おぼろげながら見えてきたメタバースの本質:『WIRED』日本版が振り返る2022年(メタバース編)

ニール・スティーヴンスンによるSF小説『スノウ・クラッシュ』の復刊、あるいは投資家マシュー・ボールが著した『ザ・メタバース 世界を創り変えしもの』の邦訳も登場したことで、メタバースに関する議論がますます多面化した2022年。オンラインでよく読まれたメタバース関連の記事をピックアップし、『WIRED』日本版が振り返る2022年(メタバース編)としてお届けしよう。
おぼろげながら見えてきたメタバースの本質:『WIRED』日本版が振り返る2022年(メタバース編)
ILLUSTRATION: DAN MATUTINA

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何をもって(どんな状態のことを)メタバースと定義するのか、まだコンセンサスは定まっていない。「すでに登場している」と語るテックジャイアントのCEOもいれば、「まだ当分来ないだろう」と予測する投資家もいる。

ただ、『ザ・メタバース 世界を創り変えしもの』のなかでマシュー・ボールが提示しているように、インターネットはひとつである──つまり「Facebookのインターネット」や「Googleのインターネット」といった表現や概念はない──のと同様に、「ある特定のメタバース」や「複数のメタバース」といったことにはなりえないはずだ。

そして、3Dプリンターやレーザーカッターが、ハードウェアのスケッチツールとしてモノづくりを変えたように、メタバースは、インタラクティブなサービスやコミュニティのラピッドプロトタイピングを促す環境としても捉えることができるはずで、メタバースを思考ツールとして用い、言語化できない抽象概念を扱うことができれば、それこそが真のサイバースペースになるはずだ。

メタバースは、WebやSNSに続く次なるグローバルプラットフォームになりうるのか。以下は、その動向をサーベイするのに最適な10本。とくとご覧あれ!


01 メタバースとは?実際のところ、本当にインターネットの未来なのか?

メタバースについて語ることは、1970年代当時のインターネットの議論にある程度までは似ている。当時、“インターネット”が実現することは確かだったが、それにまつわるあらゆるアイデアが実現したわけではなかった。“メタバース”は何か特定のテクノロジーというより、人間とテクノロジーの関係の広範な変化を指している。だとしても、この未来のビジョンが「楽観的」から「完全なファンフィクション」の間のどこに位置するかは検討の余地があるだろう。>>記事全文を読む


02 メタバースはテックジャイアントの支配を超えて、もっと大きな存在になる

メタバースはシリコンヴァレーのリブランドだとしたらどうだろう? それはビッグテックがトータルサービス環境としてつくりあげた自社の製品ラインナップを効果的に宣伝するための手段、そのプラットフォームとプロダクト全体を覆うSF的な1枚の皮膚に過ぎないのかもしれない。テックジャイアントと“ともに”ではなく“その下で”働くことが求められるメタバースを脱中央集権化する道はあるだろうか?>>記事全文を読む


03 よりよいメタバースのつくり方:Second Lifeのフィリップ・ローズデールからの提言

バーチャルリアリティがフェイスブック化すれば「極めて残念な結果をもたらす」とSecond Lifeの生みの親フィリップ・ローズデールは考えている。そして、通貨やデジタル資産の売買を中央管理するSecond Lifeは、NFTやWeb3に対するオルタナティブになりうるのだと。>>記事全文を読む


04 メタバースの中で何百時間も働き続けたぼくが学んだこと

VRアプリを使い、宇宙船からはるか地球を眺めながら、眼前に浮かぶコンピュータースクリーンに向かってこの原稿を書いている。VRヘッドセットを手に入れて1カ月後には物理世界で使っていたデスクを処分してしまった。バーチャル世界で仕事をすることで間違いなく得られるのは完全な静寂と活発な思考だ。もはや、ぼくが世界に煩わされることはない。ぼくが世界を煩わせることも──。>>記事全文を読む


05 メタバースにVRは必要ない? 「没入感のある体験」に人々が魅力を感じない理由

Courtesy of Meta

メタ・プラットフォームズが新型VRヘッドセットを投入し、メタバース事業を加速させている。だが、多くのユーザーはメタバースの体験にVRが欠かせないとは考えていないのではないか──。『WIRED』エディター・アット・ラージ(編集主幹)のスティーヴン・レヴィによる考察。>>記事全文を読む


06 Web3、あるいは所有と信頼のゆくえ:雑誌『WIRED』日本版VOL.44の発売に際して、編集長から読者の皆さんへ

雑誌『WIRED』日本版VOL.44が3月14日に発売された。特集テーマは「Web3」。いま急速に注目を集めるこの新しいムーブメントは、NFTやメタバースまでも包含し、自律分散型のインターネットを再び自分たちの手に取り戻そうとしている。新たなる革命の真髄に「所有」と「信頼」というキーワードから迫る総力特集に寄せて、編集長・松島倫明からのメッセージをお届けする。>>記事全文を読む


07 Web3を知るための100のキーワード:精選“ワ式”新用語集(Web3 GLOSSARY)

Web3の全体像を掴むには、新出のキーワードを押さえておく必要がある。今回、『WIRED』日本版編集部が100のキーワードをピックアップ。新たな世界を支える言葉の拡がりを知れば、Web3の向かう先を知る手がかりにもなるかもしれない。(雑誌『WIRED』日本版VOL.44から転載)。>>記事全文を読む


08 「VRChat」の世界だけで撮影、メタヴァースを生きる人々を捉えたドキュメンタリー映画が伝えたかったこと

ソーシャルVRアプリ「VRChat」のなかですべて撮影されたドキュメンタリー映画『We Met in Virtual Reality』がサンダンス映画祭で上映された。メタヴァースで過ごす人々のありのままの姿を映し出したこの作品は、そこに「守る価値のある文化」が存在していることを明確に物語っている。>>記事全文を読む


09 VRヘッドセット「Meta Quest 2」の値上げは、メタが目指すメタバースの普及にとって“逆風”になる

VRヘッドセット「Meta Quest 2」が2022年8月から大幅に値上げされると発表された。発売元でFacebookなどを運営するメタ・プラットフォームズはメタバースの推進に注力してきたが、今回の値上げはVRやメタバースの普及にとって逆風になる可能性がある。>>記事全文を読む


10 まるでディストピア? スーパーボウルのCMが映したテクノロジーの未来図

巨額の広告枠が注目されるスーパーボウルだが、2022年はメタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)やアマゾン、コインベースなどがCMを流した。これらの企業が約8億円相当を費やした枠で流した映像は、自らのテクノロジーがもたらす最も憂慮すべき側面だった。>>記事全文を読む


『WIRED』日本版が振り返る2022年の記事はこちら


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