ニューヨークとその周辺地域に鉄砲水の警報が発令され、ニューヨーク市とニューヨーク州が緊急事態宣言を出した。米国立気象局の発表によると、ブルックリンの一部では9月29日(米国時間)の朝だけで5インチ(127mm)以上の雨が降り、セントラルパークとマンハッタンのミッドタウンでは約4インチ(101.6mm)の雨が降ったという。
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これにより鉄道がストップしたり運休したりしたほか、生徒たちは安全な帰り道がないまま学校に残された。この豪雨が発生したのは、ニューヨーク地域が洪水に見舞われやすい状況になった数日後のことである。
ブルックリンでは地下鉄の階段を水が流れ落ち、ラガーディア空港ではターミナルが浸水して閉鎖された。クルマは立ち往生し、ゴミ箱は危険な洪水によって浮いている。
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「このような気象パターンの変化は気候変動の結果です」と、ニューヨーク市環境保護局のロヒト・アガーワラ局長は記者会見で語っている。「そして悲しい現実ですが、わたしたちのインフラが対応できるよりも早く、気候が変化しているのです」
豪雨が古いインフラを圧迫
このような洪水の物理学的な性質は、大気科学者にとっては明白である。気温が1℃上昇するごとに、空気は6~7%多くの水分を保持できる。つまり、暴風雨を発生させるために必要な水分が増えるということだ。 それと同時に地球の温暖化が進むと、水分の蒸発によってより多くのエネルギーが失われる。つまり、“汗をかく”わけだ。それが最終的に雨となって降り注ぐ。
一方で、ニューヨークのような大都市は何世紀も前のインフラを使用している。都市計画者たちは、当時の気候を考慮して下水道や運河を建設したのだ。ところが、いまや嵐はずっと激しくなり、想定しないほどの降水量がインフラを圧倒して溢れ、広範囲に洪水を引き起こしている。
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こうしたなか、水害対策の戦略は変化している。都市は水を流出させる代わりに、水を吸収する“スポンジ”のような構造のインフラを配備するようになってきたのだ。つまり、コンクリートのような不透水性の素材の代わりに多くの緑地を配置して雨を地面に染み込ませ、理想的には帯水層に浸透させて必要なときに取り出せるようにする戦略である。
現時点では死者は確認されていない。しかし、ニューヨーク市消防局長のローラ・カヴァナーによると、警察や消防隊などが地下室やクルマの中に取り残された人々を救助しているという。警報は午後になっても発令されたままで、当局は人々に室内にとどまるよう呼びかけている。
(WIRED US/Translation by Daisuke Takimoto)
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