睡眠科学者に訊く、最適な就寝前ルーティンのための7つのヒント

うまく眠りにつくためには、眠る前の行動を習慣化することが役立つと専門家は語る。慌ただしい1日を穏やかに締めくくるためのコツを確認してみよう。
bedtime tea on night stand
Getty Images

習慣というものは、たとえそのすべてを実行できなくても、乱れがちな日常に指針となる骨格を与えてくれる。朝起きるとコーヒーを1杯飲んですぐにシャワーを浴びる。毎日同じデスクで仕事をする、昼休みに当てもなく長めの散歩に出る、毎日欠かさず眠る。必ずそうしている。

子どもにはたいてい親が決めたお決まりの“就寝前ルーティン”がある。元気いっぱいの子どもたちが風呂に入れてもらってパジャマに着替え、徐々に落ち着いて眠りにつけるようにするためだ。

「親たちは子どものために毎日のルーティンを見事に実行しています」と、ハーバード大学医学部の講師で同大付属のブリガム・アンド・ウィメンズ病院の睡眠科学者でもあるレベッカ・ロビンズは言う。「ところが大人たちは、自分のこととなると、やるべきことを忘れてしまうのです」

彼女の言う通りだ。よく考えてみると、日常の“ルーティン”のなかには、長い時間かけて無意識のうちに習慣として何となく生まれただけのものが多い。

これまで就寝前の行動について深く考えたことがない人や、毎日のルーティンを総点検したい人のために、慌ただしい1日を最高に穏やかな気分で締めくくるための7つのヒントをお届けしよう。

1. 就寝前の行動を決める

ロビンズはベッドに入るまでの一連の行動を、儀式のように定型化することを勧めている。温かいお茶を飲んだり、化粧水で肌の手入れをしたり、ベッドに入ってその日の出来事についてパートナーと語り合ったりするのもいいだろう。

あるいは柔軟体操の後で手早く入浴を済ませ、バスローブ姿でくつろぎたい人もいるかもしれない。どんなルーティンでも構わない。同じ行動を繰り返すことが重要だ。

「そうすることで体と脳は、これらの行動の後に眠りが訪れることを徐々に理解していきます」と、ロビンズは言う。「昔ながらのやり方ですが、一種の“条件づけ”をすることで、就寝前のルーティンを終えた後には眠りの時間が待っていることを自分自身にわからせてやればいいのです」

意識的にこなすことで、それまで何も考えずに続けていた習慣を効果的なルーティンに変えられるというわけだ。

2. 「継続は最強」と心得る

就寝前のルーティンに関して大人が犯しがちな最大級の過ちが、一貫性の欠如である。「安眠を得たいなら、子どもを寝かしつけるための常とう手段を使いましょう」と、ロビンズは言う。「そのひとつは、毎日決まった時間にベッドに入ることです」

強い意志をもって毎夜のルーティンにとりかかっても、日常に潜む予測不能な出来事に計画を邪魔されることはよくある。深夜に大事な人から電話がかかってくることも、ひいきのスポーツチームが接戦の末に勝利を収めることもあるだろう。何かにスケジュールを狂わされたら、落ち着いて起きたことを振り返り、次の晩に再び挑戦すればいいのだ。

3. 毎日同じ時間に起きる

ポッドキャスト番組「Sleep Unplugged」のホストを務める神経科医で睡眠の専門家であるクリス・ウィンターは、毎晩の就寝時間を厳しく設定するより、起床時間を守ることに重点を置くべきだと語る。「わたしは昼食の時間を毎日午後1時と決めていますが、1時になっても空腹を感じなければ、無理に食べようとは思いません」と、ウィンターは言う。

普段より1~2時間遅く寝ることになっても、翌朝のアラームはいつもと同じ時間にセットすることをウィンターは勧める。「翌日の頭の働きに少しばかり支障が出ても構わないと思います」と、彼は言う。いくらか眠気を感じながら過ごすことで、ルーティンを守ることの大切さを強く意識できるはずだ。

4. 画面から離れる

どのタイミングでスマートフォンの操作をやめて「おやすみモード」に切り替え、充電器に置くべきだろうか?

遅くともベッドに入る30分前にはそうしてほしいと、ロビンズは勧める。画面の明るさを落としたり、暖色系の光に切り替えたりすることで、通常よりは目に優しい使い方ができるかもしれない。しかし、就寝前のルーティンをつつがなく実行するためのベストな選択は、画面を完全にオフにすることだ。

5. 焦らなくても構わない

「一瞬にしてぐっすり眠ってしまう」といった夢のような話をよく耳にする。くたくたに疲れた主人公が、薄く明かりがついたままの寝室でベッドにもぐり込むやいなや、死んだように眠るシーンが映画にはよく登場する。

しかし、「実際はどんなに寝つきのいい人でも、眠りにつくまでに15~20分ほどかかることが普通です」と、ロビンズは言う。睡眠とはこうであるべき、という誤った思い込みは、夜のルーティンへの非現実的な期待を生む恐れがある。

6. 自分を責めない

自分に優しくしよう。就寝前の癒しを誘う一連の行動が有益であることは確かだが、正反対の結果をもたらす可能性もある。起こりうる最悪の事態のひとつは、完璧な一夜の眠りを得ようとするあまり、大きなプレッシャーを感じてしまうことだ。「不安を覚えると人は眠気を感じにくくなり、眠りの妨げになります」と、ウィンターは言う。

人生のほとんどの場面において、過度な批判感情の行き着く先は負のスパイラルでしかない。「最高の睡眠を手に入れる秘訣は、ベッドのなかで眠れずにいるときも、睡眠中と同じように安らかな気持ちでいることだと思います」と、ウィンターは言う。

ルーティンを決め、それを守ることは大事だ。しかし、思い通りにいかない夜があっても、自分を責めてはいけない。

7. 専門家に相談する

緊張をほぐし、速やかに眠りへと導いてくれる完璧なガジェットを探している人もいるだろう。口呼吸を防ぐ「マウステープ」から、リラックス効果の高い周波数をもつといわれる「ピンクノイズ」まで、安眠効果をうたうさまざまなツールが売られている。しかし、ウィンターは「どれもこれもばかばかしい」と批判する。

公平を期すために言っておくと、『WIRED』はこれまで多くの時間をかけて数々の睡眠ガジェットをテストし、自信をもってお勧めできる製品をいくつも紹介してきた。ウィンターは言う。「要するに、何が問題なのかがわからなければ、お金を出しても正しい解決策は得られないのです」

ご紹介した安眠のためのヒントを実践しても問題が解決されない場合は、500ドルもする機械を買ったりTikTokで見かけた最新の安眠ハックを試したりするより、睡眠障害の治療に豊富な経験をもつ睡眠専門医との面談を予約するか、睡眠状況の検査を受けることを検討すべきだろう。

WIRED US/Translation by Mitsuko Saeki/Edit by Mamiko Nakano)

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