悲観的な情報を読み続ける「ドゥームスクローリング」から逃れるために、SNSをブラウザーで見るという選択肢

SNSで悲観的な情報を読み続けてしまう「ドゥームスクローリング」の習慣を断ち切るために、効果的な方法がひとつある。それはSNSをアプリではなくウェブブラウザーで開くことだ。
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Photograph: Dan Douglas/Getty Images

ソーシャルメディアのアプリは、好きなときに開いてタイムラインをスクロールできるという意味で、まさにテクノロジーの奇跡と言える。難点を挙げるとすれば、悲観的な情報を読み続ける「ドゥームスクローリング」にはまってしまうことだ。ほかのことをしたほうがいいとわかっていても、やめられないのである。

そんなわけで、タイムラインを延々とスクロールし続けることがないようにフリクション(障壁)をわずかに生じさせ、ソーシャルメディアを少しだけ使いづらくする方法はないものかと、このところ頭をひねってきた。そうして思いついた解決策とは、スマートフォンでソーシャルメディアを閲覧するときに、アプリをインストールせずにウェブ版を使うことだった。

InstagramからTwitter、Facebook、LinkedInまで、ソーシャルメディアはどれもスマートフォンのブラウザーで閲覧できる。アプリではなくウェブ版を使えば開くのがほんの少しとはいえ面倒になるし、その手間によって限りある時間をもっと有効活用できると思い直せるようにもなる。

ウェブ版を使うメリットはこれだけではない。常に標準設定は疑ってかかるべきだが、ソーシャルメディアを使う際にアプリをインストールという考えも、そのひとつだろう。それにウェブ版はある意味、専用アプリを使うよりも好ましい。その理由を説明しよう。

1.データにアクセスされない

ソーシャルメディアのアプリは、何かにつけて情報共有の許可を求めてくる。確かに筋が通っている場合もある。Facebookに写真をアップロードしたければ、写真ライブラリへのアクセスが必要になって当然だろう。

一方で、あまり筋が通らない場合もある。ソーシャルメディアのアプリがユーザーの位置情報にアクセスする必要など、本当にあるのだろうか。

どのソーシャルメディアのアプリにどんな許可を出しているのかを確認することはできる。しかし、ウェブ版を使っていれば、そんな必要はない。ウェブサイトはバックグラウンドで絶えず動いていることがなく、読み込まれるのはユーザーが求めた場合のみだからだ。Facebookが会話を盗聴しているというのはつくり話だが、Facebookアプリをインストールしていなければ、仮の話だとしても会話を盗み聞きされることはない。

2.通知が送られてこない

通知が来なくなることに関しては、メリットとデメリットがある。スマートフォンに通知が届けば、お気に入りのソーシャルメディアで何が起きていようと見逃さずに済む。四六時中つながっていたい人にとっては素晴らしい機能だが、ソーシャルメディアをやめられなくなる大きな要因が、まさにこの通知なのである。

つまり、ソーシャルメディアをもっと意識的に使おうとしているなら、通知はかなり邪魔になる。ところが、ウェブ版はデバイスに通知を送ることができない。つまり、タイムラインをチェックするタイミングを自分で決められるようになるわけだ。

もちろん、ウェブ版を使っていても「Instagram.com」とブラウザに入力したくなる衝動に駆られることはあるだろう。とはいえ、それは自らそうしたいと思うからであって、通知に促されるせいではない。

3.微妙な新機能がすぐには導入されない

Instagramは劣化する一方だ。これまで友人が投稿した写真をスクロールしていたはずが、いまでは新規投稿を見終わると、TikTokを安易に真似した機能が作動するようになってしまった。

これについては何のアドバイスもできない。ソーシャルメディア側はユーザーがスクロールして満足するように努めているわけではなく、もっとスクロールしたくなるように仕向けているからだ。

ユーザーが新しい投稿を見終わるとスクロールを止めていたことが、どうやら運営元は不満だったようである。こうして「コンテンツは以上です」のあとに、アルゴリズムがすすめる「コンテンツ」が延々と表示されるようになってしまった。

テクノロジストでも未来主義者でもない立場から言わせてもらうと、InstagramとFacebookを運営するメタ・プラットフォームズは、ユーザーのもてる関心や収益を最後の最後まで徹底してしぼり取ろうと、機能をひたすら“改悪”しようとしているとしか言いようがない。

この件についてはお手上げだ。しかし、ソーシャルメディアのウェブ版を使えば、少なくともしばらくはイライラさせられるような機能が追加されるまで時間が空く。例えば、くだらないおすすめコンテンツが延々と表示される機能がウェブ版に追加されたのは、ごく最近だった。Instagramのウェブ版を使っていれば、少なくとも半年ほどはその機能に悩まされずに済んだわけだ。

そればかりか、Instagramのチームが次にどんな機能を思いつこうとも、ウェブ版なら導入されるまでほんの少し猶予がある可能性が高い。たいした差ではないが、意味のあることだ。

ホーム画面にウェブサイトのアイコンを追加する

ウェブ版のソーシャルメディアを開くときは、ブラウザーにURLを打ち込まなければならない。個人的には苦にならないし、適度なフリクションだと思う。

それが面倒だと感じる人は、ソーシャルメディアのアイコンをホーム画面に追加すればいい。そうすれば、アプリと同じように開くことができる。

iPhoneやiPadなら、ソーシャルメディアのウェブサイトをSafariで開き、アドレスバーの右側にある「共有」をタップする。さらに「ホーム画面に追加」を選べば、そのソーシャルメディアのロゴがホーム画面に追加される。

Androidスマートフォンなら、ソーシャルメディアのウェブ版をChromeで開き、右上にある3点ドットのメニューアイコンをタップして「ホーム画面に追加」を選択する。ただし、代わりに「アプリをインストール」と表示されている場合もあるので注意が必要だ。

実際にウェブ版Twitterのアイコンをホーム画面に追加しようとしたとき、そう表示された。これはプログレッシブウェブアプリ (PWA) と呼ばれる仕組みに関連した技術が原因だが、気にすることはない。いずれにせよ、選択したソーシャルメディアのアイコンがAndroidのホーム画面に追加される。

ソーシャルメディアを計画的に使うことは至難の業だ。ウェブ版を使うようにしたからといって、つい開きたくなる衝動が魔法のごとく消え失せるとは思わないし、もう自分で何とかするしかない。とはいえ、努力することならできる。

フリクションのレベルを上げたければ、スクロールをし終えたときにアカウントからログアウトすればいい。ただし、次にスクロールしたくなったときには改めてパスワードを入力する必要がある。

フリクションをちょっとずつ加えるたびに、ソーシャルメディアを使う習慣を断ちやすくなる。まさに望んでいたことだ。同じようにスクロールを止めたいと思っていた人は、ぜひ試してほしい。

WIRED US/Translation by Yasuko Endo/Edit by Daisuke Takimoto)

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