GoPro「HERO11 Black」は、“縦動画”や星空の撮影機能も手に入れた:製品レビュー

GoProのアクションカメラの最新モデル「HERO11 Black」。デザインこそ旧モデルから大きくは変わっていないが、新しいセンサーによって撮影できる画角の選択肢が増え、星空の撮影にも適した機能も搭載されるなど正常進化を遂げている。
GoPro Hero 11 Black
PHOTOGRAPH: GOPRO

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アクションカメラの代名詞とも言える「GoPro」は、『WIRED』がおすすめするアクションカメラでトップの座を守り続けている。だが正直なところ、GoProをアクションカメラとして使う機会は個人的にほぼない。実際にそういった人は少なく、GoPro側もそれをわかっているようだ。

この傾向は、出先で見かける使用例とも一致している。ほとんどの人は、ヘルメットや胸にマウントしてGoProを使っているわけではない。

それでもGoProの新モデル「HERO11 Black」は、スノーボード好きの同僚が言うように「ゲレンデを爆走」する人に向けたアクションカメラである。しかし、GoProはアクションカメラである以前に、軽量で使いやすく、素晴らしいカメラなのだ。

今回の新モデルでは、TikTokなどのソーシャルメディア向けに縦動画を撮影しやすい新しいセンサーが搭載された。また設定がシンプルになり、バッテリーもちもよくなるなど、ユーザーにとってうれしい機能が追加されている。

編集の幅を広げるセンサー

HERO11 Blackを「HERO10 Black」と並べて比較してみると、見た目の違いは側面の青い数字だけだ。ボディ自体にはこれ以外の変更は加えられていないので、前のモデルで使っていたアクセサリーやレンズフィルター、モジュラーなどのアドオンはHERO11でも使用できる。

虫眼鏡でも使わない限り「iPhone 13」との違いがわからない「iPhone 14」とは違って、HERO11 Blackにはユーザーから歓迎されそうな変化がある。最もわかりやすい変更点は、新型のセンサーだ。

新しいセンサーのアスペクト比は8:7で、縦方向にやや大きくなっている。以前のモデルは16:9と4:3で撮影が可能だったが、今回のHERO11から撮影可能になった8:7のアスペクト比は縦動画の撮影に適している。

8:7で撮影した後、動画を投稿するソーシャルメディアに合わせて縦長に調整できるので、ティックトッカーの負担は減るだろう。また、この画角で撮った動画は、わたしたちが慣れ親しんだ16:9に調整して共有することも可能だ。

PHOTOGRAPH: GOPRO

個人的には縦動画は好きではないが、人気があることは知っている。縦動画を撮りやすくなったことで、GoProはより多くの人が使いやすいカメラになったのだ。

気が進まなくても、プラットフォームによっては縦型に切り抜く必要性に迫られるときはある。もちろん、以前のHEROシリーズを横向きにして撮影することも可能だが、この手法で撮った映像は縦動画にしか使えない。

また大きくなったセンサーによって、GoProは「HyperView」に対応した。これはHERO10の「SuperView」より広角で撮影できる機能だ。ロッククライミングなどカメラを構える余裕のないような環境では効果的だが、角は極端にゆがむ。

新型センサーのもうひとつの利点は、動画から24.7メガピクセルの静止画を切り出せるようになったことだ。個人的には、これがGoProの最も優れた変更点のひとつだと感じている。

具体的には、何もかも撮り逃さないようにした後で、GoProの編集アプリ「Quik」などから静止画を切り出せる。おかげで高速な連写に対応した2,000ドル(約27万円)くらいする高価なカメラを買わなくても、走り回る子どもたちを見事に写真に収められる。

PHOTOGRAPH: GOPRO

長もちするバッテリーを標準搭載

静止画の画素数もわずかに向上しており、HERO10の23メガピクセルに対してHERO11は27メガピクセルになっている。そしてさらに興味深い点を挙げるとすれば、バーストモードでRAW画像を撮影できるようになったことだ。

これまでのバーストモードでは、JPEG形式でしか撮影できなかった。最終的に1枚の静止画が必要でも連写もしておきたい場合に、RAW画像という選択肢が追加されたのだ。

バーストモードは動画を撮影するわけではないので、最高の瞬間を撮り逃す可能性は残されている。だが、撮影後に編集できるので、こうしたリスクは相殺されるだろう。

動画のスペックはHERO10に非常に近い。HERO11は5.3K画質の場合は最大60fps、4Kの場合は最大60fpsで撮影可能だ。そして高画質でスローモーション撮影をするなら、2.7Kの画質で最大240fpsで撮影できる。

ハードウェアの面で言及すべきHERO11の変更点は、別売りだった長寿命の「Enduroバッテリー」が標準搭載されたことだ。GoProによると、Enduroによって撮影時間は38%ほど延びるという。とはいえ経験上、バッテリーのもちは結局どのようにそのデバイスを使うかで決まる。

晴天時に初期設定(5.3K、30fps)のまま撮影してみたところ、1時間13分の素材を撮影できた。1時間を経過する前に充電が切れてしまった標準バッテリーに比べて、かなり長時間の撮影が可能だ。

