COROSの「APEX 2 Pro」はランナーにとって使いやすいフィットネストラッカーだが、ナビゲーション機能はもの足りない:製品レビュー

COROSから登場したフィットネストラッカー「APEX 2 Pro」で作成できるトレーニングプランは、ランニングのレベルアップに役立ってくれそうな充実の内容だ。しかし、地形図を手動でダウンロードする必要があるなど、アウトドア向けのナビゲーション機能は使いづらい部分もある。
「APEX 2 Pro」レビュー:本格的なランナーのための手ごろなフィットネストラッカー
PHOTOGRAPH: COROS

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こんな問題を抱えている人は読者にいるだろうか。スノーボードをしているときは、ずっと動き続ける。腰を下ろしてボードを装着してから上半身を起こし、立ち上がる。ジャンプ台から飛び降りたらクリップを外して歩いて上まで戻り、岩で囲まれた狭いシュートを滑降し、ジョン・セカダを大声で歌いながらハーフパイプに入り込む。

このように動き回っているなか、巨大で高価なガーミンのフィットネストラッカーをテストしていると横のボタンやタッチ画面に触れてしまい、誤って計測を停止させたり開始させたりすることがしばしばある。

ところが、COROSのフィットネストラッカーにはロック機能が付いている。真ん中のダイヤルボタンを長押しすると、アクティビティの記録が開始され、再び3秒間ほど長押しすると計測が止まる。何て賢いのだろうか。こうしたささやかな機能はこのフィットネストラッカーに搭載された機能のひとつにすぎないが、かなり重宝する機能だ。このおかげで、高価なフィットネストラッカーと比べても、COROSは個人的なお気に入りのなかにはいる端末となった。

COROSは、ほとんどのメーカーが思いつかないような製品をつくり出してきた。わたしのようなスポーツ好きは、製品の見た目を必ずしも気にしてはいない。個人的には、画面が大きくて明るく、鮮明なことは、毎晩のように充電しなくてもいいことほど重要ではない。もっと快適で、使い勝手がよく、着け心地がいい端末があれば喜んで安いほうを購入する。

本格的なランナー向けのフィットネストラッカー

COROSの「APEX 2」シリーズは2022年末に発売され、通常モデル「Pro」モデルがある。今回テストしたのは「APEX 2 Pro」で、通常モデルと比べると100ドルほど高い(日本の場合は18,590円高い)。

また、Proのほうがわずかに大きく、2周波GPSが搭載されているので正確に現在地を表示してくれる。個人的に好んでいるナイロンバンドも備わっているので、シリコンバンドのように汗がたまることはない。Proの画面の直径は46.5mmと通常モデルよりも大きいが、COROSの「Vertix 2」ほど大きくもなければ重くもない(Vertix 2の画面の直径は50.3mm)。

2周波GPSによる位置情報は重要だ。というのも、COROSのフィットネストラッカーにはパーソナライズされたスポーツ科学プラットフォーム「EvoLab」が採用されているからだ。EvoLabは、「Garmin Connect」の競合製品となっている(しかも「Fitbit Premium」とは異なり、すべてのCOROS製品で無料で使える)。

COROSはこれまで、長距離選手のデジレ・リンデンや山岳スキー選手のキリアン・ジョルネ、そして「マラソン界の絶対王者」と言われるエリウド・キプチョゲなどの著名なアスリートをアンバサダーに任命してきた。これによって、本格的なランニングに取り組むユーザーたちを巧みに獲得してきた。

また、EvoLabの機能を解除するには、ランニングセッションを記録しなくてはならない。もしランナーとして成長したいと思っているなら、EvoLabのようなプログラムは「Apple Watch」に搭載されている機能よりも役に立つ。もちろん、いまのApple Watchには便利なランニングの数値を多く測定してくれるようになったが、次のランニングに生かせるような包括的な指標は示してくれない。

PHOTOGRAPH: COROS

精緻な追跡機能と充実したトレーニングプラン

EvoLabによる計測機能を解除するには、週2~3回のランニング(そして個人的に苦手な規則正しい睡眠をとること)を約2週間続ける必要があった。解除されたところで、推奨されたトレーニングプランにざっと目を通してみたところ、とにかく素晴らしい(プランの例は、オンライン上で確認できる)。

現在、速いペースで楽に走れるようになるために、ランニングの速度を上げるトレーニングに取り組んでいる。このトレーニングは、長い距離をゆったりとしたペースで走る有酸素ランニングと、短距離を全速力で走る無酸素ランニングを繰り返すものだ。

ある日のランニングでは、0.1マイル(約160m)を全速力で走り、次の0.4マイル(約640m)をリカバリー充てた組み合わせを繰り返す。つまり、限界のペースで0.1マイルを走り、0.4マイルはジョギングするのだ。APEX 2 Proは、速く走るタイミングと目標の速度範囲から外れた際に通知音で知らせてくれる。そして、リカバリーするための速度で走るときが来ると、同じく通知音で指示してくれるのだ。これがどれほど優れた技術であるかを説明しよう。

