透明なノートPCからブレスレット型スマートフォンまで、「MWC 2024」に登場した最新ガジェット

世界最大のモバイル機器見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」がバルセロナで2月26日から29日まで開催されている。バービーとコラボしたスマートフォンや透明なノートPC、ブレスレット型のスマートフォンなど、注目の新製品を紹介する。
MWC 2024:透明なノートPCからブレスレット型スマートフォンまで、注目すべき最新ガジェット
PHOTOGRAPH: JULIAN CHOKKATTU; SAMSUNG

世界最大のモバイル機器見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」は、わたしたちのお気に入りの展示会のひとつだ。1年で最高の季節に美しいバルセロナで開催されるからではない(手ごろな価格で楽しめるカヴァやタパスが理由でもない)。MWCを気に入っている理由は会場を見て回りやすく、いつも興味深くて楽しく、ときに奇妙な製品と出合えるからだ。

「MWC 2024」で目を引いた製品には、透明なノートPCや曲がるスマートフォン、バービーとコラボした折り畳み式スマートフォンなどがある。以下に注目の製品を紹介していこう。

HMD Globalはマテルと提携して、バービーをイメージした折り畳み式スマートフォンを発売する(端末の画像にはモザイクがかかっている)。

PHOTOGRAPH: JULIAN CHOKKATTU

HMD Global:バービーとコラボしたスマートフォン

HMD Globalは、ノキアのスマートフォンを蘇らせる企業として、2017年のMWCで話題になった。しかし、同社は勢いを失い、ノキアのブランド名でサムスンやアップルのような企業の製品と肩を並べるものをつくることはないことが明らかになった。その代わり、HMD Globalはこの数年、手ごろなAndroidスマートフォンとフィーチャーフォンの開発に注力している。

MWC 2024でHMD Globalは、23年に初めて黒字化したと発表した。そして現在はリブランドを通じて事業を刷新しようとしている。まずは名称だ。今後は「Human Mobile Devices」(HMDの頭文字となっている名称)をより強調する。今年のデバイスのラインナップには、HMD Globalのスマートフォン、ノキアの象徴的なスマートフォン、そしてバービーとコラボした折り畳み式スマートフォンが含まれる。

読み間違いではない。HMD Globalは玩具メーカーのマテルと提携して、バービーをイメージした折り畳み式スマートフォンを発売する。発売予定は24年の夏で、もちろん本体の色はピンクだ。この端末はデジタルデトックス用のデバイスとして宣伝されている。わかっていることはこれだけだ。発売を伝えるデバイスの画像には、すべてモザイクがかかっていた。

HMD Globalのほかのデバイスについてわかっていることは、「HMD Fusion」と呼ばれるシステムを軸に展開されることである。これはモトローラの「Moto Mods」やグーグルのいまはなき「Project Ara」のように、開発者がパーツを組み合わせてスマートフォンをつくれるモジュラー式のシステムであるようだ。パーツには拡張用バッテリーやバーコードスキャナー、決済端末、医療機器などが含まれる。開発者向けのツールキットも公開された。

HMD Globalはデバイスの修理のしやすさにも焦点を当てている。今年は、全世界で発売するデバイスの半数が修理可能なものになると、同社は想定している。また、夏には割れた画面を修理するために必要な手順を劇的に減らすシステムに変更する見通しであるという。


モトローラのコンセプトモデルである曲がるスマートフォンには複数の表示オプションがある。

PHOTOGRAPH: JULIAN CHOKKATTU

モトローラ:曲がるスマートフォン

レノボが23年末に開催した年次イベント「Lenovo Tech World 2023」で、モトローラは「アダプティブ・ディスプレイ・デバイス」と呼ぶコンセプトモデルの曲がるスマートフォンを発表した。

MWCでは、この端末に触る機会を得た。見た目と使い勝手は折り畳み式スマートフォンの「motorola razr」シリーズと似ているが、端末をぴったり半分に折り畳むためのヒンジはなく、背面側に曲げることができる。

