「FINAL FANTASY VII REBIRTH」はファンを未知の旅に連れ出してくれる傑作:ゲームレビュー

スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY VII REBIRTH」が2月29日に発売される。広大なフィールドで繰り広げられる輝きを増したキャラクターたちとの探索は、古典の再構築に価値があることを証明している。
A video game character fighting a large monster
© SQUARE ENIX CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA / ROBERTO FERRARI

2020年発売の「FINAL FANTASY VII REMAKE」から始まった「FINAL FANTASY VII」のリブートサイクル。これは、ひとつのプレイステーション用ゲームを3部作へと変貌させ、史上最も人気のあるRPGの物語を改めて伝えようとする試みだ。クリエイティブの観点からすると、決して容易なことではない。

この3部作の第1弾となったのが「REMAKE」だ。スクウェア・エニックスが1997年に発表した大ヒット作の最初の部分をより精緻に時間をかけて表現することで独立した1本のゲームに仕立て、成功した。スリリングで楽しい本作で、クラウド・ストライフやエアリス・ゲインズブールのようなキャラクターはリアルな外見へと変貌を遂げた。

これ受け、第2弾となる「FINAL FANTASY VII REBIRTH(ファイナルファンタジーVII リバース、FF7リバース)」への期待は高まった。この作品ではミッドガルからガイアの全体が舞台となり、神羅カンパニーによる惑星規模の策略と陰謀が絡んでくる。とはいえ、「FINAL FANTASY VII REMAKE」でスクウェア・エニックスはすでに“不可能を可能にした”実績がある。つまり、ファンがよく知っている物語から予想もしなかった展開を生み出し、エンドロールで「The unknown journey will continue(未知の旅は続く)」と予告していたのだ。「REBIRTH」で同社はその“約束”を守り、今後発売されるすべてのファイナルファンタジーの新たな基準を打ち立てたと言える。

自由度を活かし、新要素やアレンジを追加

2月29日に発売される「FINAL FANTASY VII REBIRTH」のストーリーは、「REMAKE」と地続きになっている。クラウドたちはミッドガルを脱出し、セフィロスを追う。ジュノンでのパレード、ラスベガスのようなゴールドソーサー、コスモキャニオンでのスピリチュアルなクエストなど、オリジナルと似たような行程ではあるものの、「REBIRTH」は自由度を生かして新要素やアレンジを加えている。

本作は、あらゆる面でつくり込まれている。世界はふたつの地域に分かれており、巨大なワールドマップ、通信塔、サイドクエスト、チョコボの捕獲、モンスターとのバトル、新しいカードゲームなど、多くの新体験が待っている。プレイヤーの望むものが十分に備わっているのだ。メインストーリーを最速で攻略したいなら、パーティで時間を過ごすサイドストーリーをスキップしても問題はない。「FINAL FANTASY VII REBIRTH」はグラフィックや操作を洗練させるだけで終わらせることもできたはずだが、生き生きとした世界を切り開いている。

バトルシステム、スキル、敵などは、一見すると「REMAKE」とほぼ同じに感じられるが、「REBIRTH」ではさらに進化を遂げている。スキルツリーのシステムが登場したことでキャラクターの動きをカスタマイズできるようになった。また、パーティ編成の幅が広がったことで、より多くのバトルスタイルや組み合わせを試すことができる。

チームワークはファイナルファンタジーの軸だ。バトルでは、キャラクターがパーティを組んでチーム技を繰り出せる。バトル以外でも、新しい人間関係のシステムが追加され、例えばゴールドソーサーのデートイベントでどの相手を選ぶかによってストーリーが分岐することもある。

心和むキャラクター同士の交流

「FINAL FANTASY VII」には、ティファやエアリスをどれだけ好きかによって、その後の成り行きが左右される隠れたシステムがあった。理論的に新しいアイデアではないが、「FINAL FANTASY VII REBIRTH」ではこの要素が強調され、いいアクセントになっている。

クラウドと仲間たちは、時間をかけて個別の会話を重ねるなかで関係を深めていく。このような瞬間はささやかなものだが、心を和ませてくれる。彼らは運命に翻弄された見知らぬ者同士の集団として行動するのではなく、実際に互いを大切に思い合っているように見える。

交流の場が増えたことで、カリスマ性をもったキャラクターたちの輝きが増した。オリジナルは主にクラウドの視点だったが、プレイヤーはバレット、レッドXIII、エアリス、ティファらも単独で操作できるようになった。キャラクターのバックストーリーも新たに肉付けされ、オリジナルよりゲームに深みを与えている。バレットが涙を隠すためにサングラスをかけたり、レッドXIIIが隙あらば自分の嗅覚について誇らしげに語ったり(クラウドがにおうといじったりする)、ささいな瞬間にきらりと光るものがある。

「FINAL FANTASY VII」のリブートシリーズではゲームの世界と勢力について、より詳細な説明がなされるよう配慮されている。黒マテリアは間違いなく元の「FINAL FANTASY VII」のマクガフィンだが(世界を終焉させるオーブなんて、ヒーローたちに戦う理由を与える以外の目的で存在するだろうか?)、今回は実際に意味がある。ライフストリームのような概念も同様で、「REBIRTH」ではかなり詳しく説明されている。

「FINAL FANTASY VII REBIRTH」は、まるで日常を切り取ったゲームのようだ。町の人々のためにおつかいをしたり、チョコボに乗って野原を歩き回ったりして時間を費やすことができるほか、クラウドに水着を選んだり、カードゲームに参加したりするストーリーミッションもある。その世界は、コミカルなほどの大剣でモンスターを狩るときでさえも居心地がいい。

「FINAL FANTASY VII REBIRTH」は、古典の再構築に価値があると証明している。リブートとして素晴らしいだけではない。ここ数年間で最高のファイナルファンタジーのゲームだと言っていい。

WIRED US/Translation by Rikako Takahashi, Edit by Mamiko Nakano)

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