生成AIの登場が「アーティストとは何か」「創造性とは何か」を問い直す契機に:『WIRED』日本版が振り返る2023年(生成AIとクリエイション編)

2023年に『WIRED』日本版で公開された記事のなかから、最も読まれた「生成AIとクリエイション」関連の記事を10本セレクト。楽曲や映画製作の現場での生成AI活用から、AIによる“学習”目的での作品の盗用防止まで、創作環境に大きく影響を与えた生成AIのあり方を振り返る。
生成AIの登場が「アーティストとは何か」「創造性とは何か」を問い直す契機に:『WIRED』日本版が振り返る2023年(生成AIとクリエイション編)
illustration: MirageC/Getty Images

「ボイスジェネレーターのようなAIにワクワクするのは、それがアーティストとは、創造性とは、そして音楽とは何か、といった問題に深くかかわってくるからです」

2023年、SONICMANIAでの来日(と、ステージに上がったイーロン・マスクの珍騒動)で記憶に新しいアーティストのグライムス(Grimes)は、『WIRED』のカバーストーリーでこのように語った。

ドレイクを筆頭に、生成AIによる楽曲生成に対して懸念を示すアーティストも多いなか、グライムスはまったく異なるアプローチをとったことで知られている。

そのアプローチとは、自らの人工知能(AI)搭載プラットフォーム「Elf.Tech」をリリースし、ファンや他のアーティストはグライムスの声を自由に利用できる代わりに、その楽曲から生まれたロイヤリティ収入の50パーセントをグライムスが受け取れるという仕組みだ。今後も、こうした新しい仕組みの提案を通じて、生成AIの利活用が進んでいくことだろう。

もちろん、音楽業界以外にも生成AIはクリエイションのあり方を大きく変えていくはずだ。音楽、映画、ゲーム、現代アート……それらの業界はいまどのような課題に直面し、どのように乗り越えようとしているのだろうか。

(人間の)創造性という言葉がもつ意味が更新されようとしている最中、WIRED.jpで2023年に公開された「生成AIとクリエイション」をテーマとした記事からその未来を探っていこう。


01 GPT-4を「マインクラフト」に組み込んでみたら、AIによる自動化の新たな可能性が見えてきた

COURTESY OF Microsoft

人気ゲーム「Minecraft(マインクラフト)」と言語モデル「GPT-4」を組み合わせることで、AIが自ら“世界”を探索して新しいスキルを身に付ける仕組みをNVIDIAの研究者らが考案した。こうした方法で言語モデルを活用すれば、オフィスなどでの日常的な作業を自動化できる可能性もありそうだ。>>記事全文を読む


02 ハリソン・フォードがAIで若返った! 映画『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』制作の舞台裏

Photograph: Lucasfilm

80歳のハリソン・フォードが、AI技術によって若き日の姿で活躍する──。映画『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』で活用されたディエイジング技術は驚くべきものだが、ハリウッドにおけるAIの使用についての課題も浮き彫りにしている。>>記事全文を読む


03 ビートルズ最後の新曲「Now and Then」は、こうしてAIの技術を駆使して世に送り出された

ビートルズの最後の新曲「Now and Then」は、AI技術によって世に送り出された。Photograph: Michael Ochs Archives/Getty Images

ビートルズのオリジナルメンバー4人が揃った最後の新曲「Now and Then」が2023年11月に公開された。ピアノの音にかき消されていたジョン・レノンの歌声がよみがえったのは、AIの進化とピーター・ジャクソン監督の手腕によるものだ。>>記事全文を読む


04 AIの“学習”のための作品盗用防止へ。スクレイピングされると中指を立てた画像を返送するツール誕生

Illustration: James Marshall; Getty Images

AIの訓練にはインターネットからかき集めた膨大なデータを使用している。そのなかには無断で集められたアーティストによる作品もある。そこで訓練データを集めるソフトウェアをブロックしたり、異なる画像を送ったりして作品の盗用を阻止しようとするツールが生まれている。>>記事全文を読む


05 生成AIによる“侵食”に警戒感? マーベル「シークレット・インベージョン」の制作手法が波紋

Disney+で配信が始まったマーベルの新作ドラマシリーズ「シークレット・インベージョン」で、サミュエル・L・ジャクソンは再びニック・フューリー役を演じている。Photograph: Des Willie/Marvel

マーベルの新作ドラマシリーズ「シークレット・インベージョン」が波紋を呼んでいる。オープニングクレジットの制作に生成AIを用いていたことが判明し、批判的な声が上がっているのだ。>>記事全文を読む


06 生成AIを活用した楽曲製作は、音楽業界では想像以上に普及している

ILLUSTRATION: MARINA KOZAC

生成AI(Generative AI)の台頭によってクリエイティブ業界に変化が起きているなか、音楽業界にはどのような影響が及んでいるのだろうか。作詞・作曲から曲のミックス工程まで、AIがどれだけ使われているのかを米国のプロデューサーらに訊いた。>>記事全文を読む


07 ハリウッド俳優のストライキは、AIの利用を巡る“闘い”において転機となる

全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)の組合員たちが7月13日(米国時間)にストライキを決行した。Photograph: Frazer Harrison/Getty Images

AIの利用などを巡り揺れているハリウッドでは、脚本家に続いて全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)がストライキを決行した。有名俳優たちのストによる映画制作への多大な影響は、AIの利用問題における転機の訪れになるかもしれない。>>記事全文を読む


08 「ペルソナが本人を超えてしまった」──ニコラス・ケイジが語る、名声の副作用とAI

ニコラス・ケイジCourtesy of A24

ニコラス・ケイジ主演の新作映画『Dream Scenario』(原題)が米国で公開された。名声が本人と乖離した場合に起きることについて描き出した本作のテーマは、ケイジ自身がキャリアを通じて体験してきたことでもある。>>記事全文を読む


09 AIが生成した画像ばかりを掲載した雑誌は人の心に響くのか

Photograph: Sashkinw/Getty Images

AI画像ツール「Midjourney」を使って生成された画像で埋め尽くされた、紙の雑誌が登場した。一見すると高級アート雑誌のようだが、どの画像の背後にも人の心を打つようなストーリーはなく、“魂のない”雑誌になってしまっているように見える。>>記事全文を読む


10 ゲーム系ユーチューバーがAIに自分の代わりをさせている理由

ゲーム系ユーチューバー「Kwebbelkop」として活動する、ジョルディ・ファン・デン・ブッシェPhotograph: Dimitrios Kambouris/Getty Images

「Kwebbelkop」として絶大な人気を誇るゲーム系ユーチューバー、ジョルディ・ファン・デン・ブッシェのチャンネルでは、“AIの分身”が登場する動画が続々とアップロードされている。果たしてファンは支持するのだろうか?>>記事全文を読む


『WIRED』日本版が振り返る2023年の記事はこちら


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