端末は弓形に曲げた状態でテーブルに置くことができ、向かい合って座っている2人で画面を共有することが可能だ。例えば、2人で一緒に映画を観ることができる。会場では別の2人組みが四目並べの短い対戦を楽しんでいた。

また、端末をクリップで留める磁気バンドを使うことで、身に着けることもできる。デバイスを手首に巻き付けると、スマートブレスレットのようになるのだ。その場合、情報が画面の上部に表示されるようにインターフェイスが変化する。風変わりで興味深いが、つくりは粗いように見えた。

モトローラが23年に発表したコンセプトモデルのスマートフォンである「Rizr」は、本体は小さくとも画面を拡張できる巻き取り式のディスプレイを搭載していた。個人的にはこの曲がる端末よりも、「Rizr」を生産してほしいと思った。

モトローラの新しいコンセプトモデルの曲がるスマートフォンは、やや不格好な“スマートブレスレット”になりうる。

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またモトローラは、親会社であるレノボとともに新しいソフトウェア機能「Smart Connect」を発表した。これは、モトローラのスマートフォンに搭載されているプラットフォーム「Ready For」の進化版である。「Ready For」では、スマートフォンと近くのディスプレイをワイヤレス通信でつないでアプリを表示したり、スマートフォンのカメラをウェブカメラとして使用したり、ファイルを共有したりできる。

「Smart Connect」はこれらの機能を拡張したもので、Windows搭載のノートPCでも専用アプリをMicrosoft Store経由で入手することで利用できる。対応しているレノボのタブレットやモトローラのスマートフォンをもっていれば、画面間でアプリを難なく移動させられるということだ。これはアップルの「ユニバーサルコントロール」とよく似ている。ノートPCのキーボードやマウスで、タブレットやスマートフォンを操作することも可能だ。

レノボとモトローラ以外の企業も同様の機能を披露し、Honorも同社の展開するノートPC、スマートフォン、タブレットにこのような機能を搭載していた。


ワンプラスは初代「OnePlus Watch」の欠点を改善した「OnePlus Watch 2」を発表した。

PHOTOGRAPH: JULIAN CHOKKATTU

ワンプラス:改良された「OnePlus Watch 2」

以前のレビュー記事(英語版記事)では、ワンプラス(OnePlus、万普拉斯)のスマートウォッチの初代モデル「OnePlus Watch」を「10点中3点」と低く評価した。この初代モデルは精度が低く、期待しているものとは正反対だったからだ。

これに対して新しい「OnePlus Watch 2」は天と地ほど違う。この1週間ほど着用しているが、非常によくなっており、初代モデルとはまったく違うものになったように感じる。

それに、この端末は2つのプロセッサーで2つのOSを動かすという、競合他社の製品より優れた技術を搭載している。OnePlus Watch 2はグーグルの「Wear OS」を搭載しており、このOSはクアルコムのチップセット「Snapdragon W5 Gen 1」で動いている。それだけでなく、「Real-Time Operating System(RTOS)」も搭載しており、こちらは超低消費電力のチップ「BES2700」で動いている。

見た目と使い勝手は、通常のWear OSスマートウォッチと変わらない。「Google マップ」の使用や音楽の再生、アプリの利用など負荷の高いタスクはSnapdragonのチップセットが処理している。RTOSは常時表示やバックグラウンドでの処理、通話や通知といったほかのタスクを担っている。通常の使用では違いは感じられなかった。

この魔法のようなOSの組み合わせが数日間ものバッテリーのもちを実現している。常時表示を有効にした状態でも、3日間は充電する必要がなかった。これはすごい。

OnePlus Watch 2は米国で予約を受け付けており、価格は300ドル(約45,000円)で、3月4日に発売される。任意の時計を下取りに出すと(アナログ時計でも可能だ)、購入金額から50ドルが割引になるうれしいプロモーションを、ワンプラスは実施している(日本での発売は未定)。


察しの通り、向かいに座っている人にも「Project Crystal」の画面に映っているものが見えてしまう。

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レノボ:“透明”なノートPC

レノボもMWCで透明なノートPCを披露した。こちらの記事に詳しく書いているが、これは「Project Crystal」と呼ばれるコンセプトモデルで、実際の製品ではない。少なくともすぐに製品になることはないだろう。「Project Crystal」はレノボが透明なノートPCがどのようなものになるかを示したもので、未来的でないと言ったら嘘になる。

