「バルダーズ・ゲート3」が恋愛に積極的すぎるキャラクターの多いゲームになった理由

Larian Studiosが8月に「バルダーズ・ゲート3」を公開して以来、スピードランナーたちはキャラクターたちと最速でロマンチックな関係を築くための攻略法を追い求めてきた。この恋愛要素の濃さが“バグ”だと判明してからも、プレイヤーたちは飽きる様子を見せていない。
Screenshot from the game 'Baldur's Gate 3' featuring an ornate character posing and holding one finger up
「バルダーズ・ゲート3」には恋愛に積極的なキャラクターが数多くいる。Courtesy of Larian Studios

「バルダーズ・ゲート3」は、Larian Studiosが制作したテーブルトークRPGゲーム「ダンジョンズ&ドラゴンズ」をベースにした、非常に評価の高いロールプレイングゲームである。

Redditでは、このゲームの専用サブレディットで、あるプレイヤーが重要な質問を投げかけた。「何度も質問されていると思いますが、キャラクターたちがみんな性的に興奮している理由はなんなのでしょうか?」

その問いは実際的な問題を指摘するものであった。ほかのゲームなら官能的かどうかは、その人の主観によるところが大きいだろう(あなたが官能的だと感じるものと、わたしがそうと感じるものはおそらく異なるということだ)。

しかし、「バルダーズ・ゲート3」において、これは物語の追加要素に留まらない。鋭い顎をもち血を吸うキャラクターのアスタリオンやミステリアスなキャラクターのシャドウハートをはじめとするパーティーメンバーとのロマンスは、このゲームにおいて重要な人間関係構築の要素なのだ。

キャラクターからの積極的なアプローチ

ゲームが8月に公開されてからまもなく、何人かのパーティーメンバー、特にゲイルは、恋愛においてほかのキャラクターより積極的なことに、ゲームのプレイヤーたちは気付いた。

一部のプレイヤーは、特に恋愛を求めているパーティーメンバーの言動により、自身が気になっているメンバーとの関係構築が難しいと感じた。ほかのプレイヤーはキャラクターからの積極的なアプローチを不快に感じた。1人のプレイヤーは次のように説明している。「呪われたシャドウフォレストを移動しているときに、ゲイルがわたしのことをハンサムでセクシーだと言ってきました。プレイヤーからの入力もなしに、そのように迫ってくるのは少し変な感じがします」

セックスとロマンスは「バルダーズ・ゲート3」のDNAに組み込まれており、Larian Studiosは開発の早い段階からゲームのこうした性的な側面に注力していた。BBCによると、開発チームは音源の録音においてインティマシー・コーディネーターの協力を得たという。つまり、親密な人間関係のシーンの振り付けを考え、俳優や制作側が安全と快適さを感じる環境を維持するために、プロの力を借りたのである。このゲームでは熊の姿になった祭司のキャラクターとセックスすることだってできるのだ。

最短攻略を競うカテゴリーの登場

ゲーム攻略のタイムを競うスピードランナーたちはこの要素を歓迎し、キャラクターをどれだけ早くベッドに連れ込めるかに特化した新しいランカテゴリーをつくった。最速記録をもつプレイヤーのMaeは8月の『WIRED』に取材に対して、最初は「冗談」のつもりだったと話している。「うまくやるプレッシャーはまったく感じませんでした」とMaeは言う。「ただ面白さのためにやって、みんなにも教えようと思っただけです。ちなみに、8分とかでキャラクターをベッドに連れ込めます」

このカテゴリーはすぐに人気を集めたが、Maeは現在も1分58秒という最速記録を保持している。「このゲームの恋愛要素の攻略は、頭の悪い女性たちのハーレムをつくるような男の古臭いイメージとは異なります」とMaeは話す。「旅の仲間たちは、これまでのビデオゲームよりもはるかに感情的な深みを持っていることから特にそう感じます」

とはいえ、この路線への傾倒は「バルダーズ・ゲート3」の開発者たちにとっても少しやり過ぎと感じるほどだったようだ。ゲームディレクターのSwen Vinckeは「TheGamer」に、キャラクターがプレイヤーの好意を得ようと必死になるのは、実のところ機能ではなくバグだったと語っている。

