「MoonSwatch」のスヌーピーとのコラボはどうなる? 愛好家は何を期待しているのか

オメガとスウォッチのコラボとして2022年に熱狂を巻き起こした「MoonSwatch」に、スヌーピーをモチーフにした新商品が登場するようだ。ファンたちは期待を高め、特別な工夫のあるデザインを待ち望んでいる。
Omega watches
Photograph: Omega

スヌーピーとオメガの歴史は長い。また、オメガとスウォッチのコラボモデルである「MoonSwatch」は2022年に世界中で熱狂を巻き起こし、それまで低迷していたスウォッチの運命を変えた。従って、スウォッチが著者チャールズ・シュルツの生み出したスヌーピーに商機を見出し、この人気キャラクターとコラボした「MoonSwatch」を予告したことに驚きはない。

しかし、スヌーピーをあしらったMoonSwatchが、オメガとスウォッチとのコラボレーションで誕生し熱狂を巻き起こした、初代の「BIOCERAMIC MoonSwatch」以来の人気商品になることを阻むかもしれない要素がひとつある。それは、大胆で輝かしい初代MoonSwatchに続いて発売された「Mission to Moonshine Gold」シリーズのように創造性に欠ける平凡なデザインだった場合である。

MoonSwatchシリーズの「Mission to Moonshine Gold」は、22年の大胆なMoonSwatchの後に発売されたものとしては、やや平凡な印象だった。

Photograph: Omega

“ゴールド”のMoonSwatchへの落胆

Mission to Moonshine Goldシリーズの製品は毎月、満月の日に合わせて発売された。発売前、ファンはMission to Moonshine Goldシリーズの製品が、オメガの「SPEEDMASTER ムーンウォッチ プロフェッショナル」と同じ素材をつかった、ゴールドのMoonSwatchになるのではないかと大いに期待していた(もちろんオメガのスピードマスターの価格帯は数百ドルではなく数万ドルである)。しかし、実際に発売されたのは、オメガ独自のゴールド合金「ムーンシャインゴールド」を秒針に使ってはいるものの、その点を除けば前シリーズのバリエーションに過ぎない製品だった。新鮮味が少なかったのである。

時計サイト「Time+Tide」はスイスの建国記念日であるスイスナショナルデーに合わせて発売されたMission to Moonshine Goldの製品について、「このシリーズの、ある意味子どもだまし的な新作が発表されるたびに、愛好家の間でますます不満の声が大きくなるようだ」とコメントしている

時計の専門家であり『WIRED』の寄稿者であるティム・バーバーも、スウォッチのコラボ商品であるMission to Moonshine Goldシリーズからは、物足りない印象を受けたという。

「2022年の製品には、本当に新しい発想と新鮮な驚きがありましたが、それに続いて発売された、秒針にゴールドをあしらった灰色のMoonSwatchシリーズ(満月の日にゴールド加工を施したという謎の宣伝が付いていた)は、本当に期待外れでした」とバーバーは語る。「MoonSwatch を社会現象にまでした、その創造性や大胆な挑戦を示すことに、完全に失敗していたのです」

Mission to Moonshine Goldシリーズの明るい青色をした「Mission to Neptune」は、スウォッチの後続商品のなかで、デザイン的におそらく最も成功したものである。とはいえ、これも既存の「Mission to Neptune」の秒針を、貴重な金属を使った秒針に替えただけのものだった。

スヌーピーはオメガと長い関係がある

Courtesy of Swatch

ティーザー映像に登場するケースは「Mission to Moonshine Gold」シリーズのもの。

Courtesy of Swatch

オンライン販売の可能性は低い

スウォッチのInstagramに投稿されたティーザー映像では、スヌーピーがMission to Moonshine Goldシリーズのコレクションケースに乗って満月に向かって吠えている。

わずか7秒の動画だが、何を伝えようとしているかは明確である。お手ごろなスヌーピーをあしらったスウォッチ版のスピードマスターを手に入れたい人は、スウォッチの特定の店舗に並ぶ準備をしよう、ということだ。なぜなら、同社が自社ルールを破り、この商品をオンライン購入できるようにする可能性はかなり低いからである。

当初、スウォッチはMoonSwatchのオンライン販売を検討していた。『WIRED』による独占記事で、いかにこの商品を秘密裏に開発したかを、スウォッチグループの最高経営責任者であるニック・ハイエック・ジュニアは語っている。ハイエックは、このときオンライン販売の可能性を完全には排除していなかった。「オンライン販売に対応するかどうかは、4カ月後にまた聞いてみてください」「まだ、わかりません」と彼は言っていた。取材は22年7月のことだったが、いまだにMoonSwatchはオンラインで販売されていない。

スヌーピーが象徴するもの

スヌーピーと宇宙との関係は、NASAのSilver Snoopy Award(シルバー・スヌーピー賞)にまでさかのぼる。この銀のバッジが、有人宇宙飛行ミッションの成功に大きく貢献した人に初めて授与されたのは1968年のことだ。

オメガは1970年にシルバー・スヌーピー賞を授与している。アポロ13号のミッション中に故障した機器のバックアップとして、スピードマスターが重要な役割を果たしたことが認められたのだ。アポロ13号に乗船した宇宙飛行士のジャック・スワイガートはスピードマスターを使用して、14秒というロケット噴射の時間を計った。これは地球への安全の帰還を確実なものにするために重要なことだった。

オメガが同社の宇宙船関連の遺産を強調し、この賞を記念して、最初のスヌーピーをあしらったスピードマスターのシリーズを発表したのは2003年になってからである。

「スヌーピーが使われるのは時間の問題でした」とバーバーは言う。「最初からスヌーピーのバージョンがなかったのが、むしろ不思議なくらいです。そうしていたなら、絶対にみんなが欲しがるMoonSwatchになっていたでしょう。スヌーピーは、オメガのMoonwatchが本当に象徴しているものをもたらします。それはオメガのMoonwatchの物語を、とても豊かでユニークにしている特徴的な要素のひとつなのです。そしてオメガはこの部分で遊び心を発揮してきました。スウォッチがスヌーピーの絵を時計にただ乗せるのではなく、本当に創造的な使い方をすることに期待したいと思います」

その通りである。コラボが実現するとしても、そのようなコラボ商品を24年に発売する時計ブランドはスウォッチだけではない。あまり考えたくないのは、スウォッチがMission to Moonshine Goldシリーズのクロノグラフの針に、小さなスヌーピーを置いただけのデザインを採用することだ。愛好家はそうなることをすでに恐れており、実際そのようなデザインになったら間違いなく失望するだろう。

今後登場予定のMoonSwatchでは、例えば、サブダイアルにスヌーピーの絵柄が創造的に使われていることを期待したい。理想的には、ケースの裏にスヌーピーの絵柄があしらわれることである。MoonSwatchのシリーズでは、それぞれの製品が象徴する惑星がケースの裏に描かれている。

スヌーピーとコラボしたMoonSwatchの発売日について、スウォッチは何も明かしていないが、ティーザー動画は、24年最初の満月である1月25日に投稿された。次の満月は2月24日だ。店頭に並ぼうと考えている人は、この日付を頭に入れておくといいかもしれない。

WIRED US/Translation by Nozomi Okuma)

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