透明な画面はマイクロLEDを使用しており、反対側が透けて見える。しかし、超高輝度なディスプレイのおかげで通常のアプリも問題なく見ることができる。ただし、残念ながら、向かいに座っている人にもユーザーが画面で何をしているかが見えてしまう。

レノボは必要に応じてプライバシーを守る不透明なレイヤーをつける透過性の設定があると言っていたが、その実演はしなかった。エンタープライズ向けではないが、興味をそそるコンセプトだ。


Galaxy Ring の発売時にワークアウトの自動検出機能は搭載されないが、自転車での運動は検出できる。

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サムスン:スマートリング「Galaxy Ring」

サムスンは1月に開催したイベント「Galaxy UNPACKED 2024」でスマートリング「Galaxy Ring」の存在を明かしたが、詳細についてはほとんど明らかにしてこなかった。しかしMWCでは、もう少しだけ情報を公開した。ハンズオンについてまとめた記事はこちらから読むことができる。動作しないプロトタイプのほうも試着することもできた!

Galaxy Ringの発売時にはワークアウトの自動検出のような機能は搭載しないが、生理周期の追跡と「My Vitality Score」と呼ばれる機能は搭載する。これはGarminの「Body Battery」やFitbitの「今日のエナジースコア」と同じようなもので、ユーザーの体と心にどれだけ活力があるかを示す指標だ。「今年の後半」という情報が公開されているだけで、明確な発売日や価格はまだわからない。


スマートフォンを見つめるだけでクルマを動かせるかって? もちろんだ。

PHOTOGRAPH: JULIAN CHOKKATTU

Honor:視線だけでクルマを動かすアイトラッキング機能

Honor(栄耀)の担当者が記者会見で「AI」という言葉を口にするたびにショットグラスで酒を飲んでいたら、いまごろ死んでいたことだろう。それにスマートフォンの「Magic 6 Pro」や「Magic V2 RSR」、ノートPCの「MagicBook Pro 16」など、新しいハードウェアで宣伝されていた多くの機能は、実際のところ人工知能(AI)を使用しているわけではない。だからといって、それらが「クール」な製品でないわけではない。

Magic 6 Proのアイトラッキング機能のデモが飛び抜けて奇妙だった。Magic 6 Proはまもなく発売される予定で、この機能は後日実施されるソフトウェアアップデートで展開される。アイトラッキング機能は、基本的には画面に表示された通知をじっと見るだけで内容が表示される、というものだ。これは片方の手が買い物袋で塞がっているときに便利だろう(HonorはMWCでのメディア向けイベントに『WIRED』チームを招待し、記者の旅費の一部を負担している)。

おもしろいのは、Honorがアイトラッキング機能でクルマを動かすデモを実施した点だ(それもアルファロメオである)。スマートフォンのアプリには、エンジンをかける、エンジンを止める、前進、後退の4つの選択肢が表示されていた。そしてそのボタンのひとつを見ると、クルマが指示通りに動くのだ。もちろん、安全のために車両には速度制限がかけられ、一定の距離しか前後に移動しない。

Honorはアイトラッキング機能を主に東アジアの人の目で訓練していたことから、うまく動作しないのではないかと心配していた。とはいえ、今回のデモでは何の問題もなかった。それぞれのボタンをじっと見ると、クルマはエンジンをかけ、前後に動いたのだ。楽しい!