0.1マイルを走りきる間に、APEX 2 Proは数十もの信号を宇宙と送受信する。そして、リアルタイムで指示を出せるほど高速でそれを処理するのだ。

ストップウォッチを手にして陸上トラックに立っているコーチほど正確とは言えないが、使い勝手は非常によく、安価で手に入る。より詳細なランニングの測定値が必要であれば、「COROS POD 2」(99ドル、日本では14,850円)を追加することも可能だ。これは、ガーミンが発売している「ランニングダイナミクスポッド」とよりも少し高い。

ルーティン・ランニングで、速度と心拍数をトラッキングしたところ、APEX 2 Proと「Apple Watch Ultra」(これも2周波GPSによる位置情報を利用している)に食い違いはなかった。ただし、APEX 2 Proのほうが、ランニングを開始してからGPSを確認できるようになるまで、少し時間がかかっていたようだ。

ナビゲーション機能は使いづらい

ガーミンを所有する最大の理由のひとつは、ナビゲーション機能だろう。わたしのように、きまぐれで注意散漫な方向音痴の場合、携帯電話の電波が届かなくても使いやすい地図の存在は非常に重要だ。APEX 2 Proとガーミン製品のナビゲーション機能は、まったく比べものにならない。ガーミンはもともとナビゲーション機器を手がける企業であり、同社の地図とソフトウェアの使いやすさはいまも健在だ。

一方でAPEX 2 Proのナビゲーション機能は、かなり使いづらい。標準搭載されている地図は、液晶ディスプレイ上でかなり見やすく簡単にスクロールできる。だが、等高線の入った地形図は別途ダウンロードしなくてはならない。

これに気づいたのは、スノーボードをしている最中だった。ガーミンの「epix」であれば、アクティビティの記録を間違ってつけたり消したりすることはあるかもしれない。だが、ガーミンのフィットネストラッカーには、近くのリゾート地にあるスキー場の地図があらかじめ搭載されているので、ユーザーは何もする必要がないのだ。

APEX 2 Proの場合は、32GBの地形図を手動でダウンロードしなくてはならないのだ。これは、マップ化されたGPSのルートを共有する「GPX」データを10個ほど保存できる容量だ。音楽配信サービスとも連携していないので、いまだにこんなことをやっている人がいるかは定かではないが、そMP3ファイルを直接保存するなら、その容量と共有しなくてはならない。

音楽をダウンロードしなければいけないのは、個人的には気にならない。電波が届く範囲内であれば、スマートフォンを使って音楽やポッドキャストを聴けるし、スノーボードや登山、ハイキングをしているうちに圏外になってしまったら、何も聴かなければいいだけの話だからだ。

タッチレス決済も搭載されていないが、そもそもこれに対応している店など山奥にはない。ただ、個人的には落下検知や緊急SOSサービスといった機能が搭載されていないことは残念に思う。ひとりでアウトドアに行く女性にとって、こうした機能が搭載されていないのは不安だ。

一方で、優位だと認めざるをえない要素もAPEX 2 Proにはある。それは、ガーミンのEpixやApple Watch Ultraといった同じ価格帯のフィットネストラッカーと異なり、APEX 2 Proの充電は週末のキャンプ旅には十分もつということだ。それどころか、このフィットネストラッカーは、ウォーキングやランニング、スノーボード、そしてロッククライミングといった複数のアクティビティを計測しながら数週間はもった(3週間経ったところで、数えるのをやめた)。

実際のところ買いなのか?

アウトドアの愛好家たちは、愉快でひょうきん者が多い(そうでなければ、他人に見える場所で用を足すことなどできない)。COROSのディスプレイは、ガーミンのフィットネストラッカーよりも面白く、よくできている。ワールドカップを観戦していたときには、ディスプレイの表示を「Game Time」に設定していた。このモードにすると、さまざまな国旗の周りをサッカーボールが転がるのだ。

振り返ってみると、アウトドアスポーツにつぎ込む時間とエネルギーが最も多かったもっと若いころにいちばんお金がなかったことは、人生における不幸な事実と言える。ガーミンの最も人気のあるモデルのひとつが「Instinct」である理由には、こうした事実も関係しているのだろう。長もちするバッテリー、さまざまなスポーツ種目に対応したトラッキング、ナビゲーションといった必要な機能は備えているが、明るい画面やSpotifyとの連動など、人によっては追加機能と思うものはAPEX 2 Proには付いていない。

COROSのフィットネストラッカーは、APEX 2 Pro(499ドル、73,700円)でも標準モデル(399ドル、57,860円)でも、かゆいところに手が届くような機能が備わっているように思える。いくつかの点で妥協しながらも、必要な機能をまったく法外とは言えない価格帯で提供しているのだから。

◎「WIRED」な点
驚異的なバッテリー持続時間。人気のスポーツ種目に対応したトラッキング機能が多く備わっている。2周波GPS搭載。ランニング指標が詳細。パーソナライズできるスポーツ科学プラットフォームが正確。ディスプレイを見ているのが楽しい。手ごろな値段。

△「TIRED」な点
音楽配信サービスとの連動やタッチレス決済に対応していない。落下検出機能、緊急SOSサービスが未搭載。地図をダウンロードして使用するのがとてつもなく大変。

WIRED US/Translation by Miho Amano, Galileo/Edit by Naoya Raita)

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