2023年は『デューン 砂の惑星 PART2』と『オッペンハイマー』を観られなかった年として記憶されるかもしれない!?:『WIRED』日本版が振り返る2023年(映画編)

『スター・ウォーズ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『マトリックス』『ハリー・ポッター』『アベンジャーズ』──。映画には作品自体の魅力にとどまらず、社会・時代・技術といった複合的な記憶をパッケージングする力が備わっている。それでは2020年代は、映画を通じてどんな時代だったと記憶されるのだろうか。ひとまず、オンラインで最も読まれた10本の映画関連記事で2023年を振り返る。
Indiana Jones  in Lucasfilm's Indiana Jones 5
Photograph: Lucasfilm

2023年の映画界を象徴するトピックといえば、全米脚本家組合(WGA)と全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)が待遇の改善、動画配信に伴う収益の分配、人工知能(AI)の利用制限などを求めて起こしたストライキだろう。

ハリウッド史上最長となる118日間のストライキを経て、脚本家たちは「動画配信の配分増加やAIが自分たちの仕事を侵害しないためのガイドライン」の設定をスタジオ側に約束させ、俳優たちは「自分たちの声や演技に対してのAIの使用や複製等に対する本人の同意や公正な対価」を要求できる道筋を付けたとされている。

音楽業界(世界の市場規模=約262億ドル)は、テック業界のディスラプティブな動きと、それを熱狂的に受け入れたユーザーの動向によって、アーティストの権利について議論される間もなくあっという間に「パッケージ」(≒CD)から「ストリーミング」(≒サブスク)へと移り変わった──その概要は『誰が音楽をタダにした?──巨大産業をぶっ潰した男たち』〈早川書房〉に詳しい──が、果たして映画業界(世界の市場規模=約1,300億ドル)は、動画配信に加えてやってきたAIという波を、今後どう乗りこなしていくのだろうか。

……とまあ、そんな情勢をアタマの片隅に置きつつ、今年も、『フェイブルマンズ』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME3』『TAR/ター』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』『君たちはどう生きるか』『アステロイド・シティ』などなど、極上の映画体験をもたらしてくれた超一流のクリエイターたち、あるいは名もなきに職人たちに心からお礼を申し上げたい。

ちなみに来年以降のライナップを見ると、『マインクラフト』『DEATH STRANDING』『サイバーパンク 2077』『メタルギアソリッド』『ストリートファイター』『ゼルダの伝説』などなど、ゲーム作品の映画化が多く控えていることが印象的だ。『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の大ヒット(『WIRED』日本版でも「今年最も読まれた映画関連記事」3位にランクイン)が、このラッシュをどの程度あと押ししたのか気になるところだ。

後年、2020年代前半が振り返られるとき、どの作品が時代を捉えていたと記憶されているのだろうか。ひとまず以下の10本の記事で、2023年を振り返っていただければ幸いだ(参考までに、興行通信社調べによる日本国内の興行収入ランキングもお届けする。対象は2022年12月〜23年11月までの公開作品で、23年12月11日時点での推計概算となる)。

第1位『THE FIRST SLAM DUNK』
第2位『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』
第3位『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』
第4位『君たちはどう生きるか』
第5位『キングダム 運命の炎』
第6位『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』
第7位『ミステリと言う勿れ』
第8位『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室』
第9位『映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)』
第10位『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』


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