レトロゲームで遊べるミニアーケード機「Picade」は、楽しみながらゲーム機を自作できる:製品レビュー

自分で組み立てるミニアーケード機「Picade」が発売された。レトロゲームを昔ながらの筐体で遊べる点は魅力的だが、設定や組み立てが難しいので、時間に余裕のない人にはあまりおすすめできない。
ミニアーケード機「Picade」レビュー:楽しみながらゲーム機を自作できる
PHOTOGRAPH: PIMORONI

子どものころにプレイしていたゲームで遊ぶことはかなり楽しい。最後にプレイしてから何十年が経っていたとしても、数日かけてクリアした昔の名作ゲームは、たいてい体が覚えている。

昔のゲームを夢中になってプレイしていると、故郷に戻ったような感覚を味わえるだろう。だとしたら、レトロゲームがこれまでになく人気なことも、さほど不思議ではない。こうしたレトロゲームは、魅力と欠点がそれぞれある実機でそろえることもできるが、自分で組み立てるという選択肢もある。

「Picade」は、小さなアーケード筐体の組み立てキットだ。必要なハードウェアがすべて含まれており、きちんと整理された箱の中にわかりやすい組み立て説明書とともに梱包されている。シングルボードコンピューターである「Raspberry Pi」、USB Type-Cの電源、OSの「RetroPie」が入ったmicroSDカードを追加すれば、ゲームをプレイする準備は完了だ。

全部を正しくセットアップすれば、ほぼすべてのレトロゲームをエミュレーター上でプレイできるアタリや任天堂、セガ、「ネオジオ」、コモドールが手がけたPC「Amiga」、英国のPC「Amstrad」、シンクレア・リサーチが発表したPC「ZX Spectrum」など、例を挙げればきりがない。ただし、違法ROMには手を出さないようにしなければならない。

ゲーム機を組み立ててみたい人に最適

Picadeには、8インチと10インチの2種類の画面サイズが用意されている(今回は10インチのモデルを組み立てた)。Picadeの組み立ては、説明書の指示にきちんと従い自信をもって作業すれば、2時間以内で終わるだろう。

PCを自作してみたいと思っている初心者にとってこの筐体は最適だ。また、これまでにRAMを増設したり、新しいハードディスクの取り付けたりしたことがある人なら、難なく組み立てられるだろう。ただ、細かい作業が多いので、きれいに片付いた広い作業スペースが必要だ。

せっかちで間抜けなところがある自分は、組み立てに3時間以上かかった。なぜなら、前もって説明書をきちんと読んでおらず、保護フィルムを剥がさずにアクリルパーツを画面に取り付けてしまったからだ。そして、パーツは取り外す羽目になってしまった。

そしてその後も、アクリルパーツとモニターの間に入った髪の毛がどうしても気になったので、もう一度パーツを取り外すことになった。画面の組み立ては、最も手こずる部分だ。すべてを接続するにはかなりの手間がかかり、手が震えないようにしなくてはならない。YouTubeの説明動画が役に立つ手順もいくつかある。

組み立てた報酬として得られるのは、小さくて堅牢で、見た目も最高にいい卓上のアーケード筐体だ。アートワークやステッカーも同梱されているが、自分で好きにデザインして、それを追加することもできる。アクリルパネルの下に入っている、ボール紙の切り抜きも簡単に取り替えることが可能だ。

10インチのIPSディスプレイの画面の解像度は1024x768で、スピーカーもかなり大きな音が出る。そして、アーケード筐体ならではのジョイスティックとボタンが6つ付いているのだ。

初期設定にはキーボードが必要となる。今回は、Picadeを自宅のWi-Fiネットワークに接続し、ウェブインタフェースを使用して、PCからROMを取り込んだ。しかし、microSDカードやUSBメモリにゲームデータを入れて取り込むこともできる。RetroPieのためのROMを見つける方法はいくつかあるが、ライセンスされたゲームを購入せずにプレイすることは違法なので、注意が必要だ。

