グーグルの「Pixel Tablet」は複数ユーザーを登録できる点が使いやすく、性能にも満足できる:製品レビュー

グーグルのタブレット端末「Pixel Tablet」が発売された。ホルダーも含めた液晶ディスプレイの使い心地はよく、大画面で作業効率もアップした。しかし、純正アクセサリーが用意されていないことやバッテリー持続時間の懸念など、気になる点もある。
グーグルの「Pixel Tablet」は複数ユーザーを登録できる点が使いやすく、性能にも満足できる:製品レビュー
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グーグル「Pixel Tablet」を2022年に発表したとき、わたしは不信感を抱いた。スピーカーとしても使える充電ホルダーに、磁石でくっつく500ドル(日本では79,800円から)のAndroidタブレット端末だなんて。大げさにもほどがある。この製品に真新しさは感じられなかった。

アマゾンには、安く手に入れられる「Fire」シリーズのタブレット端末を「Echo Show」シリーズのように切り替えて使える充電スタンドがずっと前からあった。そして、グーグルのタブレット端末は、これまで失敗作ばかりだったじゃないかとも思ってしまったのだ。

しかし、新たに登場したPixel Tabletを2週間ほど使ってみたところ、嬉しい驚きがあった。我が家には3台のグーグルのスマートディスプレイ「Google Nest Hub」が3年以上前からあり、1台は寝室に、1台は玄関に、1台はキッチンに設置しているが、ほとんどディスプレイに触れたことはない。妻もわたしも、「Google アシスタント」にその日の天気を尋ねたり、スマート電球やテレビを操作したり、音楽を再生したりする。だが、ディスプレイには特に利便性を感じていなかった。恥ずかしくなるような写真が頻繁に表示される機能があるだけだと思っていた。しかし、Pixel Tabletは違ったのだ。

タブレット端末と充電スピーカー ホルダーをソファから手が届く位置に設置してみたが、これまで以上に使いやすくなっている。スマートホームの操作はホルダーに取り付けたままでできるし、妻がテレビ画面でリアリティ番組を観ている間は、タブレットをホルダーから取り外して自分の手元に引き寄せ、使用することもできる。

スマートフォンが手元になくても通知を確認できるし、週末に行きたい中華料理の店をGoogle マップで探しておくことも可能だ。これまでとまったく違う画期的なデバイスというわけではない。だが、Pixel Tabletはどんなリビングルームにもぴったりで、これまであったほかのスマートディスプレイと比べても格段に便利に使える。

PHOTOGRAPH: GOOGLE

純正アクセサリーはほとんどない

11インチの大きさを誇るPixel Tabletの背面は、光沢のないナノセラミックコーティングで仕上げられており、手触りがいい。ディスプレイの周りにはめ込まれたベゼル(画面の枠)は、やや幅広いが均一だ。ベゼルの幅が狭いと、手で持つときに指が画面にかかって邪魔なので個人的にはうれしい。色は、Porcelain、Hazel、Roseの3色が用意されており、わたしはRoseを選んだ(日本ではPorcelainとHazelのみ)。

精細かつ色鮮やかな液晶ディスプレイは、コントラストの表現が素晴らしい。Disney+で映画『スパイダーマン2』を再び観たが、画質はかなり高い。

搭載された4つのスピーカーにも不満を感じることはなかった。本体からもかなり大きい音量が出る。だが、ひとりで映画や音楽を再生したい場合は、ヘッドフォンジャックがないのでワイヤレスイヤフォンとペアリングしなくてはならない。

端末だけに焦点を当てると、Pixel Tabletには上位モデル相応の機能が備えられておらず、飛び抜けたよさはない。有機ELディスプレイは搭載されておらず、画面のリフレッシュレートも120Hzを下回っている。また、通信回線に対応している端末も用意されていなければ、スタイラスペンも搭載されておらず、キーボードも付いていない。とはいえ、サードパーティ製のアクセサリーとペアリングすることは可能だ。このレビューも、Pixel TabletにロジクールのBluetoothキーボードを接続して書いている。

だが、純正のキーボード付きケースがないので、膝上テーブルにPixel Tabletを置いてこのレビューを書いた。そして、グーグルから発売されている純正のケースを使って、画面をさまざまな角度に調節しているのだ。タブレット本体にはスタンドが搭載されていないので、このケースはあったほうがいい。

マイクロソフトの「Surface Pro」シリーズや、「Nintendo Switch(有機ELモデル)」のように、スタンドがあればいいのにと思ってしまった(スタンドを付けるとスピーカーとうまく接続できなかったのかもしれないが、詳細はのちほど記す)。キーボードが付いていないことを除けば純正のケースに問題はないが、電源ボタンと一体化した指紋認証センサーの部分には、もう少し広めの穴が空いていてほしかった。

