よく眠れないときに試すべき8つのこと

よく眠れない夜や不眠が続くと、生活にも支障が出てしまう。そんなときに実践すべき8つのことを、心理療法士が紹介する。
よく眠れないときに試すべき8つのこと
Photograph: Maria Korneeva/Getty Images

夜、眠れないと、日常生活のいたるところで支障を来す。何かをやり通すことも、楽しむことも難しくなるのだ。それなのに、睡眠不足を解消する役に立たないとわかっていることほど簡単に習慣になるし、実際にそのような経験がある。

そこで、モントリオール在住の心理療法士でユーチューバーのジョージア・ダウに、うまくいかない睡眠スケジュールを改善するヒントを聞いた。ダウが教えてくれたことを紹介しよう。

1.睡眠環境を改善する

最初のヒントは思ってもみなかったことだった。それはマットレスと枕は、自分で快適だと思える品質のものを必ず選ぶことである。

よりよいマットレスを使うと睡眠の質が向上する。自宅より旅先のほうがよく眠れるという自覚がある場合は、特にそうだ。そこで余裕があるなら、よりよいマットレスを買うことをすすめたい。

枕の買い替えも睡眠の質の向上に大いに役立つ。首が痛くて目が覚めてしまうような場合は、特にそうだろう。シーツの買い替えも同様だが、無理な場合は手もちのシーツの洗濯を考えてみてほしい。「人生の3分の1を過ごすことになっている場所に十分なお金や労力をかけられない場合が多いのです」とダウは語る。

2.ストレスになることをベッドでしない

ダウによると、肉体は物理的な空間や時間と関連し合っているという。昼間にベッドでストレスがかかることをすると、夜にそのようなことを考えてしまうというのだ。例えば、仕事やメールへの返信、カメラをオフにした状態でのZoom会議などが該当する。

だからその種のことはせず、ベッド(または寝室)は休息専用の場所にするようにしたい。「セックスと睡眠以外にベッドを使わないようにしましょう」と、ダウは語る。「ベッドでは仕事も議論も、税金の確定申告もしないでください」

また、アクション満載のビデオゲームや、政治にまつわる行動も同様だという。そんなわけで、お気に入りのモバイルゲームの誘惑に負けずに肩の凝らない本を読んだり、気分が休まる音楽を聴いたりするといい。

ベッドですることといえば、数年前より多くの人が在宅勤務(リモートワーク)になっている状況も関連しているといえる。もし在宅勤務をしていて寝室に机を置いているなら、できれば机は別の部屋に移動させたい。ベッドから机が見えると、仕事のストレスをすぐに思い出してしまうからだ。

3.遮光カーテンや自動照明を検討する

光は睡眠習慣に重大な影響を及ぼすので、夏の日の出が早い時期や、街灯の多い場所に住んでいる場合に問題になりかねない。そこで、ダウは遮光カーテンをすすめている。「遮光カーテンにすると長く眠れるようになります」と、ダウは語る。

もっとも、冬になると多くの人は逆の問題に悩む。それは朝が暗くて起きられないという問題だ。ダウによると、この問題を解決するには、朝ゆっくりと点灯する照明がいいという。

特定の時刻にセットできるスマートライトでも、朝ゆっくりと点灯するように設計されたライト付きの目覚まし時計でもいい。例えば、オレゴン州では冬の間ずっと景色が“灰色”なのだが、そんな朝に目を覚ますべくライト付きの目覚まし時計を購入した。おかげで睡眠が大幅に改善されている。

4.電子機器を片づける(あるいは設定を変える)

光といえば、暮らしのなかにあるさまざまなディスプレイは大量のブルーライトを放出している。このブルーライトを人間の身体は、「太陽光」であると判断してしまう。

また、ブルーライトは眠気を誘うホルモンであるメラトニンの分泌を抑制する。ブルーライトのせいで眠るべきときに電子機器の画面をスクロールし続けてしまうともいえるし、そうなるからこそベッドで電子機器を使ってはいけないという理由にもなる。

「寝る前にハイテク機器を使うのは、いい考えではありません」と、ダウは言う。「ディスプレイを片づけて照明を落とし、青い波長の光を放つものはすべて避けてください」

それが無理なら、電子機器の微調整を視野に入れよう。ダウがすすめるのは「f.lux」というアプリで、コンピューターのディスプレイに赤みをつけてスクリーンが放つブルーライトの量を減らす。

