アップルの「HomePod(第2世代)」は決して“最高”のスマートスピーカーではなく、新鮮さにも欠けている:製品レビュー

第2世代となったアップルのスマートスピーカー「HomePod」。デザインの変化が小幅にとどまったほか、競合製品と比べて高価格のわりに音質や性能には課題が残っている。
HomePod(第2世代)レビュー:決して“最高”のスマートスピーカーではなく、新鮮さにも欠けている
PHOTOGRAPH: APPLE

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アップルは音楽をとても大切にしている。スティーブ・ジョブズは音楽を愛するがゆえに「iPod」「iTunes」を開発し、音楽をどこへでも持ち運べるようにしてくれた。そして私生活では数千ドルするフィンランド製スピーカーをシンプルで飾り気のないリビングに設置していた。

また、「Apple Music」はロスレスオーディオに対応したおかげで、最も高音質な音楽ストリーミングサービスのひとつとなっている。ヘッドフォンは独自の製品Beatsブランドの製品も、そのほとんどが素晴らしいものだ。

それゆえに、アップルがいまだに素晴らしいフルサイズのスマートスピーカーを生み出せていないことは残念である。刷新されて第2世代モデルになった「HomePod」は、2018年に生産終了したモデルをほぼ完璧に再現した見た目だけでなく、オーディオに関してもほとんど改良されていない。

第2世代のHomePodはオーディオのドライバーが少なく、Spotifyなどのほかの人気のサービスとの互換性がなく、友人が家に来たときもアップルの端末以外とは接続できないままだ。本体上部のフルカラーのディスプレイは大きくなったが、「Amazon Echo」の青く光る線よりも表示できる情報は少ない。

18年当時なら、音声アシスタントが機能してスピーカーから音さえ出ている限りは、こうした弱点は比較的許容されていた。しかし、優秀なライバルたちが多種多様な形やサイズで登場した現在では、このHomePodの問題を看過することは難しい。

小型モデルの「HomePod mini」もすでに同じ「Siri」による音声コントロール機能を搭載している(Google アシスタントやAmazon Alexaのほうが好みなら、そちらのほうが客観的に見て性能は優れている)。そして、音楽をかけたいだけの人々には十分すぎるほどの音質を提供している。

600ドル(日本では2台で89,600円)で2台のHomePodを揃えてステレオで聴くようにしない限りは、音質はそれほどいいとは言えない。低音が重く、中音域はあまり鮮明ではないのだ。同じ「音楽が流れている」という感覚なら小型モデルのHomePod miniでも他社製品でも、もっと安く手に入る。最高の音を求めるなら、HomePodで得ることは難しいだろう。

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見た目は相変わらず“マシュマロ”のよう

新型HomePodは外見上は旧モデルより少しずんぐりしており、高さ7インチ(168mm)の太めで小さい“音の出るマシュマロ”といった印象だ。それ以外で違いに気付くとしたら、音量調節ボタンのついた本体上部のディスプレイが大きくなったことだろうか。「Hey Siri」と声をかけるとアップルの音声アシスタント「Siri」が起動し、聞こえた合図としてディスプレイにカラフルなライトが光る。

旧モデルのことを覚えている人にとっては、電源ケーブルが取り外しできるようになったことは喜ばしい改善点だろう。これで家具のケーブル穴に通せるようになった。第1世代のHomePodは電源ケーブルが直付けだったので、組み立て式の家具をもつ人をたいそうがっかりさせたのである。

旧モデルと同様に、新モデルも色はホワイトとミッドナイトの2色展開となっている。ミッドナイトは以前より少し黒に深みが増している。

ある初期の報告によると、ホワイトは旧モデルと同様に木製の表面に置いておくとリング状に木が汚れるという指摘があった。今回のテストではそのような問題は起きなかったが、それでも黒いほうを購入するだろう。アップルの白い生地は時間が経つにつれ、ほこりや摩耗で汚れてしまうことが多いからだ。

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Siriの音声検索にも多くの課題

旧モデルと同様に、セットアップは非常に簡単だ。最新OSにアップデート済みのiPhoneをHomePodの上に掲げると、即座に認識してセットアップが始まる。iPhoneが「Apple Music」にログインしてさえいれば、どの部屋にいるのか、移動しているのかもわかる。

HomePodはSpotify、YouTube Music、TIDAL、Amazon Musicといった音楽配信サービスには対応していないが、Pandora、Deezer、TuneIn Radio、iHeartRadioなどには対応している。AirPlayを使えば非対応のサービスの音楽でもスピーカーから流せるが、これはなかなか面倒な代替案で、iPhoneをもっていないとできない。

Siriの音声検索にも多くの課題が残っている。そのひとつとして、Siriはポスト・カニエ時代のカニエ・ウェストのことが大好きということがわかった。英国のインディーズバンドのGood Morningの曲をかけるよう尋ねると、SiriはYe(カニエ・ウエストの新名)の「Good Morning」をかける。「バンドのGood Morningをかけて」と言っても、結果は変わらなかった。ジェイ・Zの曲をかけるように言うと有名な曲をいくつか流したあと、ジェイ・Zとカニエ・ウェストのコラボ曲をかけ始めるので、スキップしなければならない。

同じ問いかけをした場合、アマゾンのAlexaは難なく英国のバンドであるGood Morningの曲を流してくれた。Google アシスタントでも問題はなかった。これらのサービスが率直に言ってSiriよりうまく機能していることは、比較してみた人なら誰でもわかることだろう。

