会話型AI「ChatGPT」などのチャットボットは大衆による人工知能(AI)の利用を可能にし、わたしたちは考えうるほぼすべてのトピックについてあらゆる種類の回答を得られるようになった。こうしたボットは詩やコードを書くことが可能で、哲学などについても回答してくれる。
ChatGPTに好きなように入力してユーザーについて理解してもらうこともできるが、より興味深く有益な結果を得られる方法がある。入力文を工夫して出力の精度を向上させる「プロンプトエンジニアリング」の手法は、それ自体が専門的なスキルになりつつあるのだ。
単語をいくつか追加したり、指示する文章をあと1行だけ追加したりするだけで、ほかの人より高精度な回答を得られる場合がある。以下にいくつかの例を紹介していこう。
なお、今回はテストの目的を考慮して大規模言語モデル「GPT-4」を用いてプロンプト(人間が提示する短い文章による指示)をテストした。GPT-4は現時点でChatGPTの最新のモデルだが、一部のユーザーのみ利用可能となっている。ただし、古いバージョンのChatGPTでも問題なく動作するだろう。
ChatGPTは要求に応じて表形式で回答することもできる。これは特に情報やクリエイティブなアイデアを得る上で役立つ。例えば、食事の献立と必要な材料、ゲームのアイデアと必要な道具、あるいは曜日と数種類の言語での言い方などを表にまとめてくれる。
追加のプロンプトと自然言語を用いてChatGPTが描いた表に変更を加えたり、ほかのプログラム(Microsoft Excelなど)で使用できる標準フォーマットで表を生成することも可能だ。
プロンプトを工夫することで、標準の退屈で淡々としたトーンではなく、もっと面白いものにも変えられる。例えば、自分が好きな作家の文体を真似たものにすることもできるのだ。
例を挙げると、アーネスト・ヘミングウェイやレイモンド・カーヴァーのように力強く無駄がない文章を生成できるか試してもいいし、シェイクスピアの戯曲に見られる叙情的なリズムや、ディケンズのような濃密さを追求してもいい。得られる結果は実際の作家の天才性には及ばないものの、クリエイティブな回答を得るためのもうひとつの方法だ。
ChatGPTは制限を与えられると驚くべき結果を生成するので、一定の単語数または段落数内で回答するようボットに思い切って指示してみるといい。
4つある段落の情報をひとつにまとめたり、簡潔にするために7文字以下の単語で回答を求めたりするようなこともできる。もしChatGPTで思うような返答を得られない場合は、修正して再度試してみよう。
期待する回答をChatGPTから引き出すには、ユーザーが誰かなのかを伝えることもひとつの方法だ。複雑なテーマを理解度の異なる人たちに説明する動画を見たことがあるかもしれないが、ChatGPTにも同様の機能がある。
仮にChatGPTに「10歳の子どもたちと会話している」または「起業家に向けて話している」と伝えれば、それぞれに応じた答えが返ってくるだろう。同じテーマについて複数のアウトプットを生成したい場合にも有効だ。
ChatGPTは、それ自体が有能なプロンプトエンジニアでもある。画像を自動生成する「Dall•E」や「Midjourney」といったジェネレーティブAIで使えるクリエイティブで効果的なプロンプトを生成するよう指示し、返ってきた文章をそのまま画像生成AIに入力して試すこともできる。また、ChatGPTにプロンプト作成のコツを聞いてみることさえできる。
プロンプトはより詳細で具体的なほど、求めている回答を得られやすい。ユーザーが入力した文章を拡張したり、より詳細な情報を追加したりするようチャットボットに命令できるほか、特定のAIツールに対するプロンプトジェネレーターの役割を演じさせることもできる。さらに、情報を追加して回答を絞り込むよう指示することも可能だ。
ChatGPTは文章を基本としているが、アスキーアートの生成を命じて“イラスト”を描かせることもできる。アスキーアートとは画面上に色ではなく文字や記号を並べて絵に見立てたものだ。賞はとれないかもしれないが、これで遊ぶのはなかなか楽しい。
ここでも具体的であるほど質の高い回答を得られるという法則は同じだが、ボットに新しい要素を追加したり削除したりしながら進めることもできる。ただし、アスキーアートは画像や写真とは根本的に異なるので、表現力に限界があることも忘れないでほしい。
ChatGPTの場合、自分ですべてを入力する必要はない。コピー&ペーストが可能なので、ほかの情報源からコピーしたテキストを貼り付けても構わない。入力できる文字数は4,000字に制限されているが、ボットに入力するテキストをいくつかに分割し、過去の会話の内容を踏まえて続けさせることも可能だ。
こうしたアプローチが最も適しているのは、例えば難解な科学的概念を説明するような、自分が理解できない文章をChatGPTに単純化してもらうケースだろう。また、文章をほかの言語に翻訳したり、より魅力的で流暢な表現にすることなども可能だ。
質問する前にデータを渡すことも、回答の精度を高める方法として有効だ。例えば、書籍の要約とそのジャンルのリストを渡し、新しい要約に正しいジャンルを当てはめるよう依頼するようなことができる。また、自分が好きなアクティビティをChatGPTに伝えて、新しいアイデアを得るといった活用法もある。
この場合には、用いるべき魔法のような言葉の組み合わせはない。いつも通り自然な言葉を使えば、ChatGPTは言いたいことを理解してくれる。プロンプトの冒頭で「事例を挙げる」と明記した上で、事例を踏まえた回答が欲しいと指示してみよう。
ChatGPTは作家の文体を真似ることができるが、それと同じようにキャラクターを演じる(ロールプレイする)こともできる。例えば、イライラしたセールスマン、興奮したティーンエイジャー(絵文字や略語ばかり返ってくる可能性が高い)、西部劇を代表するスター俳優のジョン・ウェインといった具合だ。
演じさせられるキャラクターの種類は、ほぼ無限大である。実用性という観点からは高く評価されないかもしれないが、AIチャットボットの可能性を知る上で有用であることは間違いない。
ChatGPTの回答を求める前にいくつかの“材料”を与えておくと、得られる回答の質は格段に向上する。それは冷蔵庫にある材料を使った料理を提案するといった文字通りの材料でもいいし、それ以外でも構わない。
ただ単に「殺人事件が起きるミステリー小説を書いて」と依頼するのではなく、登場するキャラクターをリストアップする必要がある。また、「どこに行けばいいか」と単に尋ねるのではなく、訪れる都市の名前や見たい場所、一緒に行く人などを具体的に書き出すことが大切だ。
近年、ネット上ではイエスかノーかの二者択一を迫る議論が蔓延していることはお気づきの通りである。そこでChatGPTの力を借りて、白と黒の間にグレーを加えてみよう。指示すれば、賛成と反対の立場の両方を踏まえて論じることができる。
ChatGPTは政治や哲学、スポーツ、芸術まで、実に見事に中立的な立場から情報を提供してくれる。それは曖昧性が高いということではなく、複数の観点から問題を理解する上で役立つ手法だ。
(WIRED US/Edit by Daisuke Takimoto)
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