ただし、この機能は車両を制御するためのものではないと、改めて書いておきたい。これは純粋にアイトラッキング機能を必要以上に派手な方法で実演したものにすぎないのだ。


TCL NXTPAPER 14 Pro。

PHOTOGRAPH: JULIAN CHOKKATTU

TCL:NXTPAPERを使ったデバイスを米国でも展開

鮮やかなAMOLED(アクティブマトリクス式有機EL)ディスプレイで本を読むと目が疲れるようなら、電子ペーパーのようなディスプレイ「NXTPAPER」を搭載したTCLの製品を気に入るかもしれない。TCLは注目のフラグシップモデルである「TCL 50 XL NXTPAPER 5G」を含むいくつかのデバイスを米国でも展開する見通しだ。

「TCL 50 XL NXTPAPER 5G」の画面は紙のように見え、何時間見つめていても疲れないように設計されている。画面サイズは6.8インチで、リフレッシュレートは120Hzだ。

その他のスペックは平均的またはそれ以下だが、価格は229ドル(約34,400円)なので、スマートフォンで本を読みたい本好きには魅力的かもしれない。

TCL NXTPAPER 14 Pro

TCLは目に優しいディスプレイ技術を同じく搭載し、電子ペーパーモードのある14インチのAndroidタブレット「TCL NXTPAPER 14 Pro」も発表している。このタブレット端末は「生産性のパワーハウス」と紹介されており、プロセッサー「MediaTek Dimensity 8020」と12GBの大容量RAMが高い性能に寄与している。また、12,000mAhの大容量バッテリーと256GBのストレージ容量を備えているが、このストレージ容量はやや少ないように思える。

TCLで注目のガジェットのうち最後に紹介したいのが、「TCL Linkkey IK511」だ。これはeSIMの契約で5G通信に対応したアダプターで、USB Type-Cのポートからさまざまなデバイスとつなぐことができる。

TCL Linkkey IK511

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グーグル:Android端末のAI機能を拡充

グーグルは以前まで「Bard」という名称だった会話型AIの「Gemini」をAndroidに組み込んでいる。MWCでは、それにより実現した便利な機能を披露した。最も特徴的だったのは、Androidの「メッセージ」アプリにGeminiが現れ、ぴったりのメッセージを作成する手助けをしてくれる機能だ。

メッセージを自動で生成したり、メッセージの文体をフォーマルやカジュアル、あるいはより極端なものに調整したりできる。つまり、メッセージを書くことに関して大幅に手を抜けるようになるわけだ。

車内向けの「Android Auto」も、テキストの要約やグループチャットへの対応など、機能が改良されている。位置情報や到着予定時刻の共有など、適切な返信やアクションを提案する機能も追加された。

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グーグルは生成AIで画像の説明をする視覚支援アプリ「Lookout」の機能を全世界に展開する。ただし、言語は英語のみだ。これは視覚に障害のある人を支援するアクセシビリティ機能である。

これに関連する新機能がもうひとつある。カメラを周囲に向けると情報を読み上げてくれる Androidの「TalkBack」機能を使用し、店の営業時間などをユーザーに知らせる「Lens in Maps」機能だ。

ほかにもいくつか新機能がある。Android搭載のデバイスでGoogle ドキュメントを使うとき、指やスタイラスペンを使って手書きで情報を追加できるようになる。さらに、Spotify Connectがホーム画面の出力スイッチャーに追加される。「ヘルスコネクト」を使うと、OuraやMyFitnessPalなどの情報源からフィットネスに関連するデータをリニューアルされたFitbitアプリに取り込めるようになる。

Wear OSの新機能もいくつか発表された。「Google ウォレット」に保存しているイベントチケットや搭乗券などのパスを「Wear OS」搭載のスマートウォッチで表示し、直接スキャンできるようになった。そして、ついにWear OS版「Google マップ」アプリが公共交通機関のナビに対応する。これでポケットからスマートフォンを取り出す必要がなくなった。


PHOTOGRAPH: SIMON HILL
PHOTOGRAPH: SIMON HILL

ZTE:折り畳み式スマートフォン「nubia Flip 5G」

大きめのスマートフォン「nubia Z60 Ultra」を試してレビュー記事(英語版記事)を書いたとき、Nubia TechnologyはZTEから独立した別会社であると人々に伝える点で広報担当者は苦労していた。とはいえ、MWC 2024ではZTEのステージで製品を発表していた。今回限りのサブブランドから登場した最初の折り畳み式スマートフォンの「nubia Flip 5G」は、とてもかわいい見た目をしている。