アップルのデバイスでも、似たような「Night Shift」という機能がmacOSに搭載されている。ディスプレイを見ない場合ほどの効果はないが、何もしないよりはいいだろう。

5.時計を隠す

夜中に目覚めても慌てないことだ。なぜなら、それはよくあることだからである。ダウによると、多くの人は夜中に5~6回は目覚めるが、たいていは目覚めたことを覚えていないという。ただし、自分の睡眠に不安を抱えていて、目覚めた時刻にたまたま気づいて何時間くらい寝ていなかったのかと考えてしまうような場合は、この限りではないという。

「そうやって寝ていない時間を計算することで、目が覚めてしまうのです」と、ダウは説明する。そしてすでに睡眠に不安を抱えていると、この問題は深刻になるという。

ダウの解決策は、スマートフォンを裏返して置いたり、目覚まし時計の置き場所を変えたりして、時刻が目に入らないようにすることだ。「時計を見なければ、また眠って、目が覚めたことを忘れるでしょう」

時計といえば、スヌーズボタンには頼らないようにしたい。予定より10分多く眠るのは快適かもしれないが、上質な睡眠ではないからだ。目覚まし時計は部屋の向こう側に置いてみてほしい。そうすれば、アラーム音を消すために実際に起き上がらなければならなくなる。

6.クールダウンする

冬には暖かい寝室がいいと思っているかもしれないが、暖かい寝室が身体にいいとは限らない。「人間は夜、涼しいほうがいいのです」と、ダウは言う。理想的な睡眠温度は約16~21℃だ。冬でも必要に応じて寝室の窓を少しだけ開けよう。

7.脳を働かせる

眠れないと、なぜ眠れないのかを考えて過ごしがちだ。そこでダウは、それ以外のことに脳を集中させるといいと言う。「ほどほどに楽しめることをしてください」と、ダウは語る。

例えば、単語ゲームや簡単な計算問題、物語を考えだすことなどが挙げられる。とはいえ、眠れないときにするといいとされているお決まりの方法は避けるべきだ。

「羊の数を数えても大して効果はありません。眠れなくて心配になると、すぐに羊の数を数えてしまうかもしれませんが、あまりに安直です」と、ダウは言う。おすすめは羊の数を数えるのではなく、100から7ずつ引く引き算だという。

オーディオブックやボッドキャストなど、気晴らしになることをしてもいいだろう。しかし、そのような外部の刺激に頼ることはよくないと、ダウは忠告する。

「この種のことは効果的ですが、眠るために役立つ手段として外部のものに頼っていることになります」と、ダウは指摘する。「つまり、こうしたツールがそばにないときには、それを利用できないと眠れなくなるリスクが例外なく生じるのです」

だからこそ、道具に頼らずに済む心の働きを見出したい。「自己暗示や瞑想、呼吸法など、どれでも構いません。頭のなかがストレスでいっぱいになる前に、脳をそれ以前の状態に戻す必要があります」と、ダウは説明する。

8.いい休息をとる

睡眠不足になると、人生のすべてが悪い方向に進む。実際にそんな経験がある。数年前に長引く不眠症に悩まされたのだ。仕事の状況が悪かったせいもあってすでにうつ病を患っていたところに、睡眠不足がそうした問題に影響を及ぼした。

いまでは治療や投薬、仕事の状況改善のおかげで、そうした問題を抱えていない。みなさんの睡眠の問題がこれと同程度なら、どれだけライフハックを実行しても解決にはならないだろう。いまはライフハックを実行すべき状況ではなく、眠れないほどストレスの多い生活になっている原因はずばり何なのかについて考える機会といえる。

そんなときは、ストレスがたまる労働環境から離れる必要があるのかもしれない。人間関係や生活環境がよくないのかもしれない。精神面への支援が必要になっているのかもしれない。つまり、睡眠不足は自分自身を大切にするチャンスなのだ。

いまでは毎晩熟睡できることに感謝しており、みなさんが睡眠不足に悩んでいるなら気の毒に思う。紹介したヒントが少しでも役に立てば幸いだ。

WIRED US/Translation by Madoka Sugiyama/Edit by Daisuke Takimoto)

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