Wi-FiとGPSをオフにしたり、画質を制限する省電力モードを有効にしたりして、バッテリーを節約することもできる。60fpsで撮影してバッテリーを消耗して望んだ瞬間を撮れないよりは、5.3K画質の30fpsで撮影したほうがいいだろう。

さまざまなシーンを切り取れる

ソフトウェアの面で注目すべき変更点は、10ビットカラーで撮影できる選択肢が加わったことだ。10ビットカラーで撮影すれば色の深さを抑えることができ、ポストプロダクションで色補正をするとより広い範囲の光を表現できる。言い換えれば10ビットカラーは、編集時の作業とカラーグレーディング(色彩補正)が好きな人にはうってつけの機能だ。

PHOTOGRAPH: SCOTT GILBERTSON

個人的には色彩調整の作業は苦手なので、HERO11 Blackに搭載されたほかの新機能を試すほうが楽しめた。特に気になる機能は「スタートレイル」だ。星が描く軌跡の撮影を試みたことがある人ならわかると思うが、何百枚もの画像を重ねる作業は非常に手間がかかってしまう。

HERO11のスタートレイル機能なら、ボタンひとつで星の軌跡を収められる。24メガピクセルという高画質で気軽に撮影可能だ。

ほかにも、懐中電灯を使って遊べる「ライトペインティング」機能がある。「ライトトレイル」機能を使えば、夜の街を走るクルマの流れを赤と白の“光の川”に変えることも可能だ。

GoProはユーザーの負担を減らすべく、「イージーコントロール」と「プロコントロール」というふたつの設定を搭載した。出荷時はイージーコントロールに設定されており、カラー設定などを詳細に調整するつもりがない人のために合理化されたユーザーインターフェイスを提供している。設定の切り替えはそこまで難しくはないので、カメラに精通している人や前のUIに慣れている人は、使い慣れたUIで調整すればいい。

自動ハイライトが強化されたこともうれしい点だ。これはHERO11に直接関係しているわけではなく、HERO5以降すべてのGoProで動作する。ただし、GoProのサブスクリプションに登録して、自動アップロードをオンにしなければならない。設定しておけば、アップロードされた素材をQuikが自動で編集し、完成したものをアプリに保存してくれる。

これは以前から存在する機能だが、今回からはソースファイルを端末にダウンロードしなくても自動で生成された動画を編集できるようになった。低画質版の素材を編集することにはなるが、ほかのアプリに出力したり共有したりするときは高画質バージョンで送信できる。

個人的に抱いていたQuikへの不満は、理論上この機能で解消されることになる。ところが残念なことに、今回のレビュー記事を執筆している最中には試すことができなかった。

“画面なし”という選択肢も追加

またGoProはHERO11と同じ時期に、別の新しいカメラを発表している。それは「HERO11 Black Mini」だ。価格は450ドル(日本では64,000円)で、HERO11 Blackを小さくしてディスプレイを取り除いた製品である。つまり、撮影した映像を確認できず、多くの場合でフレーミングもできない(フレーミングするにはQuikと端末をペアリングする必要がある)。

おかしな話に聞こえるかもしれないが、GoProの使い方を考えてみれば、軽量で合理的な形をしたカメラのほうがディスプレイより重要だろう。カメラをストラップで身体に装着してサーフィンやクライミング、モトクロスをしながら撮影する人々を例に挙げればわかるだろうか。そもそも頭にカメラを装着していれば、ディスプレイの表示は見えないのだ。

HERO11 Black Miniで気に入っている点もある。ライカが少し前に、ディスプレイが搭載されていないデジタルレンジファインダーカメラを発売した。つまり、撮影した画像を確認する手段は用意されていない。

ライカは現実味がないほど高価だが、カメラに込められたメッセージが好きだ。「ただ撮影すればいい。いい瞬間を撮れたのか確認するのはやめろ」ということなのである。

HERO11 Black Miniも、その精神を思い出させてくれる。GoProの製品担当の責任者に取材したときにも話していたが、本来のGoProとは遠くから子どもたちのパーティーを撮影するときに、ずっと手に抱えて使うカメラではないのだ。むしろ部屋の角に貼り付けておけば、あとは放っておいていいのである。

とはいえ、今回はHERO11 Black Miniを実際にテストしたわけではない。そして依然として、ほとんどの人にとって購入すべき最高のアクションカメラはHERO11 Blackだと思っている。

HERO10をすでにもっている人は、買い換える必要はあるだろうか。もし縦方向の広さが必要なら、買い換えてもいいだろう。映像をさまざまなフォーマット合わせて編集することが多いなら、HERO11は間違いなく投資する価値のあるカメラだ。

◎「WIRED」な点
新たなセンサーによって画角の選択肢が増えた。バッテリー持続時間の向上。動画から高画質の静止画を書き出せる。イージーコントロールを使えば細かい設定なしで撮影可能。バーストモードでRAW画像の撮影ができる。スタートレイル、ライトトレイルなど楽しい撮影モードが新たに搭載された。

△「TIRED」な点
動画編集アプリ「Quik」で5.3K動画を編集するには、比較的新しいスマートフォンが必要になる。

WIRED US/Translation by Taeko Adachi/Edit by Naoya Raita)

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