「公開当初の、キャラクターたちが心を許す閾値の設定は低すぎました」とVinckeは話す。「だから当初のキャラクターたちは恋愛にとても積極的でした。本来はそういう設計ではなかったのです。これまでに少なくとも数種のキャラクターの設定を修正しています。さらにいくつかのキャラクターについても修正中です」。目標は、現実の人間関係により近い関係を再現することなのだという。

最初に修正され、ズボンをそう簡単に脱がないようになったキャラクターはゲイルである。(「ゲイルはすぐにそのような行動をとるはずではありませんでした」とVinckeはそのインタビューで話してる)。

修正パッチの「パッチ#4」が11月初めに公開された。そこでは別のパーティーメンバーであるラエゼルの修正が個別に取り上げられていた。「Lae'zelと恋愛関係になるには、彼女から十分に認められるだけでなく、あなたが価値ある存在だと行動で示す必要があります」とLarian Studiosは書いている(コミュニティ内で、Maeを含め攻略の最速記録に挑戦しているスピードランナーは、ラエゼルはいまでも以前と同じ方法で恋愛関係に持ち込めると話している)。

スピードランナーのコミュニティは現在、恋愛要素の攻略において2つの異なるカテゴリーを設けている。パッチ4以前と、パッチ4以降のカテゴリーだ。ただし、パッチ4以降における公式のプレイ記録はまだない。

プレイヤーの行動は“修正”できない

Larian Studiosはプレイヤーが自由に探索できる広大な遊び場を提供した。「バルダーズ・ゲート3」には、パーティーメンバーと恋愛する以外にも楽しめる要素がたくさんある。ゲームの脚本、俳優の演技、複雑な戦闘などだ。Larian Studiosはキャラクターが過剰に欲情するバグを修正した。けれど、プレイヤーのコミュニティは官能的なゲーム体験を追い求め、修正が施されても最速で攻略する別の方法を探している。プレイヤーは“パッチを当てられない唯一の要素”なのである。

Xbox向けのゲームの発売が年内に予定されており、発売されればゲーム機経由のプレイヤーの波がまもなくこのコミュニティに加わるだろう。恋愛要素の最速攻略の盛り上がりは峠を越えたかもしれないが、プレイヤーはまだ飽きていない。

weedmoderというプレイヤーは11月の初めに、ゲーム内で親密な関係になれる熊のキャラクターとの新記録を達成した。50分30秒だった。「weedmoder」からコミュニティへの贈り物は、オンラインに投稿された攻略方法のチュートリアルである。これはどれだけ長く楽しめるかは、どれだけ早く攻略できるかで変わってくることを示している。

WIRED US/Translation by Nozomi Okuma)

※『WIRED』によるゲームの関連記事はこちら


Related Articles
article image
日本語版が12月21日に発売される「バルダーズ・ゲート3」は、23年前のシリーズのリブート作品でありながら、まったく古臭さを感じさせないゲームだ。懐かしいファンタジーの世界観を踏襲しつつ、現代のゲーマーを飽きさせないためのさまざまな工夫が施されている。
Foley artist Joanna Fang
「ゴッド・オブ・ウォー」などに携わった経験をもつ効果音アーティストのジョアンナ・ファンは、物置部屋のような“オフィス”の中で雑多なガラクタを組み合わせ、オーディエンスの感情を刺激する音を生み出す。
Screenshot of "The Legend of Zelda: Tears of the Kingdom" game, featuring a character hang-gliding in the sky over a large concrete sphere
スピードランナーは、ゲームをただプレイするだけでなく、可能な限り速くクリアしてその記録を競い合う。「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」の場合、普通の人が50時間かけてクリアするところを、スピードランナーたちは1時間強でクリアしてしまう。その陰には周到な準備や戦略があった。

未来を実装する「実験区」へようこそ!
会員限定コンテンツの無料トライアルはこちら

最新テクノロジーからカルチャーまで、次の10年を見通すための洞察が詰まった選りすぐりの記事を『WIRED』日本版編集部がキュレーションしてお届けする会員サービス「 SZ メンバーシップ」。週末に届く編集長からのニュースレターやイベント優待も。無料トライアルを実施中!