ChatGPTを“自律型AIエージェント”に変える「Auto-GPT」の使い方

「ChatGPT」を自律型エージェントにつくり変えるプログラム、「AutoGPT」が新たに登場した。これを使えば、いちいち指示を与えなくても、AIが自ら考えて複雑なタスクをこなしてくれる。
ChatGPTを“自律型AIエージェント”に変える「AutoGPT」の使い方
PHOTOGRAPH: FARIZUN_AMROD_SAAD/GETTY IMAGES

グーグルマイクロソフトOpenAIはじめとする多くの企業が人工知能(AI)の分野で優位に立とうとしのぎを削っており、これに伴いAIツールの能力は急速に進化している。毎週のように新しいアプリや技術の進歩が発表されており、AIに対する期待値はますます上がっている。

「Auto-GPT」はこれを象徴する最新のプロジェクトである。「Auto-GPT」は「ChatGPT」の技術を活用して自律的なAIアシスタントをつくり、人がいちいち指示を出さなくても、複数の工程がある作業を自ら遂行する。つまり、ユーザーがアイデアを考えたりフィードバックを与えたりしなくても、手間のかかる仕事の大部分をこなしてくれるのだ。

「Auto-GPT」はコンピュータのローカル環境で動作する。

AUTO-GPT VIA DAVID NIELD

まずChatGPTを使ってできるあらゆることを想像してみてほしい。それらのタスクをAuto-GPTに頼めば、システム自身が意思決定をしてタスクを設定し、自らにフィードバックを与える。コーディングを例に説明しよう。ChatGPTはユーザーが指定した仕様に基づいてブロック単位でコードを生成してくれる。しかしAuto-GPTなら、ユーザーに代わってソフトウェア開発のプロジェクトをすべて管理してくれるのだ。

試しにAuto-GPTにiOSとAndroidの違いについて調査するよう指示した。するとAuto-GPTは目標に基づいて細かな調査タスクをいくつか作成した。ユーザーインターフェース(UI)、利用可能なアプリ、セキュリティとプライバシーの特徴などをそれぞれ調査するというタスクだ。そしてこれらのタスクを個別に実行・分析すると、その結果をあとから参照しやすいようにカテゴリーごとのテキストファイルに保存したのである。

Auto-GPTの活用法は他にもある。それは「ウェブサイト開発者」や「ポッドキャストの調査員」といった特定の役割を与えることである。するとAuto-GPTはその役割に相応しい行動をとり、進捗状況をユーザーに報告する。ソフトウェアを使いこなすには多少の慣れが必要なものの、色々と実験しているうちにどの程度のタスクができるのか分かってくるだろう。

Auto-GPTはウェブにアクセスして最新情報を取得できるほか、過去にとった行動を覚えておくことができる。Auto-GPTのコードは無料で公開されているが、OpenAIのAPIを使うには利用料を支払わなければならない。また最新版の大規模言語モデルである「GPT-4」を使用したい場合は、OpenAIの有料プランに加入する必要もある(加入しない場合、APIで利用できるのは「GPT-3.5」だ)。

「Auto-GPT」は OpenAIが提供する「ChatGPT」を活用するツールだ。

AUTO-GPT VIA DAVID NIELD

Auto-GPTは自律的に仕事を進めている時間が長いことから、予期せぬ方向に進んでしまう可能性がある。ChatGPTが今でも誤情報を生成したり間違えたりすることは周知の事実だが、Auto-GPTの場合、ユーザーがその動作を逐一確認するわけではないので、問題が積み重なり、事態が深刻になる可能性があるのだ。これらのツールは、本当に重要なタスクや大きな影響を持つプロジェクトを安心して任せられるレベルには到底達していないのである。

こうしたツールはむしろ、AI技術を使った進行中の実験なのであり、近い将来に実現するであろうAIの可能性を示している。そういった意味では、今からAuto-GPTを試してみることの価値は高い。しかも、使っている間にもどんどん改良されていくのだ。ほかのユーザーが試していることをネットで軽く調べてみると、ピザの注文からマーケティングキャンペーンの運営まで、さまざまなことが試されているようだ。