ただ、Siriを起動するための内蔵マイクは、とても優秀だ。従来のHomePodより2つ少ないかもしれないが、音声認識に関しては違いがわからなかった。部屋の反対側から普通の大きさの声で「Hey Siri」と言っても大丈夫で、音楽が鳴っているときでも反応する。この点は素晴らしい。

Siriはタイマーのセットや天気を尋ねるくらいのことであれば、まったく問題なく機能する。新しいHomePodでは室温や湿度を聞くこともできるし、さらにこれらのセンサーを使ってスマートホーム「Apple Home」に対応したデバイスの設定変更もできる。アップルのインターフェイスが好みなら、素晴らしいと言えるだろう。

しかし、これはずっとこうしたセンサーを内蔵していながら活用していなかったHomePod miniでもできることなのだ。どちらのHomePodもスマートホームの新しい標準規格「Matter」に対応しており、あらゆる最新のスマート端末を機能させられる。

HomePodのプレミアムな価格設定に関しては、あまり気にならなかった。旧モデルより50ドル安い(日本では逆に12,000円高くなった)うえに、アップルはどの商品にも市場で最高レベルの価格を出してくる。

そのスマートスピーカーが、同じようなサイズ感や仕様で「Amazon Echo Studio」より100ドル(日本では14,860円)も高いことは…あくまで数字の上では問題ない。ところが音質を比較してみると、その差は歴然だった。音質には、ここでは触れないでおきたい。

サウンドには課題が山積

本来はスピーカーではなくスマートディスプレイとしてつくられた130ドル(日本では14,980円)の「Amazon Echo Show 8」のほうが、実際に自分の耳で聴いて音がよかったと言っても冗談ではない。HomePodの第1世代と第2世代の間でいったい何があったのかは知らないが、新型HomePodはこれまで体験したなかで最も音が濁っているスマートスピーカーである。

低音は豊かというよりも強すぎるくらいだが、ヒップホップを聴くならパンチが効いていて、さらに情報量がごちゃごちゃと多い。中音域はメリハリを失っているが低音はすべてクリアに聞こえる。なんとも奇妙だ。

これにはハードウェアのダウングレードが影響している。新型HomePodに内蔵されているビームフォーミングツイーターは5個で、旧モデルの7個より2個減っている。これは明らかに、ソフトウェアによる処理で補おうとしたことによるものだ。

旧モデルはプロセッサーとしてiPhoneで採用していたチップ「A8」を搭載していたが、第2世代モデルでは「Apple Watch Series 7」と同じ「S7」を採用している。チップの変更により、最新のHomePodはより多くのバックグラウンド処理を実施し、スピーカーを自分の空間に合わせてチューニングできるようにはなった。それでも物理的なハードウェアの能力不足を補うことはできていないように思える。

音を自分好みに変えたい場合はどうだろうか。そこはアップルに依存している。自分で変えられる部分は、設定で一時的に低音を減らすことぐらいだ。これはApple Musicでカスタマイズしておいたイコライザー(EQ)の設定を無視することになるので、理想的とは言えない。

PHOTOGRAPH: APPLE

それでも複数のHomePodをペアリングすることで、全体的な音質をよくすることはできる。HomePodを左右ペアで使うと、部屋に合わせて音が最適化されるApple Musicの空間オーディオの音で満たされたことには、いたく感動した。

最新モデルの「Apple TV」があれば、HomePodをテレビのスピーカーとして使える。どうせ買うならペアで買うべきだという意見もあるだろうが、600ドル(日本では2台で89,600円)のスピーカーならもっと音がいいものがたくさんある。Dolby Atmos対応のサウンドバーを揃えることだってできるだろう。

競合製品となるアマゾンの「Amazon Echo Studio」「Amazon Echo Show 10」、ましてや標準モデルの「Amazon Echo」と比べると、アマゾン製品のほうが音声アシスタントはもちろんのこと、音がクリアで音質が優れている。グーグルのスマートディスプレイ「Google Nest Hub Max」はより音が優れており、価格も70ドル(日本では16,750円)安い。それに大きなタッチ式ディスプレイを搭載していて、YouTubeの動画を観たりビデオ通話をしたりできる。

スマートスピーカー「Google Nest Audio」(日本では11,550円)を2個セットで購入してステレオスピーカーとして使うと、HomePod1台を買うより100ドル(日本では21,700円)も安く済む。ソノスのスピーカーならエントリーモデルでも低価格で音がよく、2種類の音声アシスタントに対応しており、Apple MusicだけでなくSpotifyも利用できる。

HomePodの特徴的な見た目にこだわらない限りは、アップルのスピーカーであろうとなかろうと、もっと安いスピーカーで同じ機能のすべて、あるいはほとんどすべてを手に入れることができる。プレミアムな価格を払う意志があるとしても、HomePodはアップルにしては珍しく失敗に終わった製品だろう。未来に戻ってたとしても、うまくいかないこともあるのだ。

◎「WIRED」な点
アップルらしいデザイン。どこにでも置ける。電源ケーブルを取り外せる。最新のiOS端末に素早くペアリングできる。ディスプレイが大きくなり、Siriに声をかけたときの反応がわかりやすい。マイクはとてもよく音を拾う。2台を組み合わせてステレオスピーカーとして使える。Apple TVと連携する。空間オーディオに対応。しっかりしたつくり。低音がはっきりしている。

△「TIRED」な点
中音と高音がぼやけている。ほぼすべてのことが低価格な「HomePod mini」でもできる。競合するグーグルやアマゾン、ソノスの製品のほうが優れていて、価格も安い。

WIRED US/Translation by Maki Nishikawa/Edit by Daisuke Takimoto)

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