数多のAI関連記事よりも注目された「唯一のニュース」:『WIRED』日本版が振り返る2023年(SZメンバーシップ編)

次の10年を見通すための洞察が詰まった選りすぐりの会員限定コンテンツをお届けする「WIRED SZ メンバーシップ」。このサブスクリプションサービスで今年最もよく読まれた記事をピックアップし、『WIRED』日本版が振り返る2023年(SZ Membership編)としてお届けしよう。
数多のAI関連記事よりも注目された「唯一のニュース」:『WIRED』日本版が振り返る2023年(SZメンバーシップ編)
Illustration: WIRED JAPAN

会員限定の記事を年間で250本以上お届けしている『WIRED』日本版の人気サブスクリプションサービス「SZ Membership」。Speculative Zone(=実験区)の名のもとに、2023年も生成AI気候変動、『WIRED』の30周年に合わせた特集記事の数々など、多様なキュレーションテーマでお届けしてきた。

とりわけ今年印象的だったのは、合計で10週にわたって特集した人工知能(AI)と生成AIについてだ。22年11月30日にOpenAIChatGPTを発表して以来、この一年はマイクロソフトグーグルといったテックジャイアントも参戦する軍拡競争の様相を呈し、文字通り日進月歩で新しいサービスが次々と発表された。その詳細はWIRED.jpで毎日のように伝えながら、SZメンバーシップでは、こうしたAIの進展が人間の社会に文明規模で及ぼすインパクト、人間らしさや人間だけがもつとされた創造性についての再考汎用人工知能(AGI)やシンギュラリティが実現した場合に予想される世界やそのアクターたちの在り方など、より重心の低い議論を読み応えたっぷりのロングリードとしてお届けしてきた。巷に溢れるAI関連の記事とは違う、より深い思索(スペキュレーション)を促す刺激となったはずだ。

一方でもうひとつ驚いたのが、年間のランキングを出してみたところ、サイエンス関連の記事が上位を独占したことだ(詳しくは以下のリストをご覧いただきたい)。宇宙物理や大気物理、核融合といったハードサイエンスに加え、食事や老化、遺伝と学歴など、わたしたちの生活を取り巻くあらゆる側面で科学が果たす発見やその驚きについて、SZメンバーが旺盛な好奇心で読み込んでいったことがこのリストからは浮かび上がる。「科学こそが唯一のニュースだ」というケヴィン・ケリーの言葉を思い出しながら、『WIRED』というメディアが大変革の時代のさなかで拠って立つもの、伝えていくべきコンテンツを、改めてこの“実験区”が教えてくれたと思っている。

ここからは、23年に最もよく読まれた「SZ Membership」の記事を振り返っていく。各記事の週テーマをクリックすれば、さらに深掘りできるはずだ。1週間の無料トライアルはこちら。WIRED.jpの記事が月3本を超えて読み放題となるほか、週末に届く会員限定ニュースレターや各種イベントへの優待など、特典をたくさんご用意してお待ちしている。


01 思考実験「マクスウェルの悪魔」を現実世界で再検証する

PHOTOGRAPH: MEDIACOLORS/CONSTRUCTION PHOTOGRAPHY/AVALON/GETTY IMAGES

熱力学第二法則にまつわるパラドックスを物理学者たちはこれまで度々検証してきた。だがそもそもパラドックスなど存在しなかったのだ。マクスウェルの悪魔とは、「第二法則をより深く理解するための思考実験」だった。>>記事全文を読む


02 学歴とBMI値の相関は遺伝的? じつは「両親の出会い」によって説明できる

PHOTOGRAPH: JONATHAN KNOWLES/GETTY IMAGES

長い間、体重や学歴といった特質の組み合わせは遺伝的なルーツに左右されると研究者たちは考えてきた。だが本当の答えは、人が結婚相手を選ぶ「理由」にあるのかもしれない。>>記事全文を読む


03 脂質、糖分、塩分……超加工食品の実態をなぜ人々はほとんど知らないままなのか

PHOTOGRAPH: GETTY IMAGES

科学者たちが超加工食品(ウルトラ・プロセスフード)の悪影響について警鐘を鳴らす一方で、人々の健康を守るべき行政当局の動きは鈍い。そして、消費者たちは実際のところ、複雑なそのメカニズムや食全体への影響をほとんど知らないままだ。>>記事全文を読む


04 老化の秘密は卵巣に隠されている

ILLUSTRATION: KATERYNA KON/GETTY IMAGES

卵巣は体内のほかの器官よりも老化の進みが早い。このプロセスを遅らせる方法がわかれば、女性だけでなく、男性にも健康上のメリットがあるかもしれない。>>記事全文を読む


05 地表が温暖化するにつれ、高層大気は寒冷化している──その不測の影響

PHOTOGRAPH: NASA

今回判明した高層の寒冷化の規模を前に、大気物理学者は新たな懸念を抱えている。軌道上の人工衛星の安全性、オゾン層の減少、そしてこれほど急激な変化が地表の天候にもたらす予想外の混乱についてだ。>>記事全文を読む


06 復活した偉大なる米国製真空管メーカーWestern Electricの挑戦

COURTESY OF WESTERN ELECTRIC

貴重でレトロなオーディオ用真空管だが、近年ではその大半がロシアおよび中国で生産されている。いま、ジョージア州の小さな工場が米国製真空管の復権に向けて立ち上がった。>>記事全文を読む


07 テクノの起源をめぐる闘い

PHOTOGRAPH: ALAMY/AFLO

特定の音楽ジャンルに特化した真新しい博物館が、ドイツのフランクフルトに誕生した。テクノの先駆者たちからは、デトロイトのブラックアーティストやクィアアーティストが見過ごされているという声があがっている。>>記事全文を読む


08 人工重力のために回転する宇宙船は本当に快適なのか

PHOTOGRAPH: STEFANIA PELFINI/LA WAZIYA PHOTOGRAPHY/GETTY IMAGES

宇宙飛行士を長期にわたる宇宙ミッションに送りだすためには、居住拠点を回転させて人工的に重力をつくりださなければならない。だがその実現は、みんなが思っているほど簡単ではない。>>記事全文を読む


09 核融合エネルギーは、けっして「無限」でも「安価」でもない

VIDEO: JAMES MARSHALL

科学の進歩によって「無限のエネルギー」への期待が高まりつつある。しかし経済の観点から見れば、核融合エネルギーは風力発電や太陽光発電よりもむしろ高コストかもしれない。>>記事全文を読む


10 1,000年の耐久性を誇るコンクリート、その製造方法を解き明かす

PHOTOGRAPH: YUPPIDU/GETTY IMAGES

古代ローマで生み出された自己修復コンクリートの構造を科学の力で解明する──科学者たちの発見と取り組みは、現代のインフラを根本から変える、脱炭素化へ向けた大きな一歩となる可能性もある。>>記事全文を読む


『WIRED』日本版が振り返る2023年の記事はこちら


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