開いたときの画面の大きさは6.9インチで、リフレッシュレートは120Hzだ。これは一般的なスマートフォンと同程度のサイズだが、パチンと閉じるとポケットに収まりやすいサイズになる。正面には四角や長方形の画面の代わりに、厚い縁に囲まれた丸い画面がある。Nubia Technologyはこれを「50MP AI dual camera」と呼んでいる。正面の画面にカメラがとらえたライブ映像を写すことで、完璧な自撮り写真を撮るうえで役立つ便利な機能を搭載している。

搭載しているチップは「Snapdragon 7 Gen 1」なので、非常に強力なスマートフォンというわけではない。それは599ドル(約90,000円)という比較的手ごろな価格にも反映されている。円形のディスプレイは実用面で最適な形状ではないが、3Dのインタラクティブなペット(うちの娘はネコにしたがるだろう)やカスタマイズの幅広さなど、この端末を魅力的にする追加機能もいくつか用意されている。

もうひとつ大きな製品発表は、タブレット端末「nubia Pad 3D II」だ。このタブレット端末は、メガネをかけなくても3Dに見える画像を表示する。ユーザーの目を追跡し、それぞれの目に合わせてわずかに異なる画像を表示することで、これを実現しているわけだ。実際に試してみたが、かなり効果的である。3Dのクルマのモデルを写してみたところ、画面から飛び出しているように感じられた。

昨年の「nubia Pad 3D」と比較すると、この次世代モデルには5G通信と曖昧な「AIコンセプト」の機能がいくつか追加されていることがわかる。タブレットの背面には3D画像と動画撮影のためのデュアルカメラがあり、2Dのコンテンツを3Dに変換できるというAI機能も備えている。本体価格はまだ発表されていない。


シャオミ:高性能なスマートフォン「Xiaomi 14」で世界展開を狙う

MWCは、かつて各メーカーがスマートフォンを発表する場所だった。アップルを除いて、ほとんどの主要なスマートフォンのメーカーは、バルセロナでその年に発売する新製品を発表していたのだ。

ところが、サムスンとグーグルが独自のイベントを開催するようになり、LGとソニーの勢いは落ち、ファーウェイ(華為技術)がかつての姿をとどめていない2024年。シャオミ(小米科技)に輝くチャンスが巡ってきた。

中国メーカーであるシャオミは、それを見逃していない。スマートフォン「Xiaomi 14」(849ポンド、999ユーロ、約16万円)と「Xiaomi 14 Ultra」(1299ポンド、1499ユーロ、約24万円)、タブレット端末「Xiaomi Pad 6S Pro 12.4」(699ユーロ、約11万円)、スマートウォッチ「Xiaomi Smart Band 8 Pro」(69ユーロ、日本では8,400円)と「Xiaomi Watch S3」(149ユーロ、日本では17,980円)を全世界で展開することを発表したのだ。ただし米国は除く(シャオミはMWCでのメディア向けのイベントに『WIRED』チームを招待し、記者の旅費の一部を負担している)。

PHOTOGRAPH: JULIAN CHOKKATTU

最も手ごろなフラグシップモデルであるXiaomi 14のレビューはこちらから(英語版記事)読むことができるが、目を引いたのはXiaomi 14 Ultraだった。昨年のXiaomi 13 Ultraも印象的だったが、Xiaomi 14 Ultraはすべてを10点から11点、いや、14点にまで引き上げている。

前モデルと同じ4つのカメラのうちひとつは、ライカと共同開発した4つの50メガピクセルのレンズを採用している。これに対してメインカメラには、適切な光量を取り入れるためにF値1.63〜4.0まで自動調整するステップレス可変絞り機能が搭載されている。

また、フローティング機構を採用したF値1.8の望遠カメラは3.2倍の光学ズームで、F値2.5のペリスコープ望遠レンズを搭載したカメラは5倍の光学ズームに対応している。そして、F値1.8と122度の視野角を持つ超広角カメラが、この多機能なカメラ全体を完成させる。HDR動画の撮影品質も強化された。

