ドラマ「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」シーズン1の最終話で、今後の方向性がはっきりと見えてきた

人気ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」の前日譚であるドラマ「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」のシーズン1が最終話を迎えた。そのラストシーンは、次のシーズン以降では前作で見られなかった世界が見えてくることを明確に示唆している。
Emma D'Arcy in the House of the Dragon season finale
Courtesy of Ollie Upton/HBO

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レイニラ・ターガリエン女王(そう、女王である)が炎から目をそらし、復讐に狙いを定めたように見えた瞬間、このドラマの方向性が見えた。人気ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」の前日譚であるドラマ「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」は、前作では見られなかったものを提供してくれることだろう。それは、◯◯(ネタバレ防止のため伏せ字)がドラゴンに騎乗した途端に死んでしまうとわかったときのように理解できた。

「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」は視聴者が望んでいるものを提供することで、前作でがっかりした人たちの信頼を回復しようとしている。それは「鉄の玉座」に就く準備ができていて、しかもその過程で自分を見失わない女性だ。そして、とにかくドラゴンに続くドラゴンの数々である。

とはいうものの、「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」がそうした信頼を回復するまでは、まだ長い道のりだろう。

まず、シーズン1の最終話をまだ観ていなくて、その内容を知りたくない人は、ここで読むのをやめてほしい。次に、このドラマがどこへ進もうとしているかまだわかっていない人は、十分に注意を払ってこなかったと言える。

【※以下にネタバレあり】

「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」には、「ゲーム・オブ・スローンズ」とは対照的な美点がある。そのひとつは、ジョージ・R・R・マーティンの原作『炎と血』にきちんと基づいていることだ。

「ゲーム・オブ・スローンズ」は、マーティンが原作の執筆を終える前の2019年に終了してしまった。それとは異なり、「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」には“手すり”がある。もちろん、ドラマの制作者のライアン・J・コンダルは、そうした手すりを取り除くこともできる。

でも、なぜその必要があるのだろうか。それはコンダルが、その先には“苦痛”しかないことがわかっているからだ。

前作と似たような構造

「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」のシーズン1は、レイニラ自身を後継者に指名した父が亡くなり、弟のエイゴン2世(異母の弟)が「鉄の玉座」に就いたことをレイニラが知る場面で終わる。レイニラはデナーリス・ターガリエンと同じく、自分の地位を渇望する白髪の女性(ターガリエンの遺伝子は本物だ)なのだ。

しかし、デナーリスとは異なり(あるいは権力を求める最終過程におけるデナーリスとは違うと言うべきか)、レイニラには「灰と骨の王国を支配する願望」はない。王国を統一できればそれでいいのだ。

かつての義母レイニス(忘れてはならないが、彼女は叔父のデイモンと結婚するために息子を殺した)によると、レイニラは評議会のメンバー全員が戦争を求めた際に「自制を働かせた唯一の人物」だ。それに何といっても、彼女のキャラクター変遷には青写真がある。

視聴者は当然ながら、前作と似たような構造を見せられることになる。「ゲーム・オブ・スローンズ」では、失脚する前のデナーリスは応援したくなるキャラクターだった。「鉄の玉座」を継承する正当な権利を有し、国民を解放し、全王国を統治する唯一の女王となることを目指していたのだ。

問題は、戴冠を目指す一途な決意によって、「運命の輪を壊して」でも状況をひっくり返すという姿勢がすべて脇に追いやられてしまったことだろう。そして「偉大なるターガリエンの統治」の代わりに、キングスランディング(王都)を焦土と化す道を選んでしまった。彼女を応援していた視聴者にとって理解に苦しむ行動であり、大きな失望だった。

レイニラの運命は原作を踏襲するか

「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」は、そうした点を修正しようとしているようだ。

両シリーズとも、女性キャラクターが苦しむ姿を見せたがっているように見える(「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」では性暴力シーンがとても残酷な出産シーンで置き換わったようだ)。しかし、新シリーズでは、少なくとも王国の統一を目指す分別ある人物から、七王国を支配するためには暴力を選ぶことも辞さない人物へのレイニラの変貌を見せようとしている。

ダニー(デナーリス)の使命感は、ジョン・スノウに恋した瞬間から薄れていった。彼女は後日、スノウが甥であり、彼にも「鉄の玉座」の継承権があることを知る。

確かに、そうした状況に陥れば誰でも大いに混乱するだろう。だが、試練をくぐり抜けた後のデナーリスの行動は、人が変わってしまったようだった。「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」の視聴者は、レイニラが取り乱して同じようにならないことを祈るばかりだ。

コアリーズ・ヴェラリオンは、希望は「愚者の仲間」だという。しかし、レイニラはおそらく同じ轍は踏まないだろう。

最終回のラストで、彼女は息子のルケアリーズがドラゴンに騎乗中に死亡したことを知る。その瞬間、彼女は視線をカメラに向け、平和的な考えが消えたことが明確にわかった。

しかし、ダニーは王都を焼き尽くして奪取したが、それとは違ってレイニラの復讐計画は原作「炎と血」の中心をなすものだ。結末を模索する前作のクライマックスにおいて、これでもどうだと言わんばかりに繰り出してきた劇的展開のそれとは違い、すでに原作に書かれている。

レイニラの運命はすでに書かれている。問題は実写ドラマ「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」が、それを踏襲するかどうかだろう。

WIRED US/Edit by Daisuke Takimoto)

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