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MSIが発売した「Stealth GS77」に関する最大のニュースは、インテルの最新の第12世代のプロセッサーをいち早く搭載したゲーミングノートPCということだろう。確かにプロセッサーの実力は素晴らしいのだが、総合的な体験はパッとしない。
性能が向上したプロセッサーと、最上級のGPUであるNVIDIAの「GeForce RTX 3070 Ti Laptop GPU」の組み合わせは確かに“進化”ではある。だが、革新的と言えるほどではない。
外観が黒一色のStealth GS77は、過酷なデータ処理の量をものともせず全体的に快適に使える。しかし、その高い販売価格から期待されることのすべてを満たしているとは言えない。他社製品との激しい競争の環境においては、それが特に顕著である。
目を見張るスペック
Stealth GS77の最大の特長は何よりも性能にあり、これがStealth GS77の購入を検討する主な理由だ。一方で、性能に力を入れたことが購入を見送る主な理由にもなっている。
Stealth GS77の特長であるパフォーマンスの実現に使われているチップは、「GeForce RTX 3070 Ti Laptop GPU」と「Core i9-12900H」というまさに最上位の組み合わせだ。これを超えるプロセッサーとグラフィックカードを搭載する端末を2022年中に目にすることはないだろう。
この組み合わせの実力には目を見張るものがある。今回は120Hzの4Kディスプレイを搭載したモデルでテストを実施した。ゲームを重視する人は240HzのQHD、あるいは360HzのフルHDのディスプレイのモデルを選ぶかもしれないが、このモデルは最新のパーツが4K画質で実現できることを示している点で興味深い。
例えば「ボーダーランズ3」のようなゲームを4K画質の「ウルトラ」設定でプレイしたときのフレームレートは、ちょうど30fps(フレーム/秒)を切る程度だった。「ゴーストリコン ブレイクポイント」では30fpsを超え、40fps強になることもあった。
繰り返しになるが、熱心なゲーマーはリフレッシュレートが高いモデルを選ぶだろう。とはいえ、これらの結果は4K画質かつ高いフレームレートでのゲームプレイが現実のものに近づきつつあることを示している。
このことは「エーペックスレジェンズ」をプレイして、さらによくわかった。画質を「ウルトラ」に設定してもフレームレートは60fpsを超え、解像度を1440pに下げるとディスプレイの最大値である120fpsになったのだ。
また、すべてのテストでファンの騒音に悩まされたことは一度もない。本体についても、キーボードの周辺がわずかに温かくなっただけという点は喜ばしい。性能を重視する人にとって、買う気をなくすような問題はまったくなかった。
完璧とは言えないつくり
17インチのディスプレイには特別感こそないものの、そこそこ明るく画像も鮮明である。ただし、AMOLED(アクティブマトリクス式有機EL)や改良型HDRのような高度な技術を用いたディスプレイにある感動はない。狭いレンジを気にするクリエイターには、120Hzの4Kディスプレイのモデルはおすすめしづらい。
人気上位のゲームを最大限に楽しめるゲーミングノートPCを探している人が最上位のスペックのモデルを選んだなら、性能面で失望することはないだろう。ただし、値段は高い。
今回のテストに使ったモデルはメモリーが32GBでストレージ容量が1TBだが、価格は3,549ドル(日本では36万9,800円)だった。メモリーが64GBでストレージ容量が2TBのモデルは5,500ドル(約74万円)と、かなり高額になる。
性能重視の人が嫌う点はほとんどないものの、競合製品に後れをとっている点もある。それは日常の使用感と外観にかかわるつくりの部分だ。
キーボードは重要な差別化の要素である。ASUSはゲーミング用の「ROG」シリーズで、ゲーミングノートPCとしては最高レベルのキーボードを提供しているが、この点でMSIは対抗できていないのだ。
キーストロークこそしっかりあるものの、キー自体は小さくフィードバックがない。これにより入力時の感覚は熱烈なゲーマーのためのハイエンドゲーム機というより、デルの「XPS」シリーズのような仕事向けパソコンに近くなっている。
一方でトラックパッドは十分に大きく、しっかりとクリックの感覚がある。スピーカーは当たり障りのない基本的なものだ。とはいえ、この製品のユーザーはゲームをする際はゲーミングマウスとゲーミングヘッドセットを接続して使うことだろう。
入出力ポートは豊富にある。インテルのプロセッサーを搭載した新しい端末なので、その筆頭はThunderbolt 4だ。さらにUSB Type-Cがもう1つとUSB Type-Aが2つ、ヘッドフォンジャック、充電用ポート、HDMIポート、ディスプレイポート、SDカードリーダー、Ethernetポートが揃っている。
また、プライバシー保護の意識が高い人向けに、本体の左側にはウェブカメラの手動スイッチがある。これらのポートは本体の左右と背面に無作為に配置されているようなので、使い慣れるには少し時間がかかるかもしれない。
厳しい競争のなかでは地味な存在
重量が6ポンド(2.8kg)を超えているので、毎日もち運んで使うには便利な端末とは言いがたい。デスクトップPCの代わりに使う端末と考えたほうがいいだろう。とはいえ21mmと薄型なので、腰痛になるかもしれないが、17インチ型のノートPCが収まるバッグに入れてもち運ぶことは可能だ。
ゲーミングPCの大半がそうだが、給電していない状態でゲームをするとパフォーマンスが落ち、バッテリーも長くもたない。充電ができない状況、あるいは外出先で少し仕事をしたい場合のバッテリーのもち時間は約6時間だ。テストでの持続時間はそうだった。
MSIの最新のハイエンドの薄型ゲーミングノートPCは、基本の部分をほぼしっかり押さえているものの、ASUSやRazerの競合製品の脅威にはなっていない。ゲーマーから見た主な欠点は、平凡なキーボードだ。もっといい選択肢がほかにもある。
またStealth GS77には、競合製品ではなくこれを選ぶ決定的な理由がない。つくりはしっかりしている上に薄型の黒い外観は製品名の「Stealth(ステルス)」にふさわしいが、地味でもある。典型的なゲーミングノートPCがあるとするなら、これがそうだろう。
ASUSのROGシリーズは直線的な端と攻めた角度を組み合わせたデザインで目立つものが多い。またRazerの「Blade」シリーズはゲーミングノートPCでありながら、アップルの「MacBook」に限りなく近いデザインになっている。
もともとMSIと同社のゲーマー向け製品が気に入っているなら、Stealth GS77と2022年ならではの最新の性能に失望はしないだろう。だが、ありきたりではなく、感嘆するような製品を求めている人は、ASUSの「ROG Zephyrus」や「ROG Strix」シリーズ、Razerの「Razer Blade」シリーズのようなもっとワクワクする製品に心が動くかもしれない。
◎「WIRED」な点
NVIDIAの「RTX 3080 Ti」と第12世代のインテル製プロセッサーを搭載したことは大きな進化。入出力ポートが充実している。動作音はうるさすぎない。薄型の設計。
△「TIRED」な点
ゲーミングPCとしては平凡なキーボード。ディスプレイの選択肢はゲーマー向けで、クリエイター向けではない。ありきたりな外観。
(WIRED US/Translation by Ryo Ogata, Galileo/Edit by Nozomi Okuma)
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