設定はやや難解

Picadeは、過去に遊んだアーケードゲームや作品をプレイするのに最も適している。実物大のジョイスティックとボタンは、感度が高く頑丈だ。昔のアーケード機で使われていたコントロールパネルは、家庭用ゲーム機のコントローラーに比べると指や手への負担がはるかに少ない。特に、多くのレトロなゲーム機に同梱されている安価なコントローラーに比べると、その差は歴然だ。音量調節のためのつまみだけが付いていない。面倒なことに、音量を変えるにはメニューを開く必要がある。

「ギャラガ」と「斑鳩 IKARUGA」を満喫し、「Shadowrun」や「スーパーボンバーマン」をプレイして、昔のお気に入りゲームだった「大魔界村」を思う存分楽しんだ。

そのうちに、「Xbox」をプレイしていた子どもたちが電子音の音に誘われて、名作ゲームをいくつかプレイしにやってきた。いちばん人気は「ミズ・パックマン」だ。RetroPieのコントロールパネルの設定は簡単機できるが、すべてのエミュレーターで機能するわけではない。このため、設定を読み進めて、ボタン配置をマッピングする方法を調べる必要がときにはあるので、覚悟はしておこう。

PicadeはRaspberry Piを搭載しているので、ソフトウェアを好きなだけいじれる。推奨されているOSであるRetroPieは、「EmulationStation」やマルチエミュレータシステム「RetroArch」といったアプリケーションを融合させたような感じだ。

レトロゲーマーによる活発なコミュニティーも存在するので、ゲーマーたちがまとめたテーマやスクリプトがたくさんある。習得するにはそれなりに時間がかかるので、微調整にある程度時間を費やす覚悟は必要だが、たいていはこのフォーラムで答えが見つかる。

Picadeの組み立てるは楽しいが、10インチディスプレイが入ったキットは249ポンド(約35,000円)、8インチ版は195ポンド(約27,000円)だ。さらに、Raspberry Pi(Raspberry Pi 4モデルBの1GB RAMが39ポンド[約5,500円])、USB Type-Cの電源(9ポンド[約1,200円])、そしてmicroSDカードを購入しなければならない。

もともとmicroSDカードをもっていれば、自分で簡単にOSはインストールできるが、OSがすでに入っている32GBのmicroSDカードが9.9ポンド(約1,300円)で英国の通販サイト「Pimoroni」で販売されている。これをすべて合わせると、レトロゲームをプレイするプロジェクトへの投資としては、それなりの金額になってくる。

実際のところ買いなのか?

Raspberry Piを使えば、自分の予算に合わせてレトロゲームシステムを構築し、テレビにつなぐことが可能だ。RetroPieは、複数のレトロゲーム機をもたずに、さまざまなゲーム会社から発表された作品をプレイする素晴らしい方法だ。何だかんだで多くの人の自宅では、テレビの下のスペースが限られているのだから。

ゲームシステムを構築し、ソフトウェアをあれこれいじって自分好みの筐体をつくり上げる時間や粘り強さ、そして意欲がない人は、ほかのゲーム機を購入したほうがいいだろう。だが、Picadeは初心者にとって最適なプロジェクトであり、年長の子どもたちと一緒に取り組める楽しい家族行事にもなるはずだ。

筐体の組み立てはもちろん、子どもたちが昔ながらのゲームに格闘する姿を見るのも、とても楽しい経験だった。あれこれいじくりまわすことが好きで、レトロゲームへの熱い思いがある人なら、この小さなアーケードゲーム機にきっと満足することだろう。

◎「WIRED」な点
確かな品質。組み立ての工程が楽しい。「RetroPie」が提供するゲームの選択肢が豊富。活発なコミュニティーがある。手作業が好きな人にぴったり。

△「TIRED」な点
追加の部品(別売り)が必要。ROMは自分で用意する必要がある。設定の仕方を自分で詳しく調べる覚悟も必要。

WIRED US/Translation by Miho Amano, Galileo/Edit by Naoya Raita)

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