シャオミが披露した興味深い機能のひとつは、写真をスキャンしてツールに指示すると、ユーザーが映る新しい写真が生成されるAI機能だ。

PHOTOGRAPH: SIMON HILL

素晴らしいディスプレイに控えめになった本体の曲線、耐久性の増した筐体、改善された冷却機能、そして80Wの非常に高速なワイヤレス充電(有線では90W)、さらにはSnapdragonを搭載しWi-Fi 7にも対応したXiaomi 14 Ultraは、「Ultra」の名にふさわしい性能を誇る。

しかし、すべてを備えたハードウェアは高価であり、写真好きでなければカメラは高性能すぎるかもしれない。また、リニューアルされたユーザーインターフェースの「HyperOS」は「MIUI」よりも美しく洗練されているが、iOSの真似であり、プリインストールされた余計なソフトウェアも多い。

Xiaomi 14 Ultraは価格が1,499ユーロからで、物理的な制御装置、グリップ、追加のバッテリーを追加したPhotography Kit(199ユーロ、約32,000円)も用意されている。

その他の製品についても簡単に紹介しよう。12.4インチの「Xiaomi Pad 6S Pro」は、シャオミがこれまでに発売したなかで最大のタブレット端末だ。「Xiaomi Smart Band 8 Pro」は手ごろなフィットネストラッカーで、HyperOS を搭載した「Xiaomi Watch S3」は交換可能なベゼルと1.43インチのAMOLEDディスプレイを搭載したスマートウォッチである。

シャオミは「Xiaomi Watch 2」(199ユーロ、約32,000円)も発表した。外見は似ているが、グーグルのWear OSを搭載したものだ。これらのデバイスは米国で正式に販売されることはないが、シャオミはグローバル展開を進めており、中国での発売直後に欧州でも発売する見通しだ。

ノートPCもAI機能を搭載

いまの時代、あらゆるものにAIが搭載されている。これはMWC 2024でも顕著なトレンドであり、ノートPCにもその影響は及んだ。

中国の伝音科技のブランドであるTECNOが披露した新型ノートPC「Megabook T16」シリーズには、さまざまなAI機能が搭載されている。注目のモデル「Megabook T16 Pro」には、22時間ももつという容量99.99Whの驚異のバッテリーが搭載されている。プロセッサーは「Intel Core Ultra(5または7)」を搭載し、マイクロソフトのCopilot AIがアプリの一覧にポップアップで表示され、ユーザーの作業を進める手伝いをする。

TECNOはこのデバイスに指示を入力して画像を生成するAIツールも搭載している。「パリで休暇をとっているAndroidのマスコットの画像を描いて」と指示したところ、いくつかそれらしい画像が生成された。しかし、そのうちのひとつにはエッフェル塔が何個もあり、別の画像のAndroidのマスコットは酒にひどく酔っているようだった。

Honorも「MagicBook Pro 16」に搭載したAI機能を強調していた。このデバイスのプロセッサーもIntel Core Ultraで、マイクロソフトのCopilotを利用できる。HonorはAIがデバイス間のウィンドウの共有機能を実現する鍵であったと強調していた。この機能では、Androidのスマートフォンやタブレット端末、PC、ノートPC間で、メッセージアプリのウィンドウをドラッグで移動させることが可能だが、AIが必要な機能のようには思えない。Honorは画像のスマート検索や文書の要約、テキストの理解、AI字幕など、よりAIらしい機能も紹介していた。

レノボもAIの波に飛び乗ろうとしている。レノボのノートPCもIntel Core Ultraプロセッサーを搭載し、マイクロソフトのCopilotを利用できる。デモでは、ビデオ通話中の背景をぼかしたり、画質を調整するAI機能を紹介していた。

とはいえ、最もクールなAI機能は、カメラを使用して透明に見えるようにしているコンセプトモデルの透明なノートPCにあった。カメラで物の写真を撮ってそれが何かを尋ねたり、ライブビューの画面にデジタルな情報を重ねたりすることができる。とはいえ、これらの機能はスマートフォンで便利に使えている機能であり、実のところそれほどクールではないのかもしれない。

PHOTOGRAPH: JULIAN CHOKKATTU

WIRED US/Translation by Nozomi Okuma)

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