大画面のおかげで作業効率がアップ

Pixel Tabletの特筆すべき特徴はソフトウェアだ。グーグルは、タブレット端末におけるAndroidの使用体験を改善するために50以上のアプリを1年かけてアップデートし、サードパーティの開発者にもそれに従うよう促してきた。「Gmail」の2ペイン表示や、デスクトップPCのようなデザインに変更された「Google Photos」など、Androindアプリは広くなった画面上のスペースを利用して、より多くの情報や機能を表示できるようになったのだ。

また、「WhatsApp」では、電話アプリから強制的にログアウトされることはなくなり、端末と連動して動作するようになったと同時に、2ペイン表示にも対応している。そして、「Google Chrome」を起動するとモバイル版のウェブサイトではなく、デスクトップ版のウェブサイトが標準表示される点は、特に気に入っている点だ。

とはいえ、タブレット端末用に最適化されていないアプリも当然ある。例えば、モバイル版「Slack」を大画面で開くと使いものにならないし、Instagramもタブレット端末起動すると見た目が悪くパッとしないことで悪名高い(iPadでさえそうだ)。また、FacebookやTwitterのように、iPadOS版では最適化されているアプリも、Pixel Tabletではうまく表示されないのだ。これらのプラットフォームではモバイル版のアプリが表示され、横に黒みが残っている。

それでもPixel TabletのUIは、これまで発表されてきたAndroidタブレットと比べてかなり使いやすい。ホーム画面には、よく使うアプリを保存できるタスクバーがある。どのアプリを使っている最中でも、画面の下から上にドラッグしてタスクバーを呼び出し、お気に入りのアプリを起動することが可能だ。お気に入りのアプリのひとつを画面の片側に置いて、別のアプリを起動するのも簡単にできる。レビューを書いているいまもこの機能を使っている。

iPadや「OnePlus Pad」をはじめとする、ほかの新しいAndroidタブレットほど、マルチタスクに適しているのだろうか。そんなことはないが、それでもちょっとした作業をするには十分だ。ここで改善してほしい機能について書いておこう。Google Chromeで新しいタブを開くときは、手動でタップをしなくていいように、アドレスバーにカーソルを最初から置いてほしい。

グーグルのスマートフォンのフラッグシップモデルである「Pixel 7」と同じく、Pixel Tabletには「Tensor G2」チップセットと、8GBのRAMが搭載されている。これによって、Google アシスタントを使用した音声入力や音楽認識の「この曲なに?」、そして「レコーダー」アプリといったグーグルのスマート機能の多くがPixel Tablet上で使えるようになったのだ。とはいえ、これらの機能はスマートフォンで使ったほうが利便性は高い。

また、Tensor G2と8GBのRAMが搭載されたことで、グーグルの高度な画像処理機能をPixel Tablet上でも利用できることを意味する。前面と背面に搭載された8メガピクセルのカメラで撮影された写真の画質は、タブレット端末にしてはかなりいい。そして、1080pの画質を誇るビデオ通話の画質も優れている。

ちなみに、「Google Meet」でビデオ通話をする際にタブレットを充電スピーカー ホルダーの上に乗せると、iPadでいうセンターフレーム機能と同じような自動追従機能が作動するので、自分の顔が画面の中央から外れない。これはかなりうまく機能するが、充電スピーカー ホルダーはリビングに設置されており、ビデオ通話をするにはあまり向いていない角度なので、今後この機能を使う機会が何回あるかはわからない。きっとビデオ通話は、ホルダーから取り外してするような気がする(その場合は、自分の手で顔を画面内に収めなくてはならない)。Google Meet以外でこの機能が使えないのは残念だ。

着脱にはコツが必要

同梱されている充電スピーカー ホルダーの素材には、リサイクルプラスチックが使用されている。また、ホルダーの見た目は、Google Nest Hubからディスプレイを引きちぎって、スピーカー部分だけが残されたかのようだ。

ホルダーは単体では機能しない。Pixel Tabletをマグネットで固定して接続すると充電がはじまる。また、タブレット本体から音を鳴らしているときに接続すると、本体よりも音質が優れているホルダーからの出力に切り替わるのだ。

PHOTOGRAPH: GOOGLE

取り外しには、やや慣れがいる。妻がはじめてタブレットを取り外そうとしたときにはホルダーがそのまま離れずについてきて、ケーブルが張ったときに外れた。スムーズに取り外すためには、タブレットの側面を持って、上半分をうしろに傾けるといい。一度コツをつかめば、あとはラクに取り外せるようになる。

ホルダーのスピーカーの音量は、中くらいの大きさの部屋には十分だ。サイズの割に、驚くほどしっかりとした低音が出る。最大音量をわたしのもっている第1世代のGoogle Nest Hubと比べてみたが、Pixel Tabletのスピーカー ホルダーのほうが豊かに聞こえた。

ホルダーにタブレットをセットした「ハブモード」では、ディスプレイに写真を表示したり、おしゃれな時計のデザインを選択したりできる。Google アシスタントに部屋の反対側から声をかけたが、タブレットに搭載された3つの遠距離マイクが音を拾ってくれた。

