブレイクスルーなど、全10分野にわたり、2024年の最重要パラダイムを読み解く総力特集。詳細はこちら