「Auto-GPT」のインストールと使用方法

GitHubプロジェクトのインストール方法を知っている人は、すぐにAuto-GPTをダウンロードして使い始めることができる。使用しているOSによって様々なツール(DockerやPythonなど)があるので、知らない場合はぜひネットで検索してみてほしい(詳細な手順が記載された多くのリソースが見つかるだろう)。ここではWindowsのPCでPythonを使ったインストール方法を解説する。さらなる情報が必要な方は、まずAuto-GPTの公式説明資料を確認してみてほしい。

WindowsのPCでPythonを使ってAuto-GPTを起動するには、まずGitPythonをインストールする必要がある。Pythonのインストール時に、「Add python.exe to PATH」のオプションを有効にすることを忘れないように。インストールの手順は複雑ではないが、何か困ったことがあればPythonのウェブサイトを参照してほしい。役立つ情報が豊富に用意されている。

「Auto-GPT」は何をしているかを表示してくれる。

AUTO-GPT VIA DAVID NIELD

次にGitHubからAuto-GPTをダウンロードする。最新版のリンクを辿ってzipファイルをダウンロードしよう。これを解凍したら「.env.template」というファイルを複製し、ファイル名を「.env」に変更する。このファイルをテキストエディタで開くと、「OPENAI_API_KEY=your-openai-api-key」と書かれた行があるはずなので、「your-openai-api-key」の部分を、OpenAIのアカウントから取得したAPIキーに書き換える。

APIキーはこのページから取得できる。ChatGPTのAPIは数回までしか無料でアクセスすることができないので、支払い方法の設定を推奨する。最新の価格はこのページから確認できる。この記事の執筆時点の利用料は、1,000トークン(処理される情報の単位)あたり数セントだ。支払い方法を設定する際、Auto-GPTの利用料が予算を超えないよう、限度額を設定することも可能だ。

「.env」ファイルを保存して閉じたら、「Auto-GPT」のフォルダを右クリックして「ターミナルで開く」を選択する。次にターミナルで「pip install -r requirements.txt」と入力して「Enter」キーを押すと必要なライブラリがインストールされる。これが終わったら「python -m autogpt」と入力して「Enter」キーを押すとAuto-GPTが起動する。そこからはAuto-GPTに自律的な作業を任せることができる。やってほしいことを指示するだけで仕事を始めてくれるのだ。

指示を出すとAuto-GPTの考える作業の流れが画面に表示され、実行するアクションの確認を求められる。アクションをまとめて承認したい場合は「y-x」と入力しよう。「x」の部分には、個別の承認なしでボットが進めることができるアクションの数が入る(ChatGPTへリクエストするたび、いくらか料金が発生することは気に留めておこう)。タスクが完了する前に動作を終了したい場合は「Ctrl+C」のコマンドを使えばいい。

「AgentGPT」はブラウザから利用できるAIアシスタント。

AUTO-GPT VIA DAVID NIELD

もし以上の手順を難しく感じ、もっとシンプルなものを試したい場合は、Auto-GPTをベースにした類似のプロジェクトである「AgentGPT」を使ってみよう。AgentGPTはブラウザ上で動作するので、インストールの必要はない。Auto-GPTほど高度なものではないが、初心者でも使いやすく、こうした自律型AIエージェントができることの大枠を理解することができる。

Auto-GPTと同じく、AgentGPTを使うにはChatGPTのAPIキーが必要だ(こちらも使用量に基づいて利用料が発生する)。アプリ左側の「設定」をクリックして現れる画面にAPIキーを入力しよう。名前とターゲット(目標)を設定し、「エージェントを実行」のボタンをクリックすると、AIエージェントが起動する。AIエージェントが生成・完了したタスクは、画面右側に表示される仕組みだ。

WIRED US/Translation by Nozomi Okuma/Edit by Ryota Susaki)

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