個人的にはロック画面でGoogle Homeのアイコンをタップできる点が気に入っている。これをタップすることで、スマートホームデバイスの基本的な操作ができ、シーリングファンや証明、テレビのオン・オフが簡単にできるようになる。これもすべて、グーグルがGoogle Homeアプリの設計を変えてくれたおかげだ。

ハブモードなら、カメラ付きドアベルや、Wi-Fi接続のセキュリティカメラの映像を確認することができる。この機能は、不審者にカメラの映像が観られないように、タブレットがホルダーと接続されていないときは無効化される。タブレットがホルダーに取り付けられているときは、誰でもGoogle アシスタントに話しかけることが可能だ。しかし、個人的な情報を閲覧できるのはPixel Tabletに登録されているユーザーで、指紋認証でロックを解除しなくてはならない。

バッテリー持続時間と寿命が心配

個人情報の話の流れで、Pixel Tabletの素晴らしい点をひとつ挙げたい。それは複数のユーザーを登録できる点だ。タブレットには最大8つのプロフィールを登録できる。そして、ディスプレイをタップするだけでほかのユーザーのプロフィールに切り替えることができ、それぞれのユーザーがダウンロードしたアプリやレイアウト、壁紙、ウィジェットが表示されるのだ。プロフィールはそれぞれ指紋認証で保護されている。

子どものアカウントも設定することができ、子ども用のアカウントではスクリーンタイムを制限したり、アプリやウェブサイトをブロックしたりするペアレンタルコントロールが用意されている。

妻もPixel Tabletを試せるように、彼女のプロフィールも設定しておいた。我が家に届くガジェットを試したがることはめったにないが、驚くことが起きたのだ。ある日、わたしがテレビでゲームをしていると、妻がPixel Tabletをホルダーから外して、そこにYouTube動画をキャストし始めたのである。それも、ノートPCで「The Sims 4」をプレイするのと同時にだ。衝撃だった。Pixel Tabletは「Chromecast」が内蔵されたほぼ唯一のタブレットなので、スマートディスプレイと同じように、ほとんどのコンテンツをキャストできるのだ(サポート対象外のNetflixは除く)。

妻にテレビを占拠されることが多いので、わたしもすぐにこの使い方をするようになった。スマートフォンは使わずに、Pixel Tabletの大きな画面でネット掲示板「Reddit」を閲覧したり、ニュースをチェックしたりするようになった。Pixel Tabletをホルダーに取り付けたときの角度を調整できればいいのにと思ってしまう。一応、グーグルから認証を得たサードパーティー製のアタッチメントが、25ドル(約3,600円)で発売されているのを発見した。

いちばんの懸念点はバッテリー持続時間だろう。わたしはいつも、充電するときにタブレットをホルダーに取り付けるので、詳細な時間を測定するのは難しい。4時間ほどずっと使い続けると、バッテリーの残量90%から45%に下がっている。だいたいの用途にはこれでも問題なさそうだが、すばらしいとは言えない。

個人的にはバッテリーの寿命に問題を感じている。常にフル充電にしておくと、バッテリーの劣化は早くなるだろう。このためグーグルは、バッテリー最適化ソフトウェアを追加し、タブレットの充電が90%で停止するようにしてバッテリーの劣化を緩やかにしている。だが、1年間、毎日のようにネットサーフィンやストリーミングサービスを再生して、ホルダーへ取り付け充電していたら、バッテリーがどれだけ劣化しているかがわかるだろう。タブレットのサポート期間は十分に長く、グーグルはすでに3回のOSアップデートと、5年間のセキュリティ・アップデートの提供を約束している。

Pixel Tabletが手元にやってくる前は、グーグルがスタイラスペンをつけなかったことに対して少しイラッとしていた。すぐに仕事環境をつくることができるキーボード付きケースがないことにも腹を立てていた。せめてスタンド付きのケースが同梱されていればよかったのに、と思ってしまったのだ。こうした付属品が一緒に付いてくればいいのにといまも思う。だが、Pixel Tabletは家で使う分には十分に役立っている。ホルダーに取り付けたままでも、取り外して手元で使うにも、非常に使いやすいタブレット端末なのだ。

◎『WIRED』な点
充電スピーカー ホルダーのおかげでスマートディスプレイ、そして持ち運び可能なPCとして機能するAndroidタブレット。満足できる性能。液晶ディスプレイは鮮明。充電スピーカー ホルダーと本体のスピーカーの音質は申し分ない。大幅に改善されたAndroidタブレットのOS。複数のユーザーを登録できる点は素晴らしい。

△『TIRED』な点
充電スピーカー ホルダー上で角度を調節できない。長期的なバッテリー持続時間には懸念がある。純正のスタイラスペンやキーボードは用意されていない。本体にはスタンドがない。有機ELディスプレイは搭載されておらず、リフレッシュレートも120Hzを下回る。ヘッドフォンジャックがない。Netflixはキャストできない。

WIRED US/Translation by Taeko Adachi/Edit by Naoya Raita)

※『WIRED』によるタブレットの関連記事はこちらグーグルの関連記事はこちら


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