ネットフリックスはゲームの世界において、あらゆる種類のプレイヤーに対応したいと考えている。それだけでなく、「世界中のデベロッパーが仕事をしたがるパブリッシャ―」になりたいのだと、エクスターナルゲーム部門バイスプレジデントのリアンヌ・ルームは語る。
立ち上げからようやく1年というNetflixゲームにしては、これは高い目標だろう。ストリーミング大手であるネットフリックスはイテレーション(反復)を重視しており、「crawl, walk, run(ハイハイ、歩く、走る)」 のモデルを指針のひとつに掲げている。これまでネットフリックスは、モバイルゲームのみ55タイトルをリリースした。「ストレンジャー・シングス 未知の世界」などの人気ドラマやデート番組「ザ・ジレンマ: もうガマンできない?!」をベースにしたライセンスゲームから、「トゥームレイダー」や「ケンタッキー ルート ゼロ」のような確立されたゲームタイトルまで幅広い。
またネットフリックスは、「Oxenfree」を制作したNight School Studioなどのデベロッパーを買収し、社内ゲーム開発部門も設立した。「ゲームはエンターテインメントのなかでも最も重要な形式のひとつです」と、ルームは最近の発表会で語っている。「Netflix会員のサブスクリプションにゲームを入れていくことは、わたしたちにとって自然な流れなのです」
Netflixゲームが直面するさまざまな課題
ところが、グーグルやアマゾンをはじめとする過去数年にゲームに関心をもった大手テック企業は、ゲームは資金を投じればすぐに利益を得られるわけではないことを身をもって学んでいる。
いいゲームは時間と才能の投資によりもたらされる。マイクロソフト、ソニー、任天堂は、おそらくすでに過飽和状態であろうゲーム市場を何十年間にもわたり独占している。22年8月の時点では、Netflixのゲームをプレイしている登録会員はわずか1%であると報告された。
ビデオゲームはテレビ番組や映画と比べて、買わせることが難しい。ふんぞり返って受け身の状態で観ればいいものではないからだ。ゲームは自発的に、しかも双方向で取り組まなければならない。
それにNetflix経由でゲームを素早く試してみることは難しく、ある程度の学習を経ないと真に楽しめないゲームもある。ネットフリックスは現在、独自のクラウドストリーミング技術の開発に取り組んでいるが(いまはなき「Google Stadia」やNVIDIAの「GeForce Now」のようなサービスだ)、いまのところはゲーミング市場のある特定の分野に的を絞っている。それはモバイルゲームだ。
Netflixは、TikTokやTwitterなどのモバイルアプリを相手にユーザーの視聴時間を奪い合わなければならない。しかも、ゲームの見つけづらさという問題も抱えている。
Netflixゲームはモバイルアプリでしかプレイできないが、そのためにユーザーはNetflixから退出し、App StoreかGoogle Play Storeを開いてゲームをダウンロードして、初めてプレイが可能になる。ルームによると、この仕組みが近いうちに変わることはないようだ。「現時点でお伝えできる完全な計画はありませんが、ご想像いただける通り、わたしたちはNetflixを視聴できるすべてのデバイスでゲームをプレイできるようにしたいと思っています」と、ルームは言う。
今回の発表会に際してルームは、Netflixゲームを現時点で何人のプレイヤーが利用しているかについての質問には答えなかった。「これまで目にしている状況には非常に満足しています」と、ルームは言う。「Netflix会員の100%がゲームをプレイしてくれることを期待する段階にはありません」
最大のタイトルが示唆していること
ネットフリックスは2023年に新たに40タイトルをリリースする予定で、さらに70タイトルを提携企業と開発中という。さらに社内スタジオでも、別の16タイトルを開発中だ。また「モニュメントバレー」やその続編を含む確立されたゲームタイトルについても、引き続きラインナップに組み込んでいく。どちらのタイトルも24年にネットフリックスでリリースされる見込みだ。
しかし、今後予定されている最大のタイトルのひとつが約10年前のゲームである点は示唆的である。ビデオゲーム界における成功とは「質より量」というものではない。気を付けなければ、ネットフリックスはただ自らのプラットフォームを過飽和させることになりかねないだろう。
(WIRED US/Edit by Daisuke Takimoto)
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